憧月翁
どくん。
――――いや、違う。
どくん。
一匹の紋白蝶が、同じ姿に擬態した何かに捕食されているのだ。
机に蜘蛛糸で縛られた如く動かない美綴に、長い黒髪を揺らめかせる遠坂が貪るようなキスをしている。赤く染まった大気の中で、女子の制服のブラウスが目に痛いほど白い。
眠りに落ちたはずが、こんな赤い教室にいた。いつから、俺はこの秘め事を覗き見ていたのか。頭蓋骨の中まで蜜浸しらしくて、何も浮んでこない。何故こんなに空気が真っ赤なのか、見当も付かない。どこか遠くで遠坂を見つけて、そこからずっと追って来たってことだけ微かに覚えている。
「あ……」
桃色の遠坂の唇が、オレンジがかった美綴の唇に食らい付く。距離はあるのに、絡み合う舌と唾液の音が俺の耳にも流れ込む。当惑と、それを上回る陶酔が美綴の貌に見て取れた。
「ふふ、美味しいわ、綾子」
「遠坂……やめろって……」
たしなめるように言いながら、続けたがっているのは明らかで、離れてしまった遠坂の唇を追っている。
陶酔ならば、遠坂の貌にもうかがえる。美綴の抵抗の素振りを楽しむ風情で、遠坂は再び唇を重ねる。穂群原でも名高い美人で気のある男子も多い、そんな二人が、女同士で戯れている。そこに疑問は湧かなかった。
現実には、戯れるってほど大人しいものじゃない。
官能に捕われた蝶は、体を縛り付ける蜘蛛糸など無いのに、抗いもせずただ喰われていく。焦らすように、啄むだけのキスを繰り返す遠坂に、すがり付いて美綴は深い接触を求めている。
こんな美綴は見たことがない。唇の端から唾液が零れて伝い落ちている。しどけなく弛緩した表情でも美貌が崩れはしていないが、酷く、淫らだった。
ごくん、と唾を飲み込む。その音に我に返り、体が熱く、血が滾っているのを自覚する。二人の行為を見ていた己を恥じて、立ち去ろうとする。
それで、思い出す。
俺の体も、最初っから見えない蜘蛛糸で雁字搦めだ。無理に動こうとして、がたがた机を揺らしてしまい、遠坂がこちらに目を流す。
なんだ、覗き見してたんじゃなかった。傍の席から、堂々と眺めていたんだ。
「ほら、綾子。来てくれたみたいよ? 衛宮くん」
遠坂には何ら驚きはなく、最初から知っていたのだろう。
囁かれて目を見開き、美綴も俺の姿を認めた。
「えっ、えみや……」
遠坂のキスで紅潮していた美綴の頬が、更に赤くなった。悪戯を見咎められたみたいに、そわそわと逃げ場を探す。しかし、やっぱり動けない。
「来てくれたのね、衛宮くん。嬉しいわ」
遠坂が、改めて俺にも声を掛ける。その微笑みが、悪魔のように蠱惑。耳に届く声が、俺の理性を蜜で犯す。
「ほら、嬉しいでしょ? 綾子。衛宮くんだって男の子なんだから、綾子みたいな綺麗な子に求められたら嬉しいに決まってるわよ」
「馬鹿、あたしが何で衛宮になんて……」
指一本動かせない俺の数歩先で、同じく動けない様子の美綴に遠坂が絡んでいる。後から抱き締める格好で、耳に口を寄せて囁いている。あんなに傍で遠坂の声を聞いたら、きっとそれだけで躰の芯まで蕩けてしまう。
「あら、綾子って、衛宮くんのこと嫌いなの?」
「違うっ、けど衛宮は、気楽な友達か、そうでなきゃ同士か戦友か、そんなので」
「要するに、嫌いじゃないんでしょ?」
「あっ……」
耳に声を吹き込まれるたび、逆に耳から何か吸われているみたいに、美綴は息を乱していく。遠坂の両手は、ゆっくりと美綴のシャツのボタンを外し始めている。それでも、言葉を漏らす以上の動きを美綴は見せない。
「ふふ……じゃあ、衛宮くん?」
話が、俺の方に回される。学園中の多くの男子生徒が少なからず憬れや欲情を向ける遠坂は、そんな偶像化に相応しく綺麗で、妖精を思わせる。だけど、その魅惑は禍々しく危険、本来の妖精というものがそうであるように、。
「綾子は衛宮くんが友達だって言ってるけど。衛宮くんの方はどうなの? 俺のモノにしたい、なんて思ったことはない? 抱き心地はどんなだろうとか」
俺のモノ、の一言に美綴は躰を震わせた。抱き心地、でもう一度。
「いや、無いよ、そんなこと」
こればかりは事実として、一度もそんな風に思ったことはない。
「本当に? 綾子って、こんなに女の子らしくて魅力的なのに?」
「あっ……」
遠坂が、美綴のシャツを開く。布地の白さと同じぐらいに鮮やか、だけどずっと温かに輝く、素肌が露わになった。
「馬鹿、衛宮、見るなぁ……」
言われても、絡め取られたままの体じゃ顔を横向けることも叶わない。
「良かったわね、衛宮くんは綾子のこと、ちゃんと女の子として見てるみたいよ?」
いやいや、ってするみたいに小さく美綴の頭が揺れる。
「勝手なこと言うな、美綴は……うん、戦友ってのがぴったり来るよ。好きだけど、別に、女子としてじゃなくて」
言い返しつつ、その実、動けないのを幸いと美綴の躰を目線で舐めていた。遠坂の裸体とは違って、今まで想像してみた覚えはない。
「そ、そうだよな、衛宮……」
やりとりを聞いて、赤い悪魔が詭弁を吐く。
「ふーん。二人とも、男と女で純粋な友情が成り立つって主張するのね」
「そりゃ、成り立つだろう? 何も、男女だからって必ず惚れた腫れたでなくても」
「そうだぞ、遠坂……馬鹿、止めろっ」
遠坂の手が美綴の腹に降りて、撫で回す。見ていて、肌の滑らかさを想像してしまって、自分で触れたくなる。さっきの自分の台詞が白々しい。
「こんなに美味しそうな姿の綾子、食べてみたいでしょ? 衛宮くん知ってた? 武人然として、いっつもこんな可愛いブラしてるって」
遠坂の手に誘導されて、美綴の胸元に目が行く。そこにある白い下着は偽り無く愛らしく華やか。包まれてた膨らみは思いがけず豊かで、目線が捕まる。
こくん、と唾を飲み込んでいた。
「こら、衛宮っ、何考えてるっ!」
「何って、判りきってるじゃない。衛宮くんにとっての綾子って、友達には違いなくても、魅力ある女の子であるのも確かってことよ」
「いや、美綴、別にそう言う訳じゃ……」
言い繕う俺の言葉は、上ずって力を持たない。
「あはは、良いのよ? 衛宮くん。友達だからって欲情しないわけでも、していけないものでもないでしょ?」
悪魔が、甘言を紡ぐ。
美綴が、学園内で遠坂と並ぶ美人だってことぐらい良く知っている。それでもあまり女の子として意識しないのは、性格のこともあれ、第一に親友だから。
しかし、ズボンの下で自分を堅くしている今、説得力はない。
「こら、遠坂、変なこと言うなっ」
恥じらい、弱々しく震える美綴の躰から顔を背けてやれない。今も拘束は解けていない。
いや、動けなくて幸いだった。素肌を舐るように見てしまう代わり、手を出さずに済んでいる。
「衛宮もっ、何をあたしの体なんか見て、そんな……」
美綴は、俺の態度に少し怯えてる。珍しい姿に、悪いとは思いながら、余計に熱くなってしまう。
「それに……良い機会よ。男女間で純粋な友情が成り立つのかどうか、試してみましょう?」
「試すって、何をする気だ、遠坂……」
引き締ったウエストを擽られながら、美綴にはまだ刃向かう様子。
「簡単よ。男女でも親友なら性欲の対象にならない……ってものじゃないことは、衛宮くんが今まさに示してくれてるわけだから」
遠坂の手が滑り降りて、美綴のスカートに至る。
「こらっ、止めろ、遠坂っ!」
制止を聞かず、遠坂はスカートを脱がしに掛かる。その指先の繊細な動きに、見入っていた。
「だからね、綾子。えっちなことをしても男女が恋人でなく親友であり続けることは可能だって、証明してくれれば良いのよ」
「滅茶苦茶だぞ、それっ!」
遠坂に聞く耳無く、美綴のスカートは脱がされてしまった。
「見るなっ、衛宮ぁっ」
「いや、俺も、体……」
動かない、と言い訳を口にしながら、露わになった美綴の下半身をしっかり見ている。下着はこっちも白く、やっぱり華やかで可愛らしい感じがする。パンストとか履いてなくて、引き締った素肌の脚が伸びている。格好の良いアスリートな脚は、身につけた下着ほど白くはないのに、遥かに眩しい。
「ねえ? 衛宮くん。綾子は素敵でしょ?」
「うん」
びくっと美綴が震えたのを見て、あっさり肯定してしまったのに気付く。恐る恐る目を向けたら、恥ずかしげに睨んでいる。
いや、美綴が魅力的だということなら、元より否定しない。異性として捉えたことが無かっただけ。
そう、無かった、だけ。
「じゃあ、もっとこっちに来て、衛宮くん」
ひらひらと蠢く遠坂の手に引き寄せられて、美綴のすぐ傍に寄る。頬を染めた美綴は、今度はきょときょと目を泳がせていて、また新鮮。
「ほら、綾子。衛宮くん格好良いじゃない。こういう鍛えられた体、好みでしょ?」
「いやっ……遠坂っ……」
あまり声にならず、美綴は急に目を反らす。
「照れないで見れば良いのにね? 衛宮くんはしっかり綾子の体を眺めて楽しんでるんだから」
遠坂が俺の胸に触れ、するりと滑らせる。しなやかな女の子の指の感触に、やっと把握する。
初めからそうだったのかどうか。俺は、上半身が裸だった。
スポーツや武道に慣れ親しんだ美綴のことだ、これぐらいは普通なら平気だったろう。実際、遠坂に言われるまでは、しっかり俺の体を見ていたと思う。しかし、この状況を意識してしまっては取り乱すのも仕方あるまい。
「馬鹿、衛宮、ちょっと離れろっ」
何ら束縛されていないのに体は自由を失っている。それは美綴も俺も同じ。
「もう少しこっちに来て、衛宮くん」
遠坂の許しがあって、その通りに動けるだけ。操り人形と変わらない。肌の触れ合う僅かに手前、体温を感じるぐらいまで美綴との距離が近付く。抱き合って頬ずりするほどの形、あるか無しかの美綴の匂いに躰に火を灯された思い。
「綾子、衛宮くんとキスしない?」
「衛宮とキスって、何であたしがっ」
「つれないのね。良いわ、私としましょ? 衛宮くん」
とんでもないことを言われて気付く。遠坂の顔も至近距離だ。沢山の男子が憧れつつも手の届かない高嶺の花は、息が掛かるほど傍に居る。整った顔立ちに赤い眼が印象深い。
遠坂って、こんな眼をしてたか?
瞬間の疑問も、更に顔を寄せられて霧散。思考が止まり、己の鼓動に耳を聾される俺の頭を、惹き寄せた餌食を狩る
「ふふふ……」
口移しの甘い苺。
そんな遠坂のキスは、すぐさま熱く融けた。流し込まれた唾液も絡め合う舌も、極上のジャム。吸い合って、湧き止まない唾を飲み合って、果てしなく続ける。はしたなく水音が鳴り、雫が溢れて落ちる。ただでさえ自由の利かない体が芯まで官能に痺れていく。脳髄まで侵されていく。
だから、遠坂が離れて行ったのを必死で追う。知らず、欲情した体を美綴にくっつけていた。遠坂に引っ張られていて離れられない。いや、触れた肌の滑らかさと熱さに痺れて、離れようとしていない。
「よく聞こえるでしょ、綾子」
真っ赤になった美綴の耳に遠坂が囁き、その唇を欲しがる俺にもその場で応えてくれる。また、とろとろと蜜を零すような口付けを交わす。キスだけじゃ満たされなくなるのは目に見えてる、でもとにかく今は遠坂の口が欲しくて。
吸い合っては離れるキスを繰り返し、わざとらしく音を立てる。
何が聞こえると言ったのか、理解した。耳元でこんなにされたら、美綴には嫌でも水音が聞こえるはず。
「したいでしょ、綾子も。キスが大好きだものね?」
また遠坂が逃げてしまい、あっちの耳に移って美綴を唆している。初めに見た、二人の口付けが目に浮かぶ。
「あ……」
美綴の耳が、更に赤くなる。何かの発作かってぐらい息を荒げている。
遠坂が、唇が欲しくてならない俺は、代わりを求めて目の前の耳朶に口付けていた。
「ひゃっ」
聞いたこともないような美綴の甘い悲鳴が楽しくて、耳を舐め回す。好きでなきゃ欲情しないってもんでもない、困った男の生理。
「どうなの? 綾子。衛宮くん、ねだればしてくれるわよ?」
「ふぁうっ……」
遠坂も、耳に口を付けたらしい。
「と、遠坂ぁ……」
これまた、聞いたこともない弱々しい声だ。あの気っ風の良い美綴をもっと鳴かせたくなって、耳を責め続ける。こんな時、弱みを見せた牝につけ込んでしまうのも牡ってものなのか。
「駄目よ……綾子、さっき私とは思い切りしたじゃない。私と衛宮くんとは今したんだから、綾子も今度は衛宮くんとするのよ」
遠坂のキスが欲しくて堪らないのは、美綴も同じらしい。両耳をいっぺんに責められて、もう息も絶え絶え。
「ほら、ちゃんとねだってご覧なさい、綾子」
「んぁ……」
美綴が、身を捩る。髪が揺れて、仄かにシャンプーらしい花の匂いがする。そんなことにも、美綴は女なんだって意識させられる。一度思ってしまうと、遠慮の名残も失って美綴が欲しくなる。
「あぅ……んっ」
逃げようとしているのか、盛んに頭を振っている。でも、耳はキスができる範囲を離れず、揺れる髪がくすぐったくて掻き立てられる一方。
「しなくて良いのね?」
遠坂の問いを否定して、また首を振る。
「して……」
「何を?」
「……キス」
美綴はどんな顔をして言ってるんだろう、なんて意地悪なことを考えていた。
「それじゃ判らないわ」
意地悪というなら、遠坂が数段上だけど。
「だから……。キス、して」
ためらいためらい、とうとう口にした。それだけで飛びついてしまいそうにキスに餓えている俺を押しとどめ、美綴のおねだりに遠坂は落第点を付ける。
「だめよ、誰に頼んでるの?」
「あぁ……」
俺とするのを嫌がってるわけじゃないって、都合良く解釈していた。
「飲んじゃ駄目よ、衛宮くん」
そう言って、遠坂に不意にキスされる。その至福は瞬きの間、だけど口の中にはたっぷりと苺味を注いでくれた。羨ましげな美綴の目線を浴びつつ、命じられた通り、飲んでしまいたいのを我慢する。
遠坂は、ひと舐めした自分の指を美綴にしゃぶらせる。
「綾子、衛宮くんとキスするのが嫌なわけじゃないでしょう? 照れてるだけで」
「んんっ……」
美綴に嫌われてなんかいないって自信はある。俺も、美綴のことは嫌いとは正反対。ただ、キスしたいとか抱きたいとか思ったことは無かった。
無かっただけだと、あかい悪魔に教えられている。
「どう言う意味であれ、学校じゃ衛宮くんぐらいでしょ? 綾子のお眼鏡に適う男子って」
僅かに遠坂の味を与えられて、余計に餓えたらしい美綴は必死で指を吸う。
「早くしないと衛宮くん、我慢できずに飲み込んじゃうわ」
遠坂の唇の甘露、何とか我慢しているけど、分けてやらずに飲んでしまいたい。
「それに、私はもう甘くないわよ」
舌を突き出し、ぺろんと遠坂が美綴の唇を舐める。その跡に美綴が舌を伸ばすけど、満たされないらしい。
「んんっ……」
「好きなんでしょ、綾子。衛宮くんのこと、他の大方の男の子よりは」
また耳から媚薬を流し込んでいる。
「んんっ……。えみ、や……」
「ほら、あと一歩」
ちらちら、俺を見たり目を反らしたりしながら、渇きに耐えかねたか、美綴は口にした。
「衛宮、キスして……くれ」
取って付けたように、最後だけ口調が乱暴。
恥じらい含みの短い言葉がまるで引き金、一気に美綴が愛しくなった。さっきまでは、遠坂への欲情を代わりにぶつけたくて欲してた。だけど、美綴自体が欲しくなってる。
「しょうがないわね、してあげて?」
言われるまでもなかった。だが、遠坂の許しを得たのは俺だけらしく、美綴は相変わらず動かない。忙しく瞬き、位置の定まらない美綴の眼。少し震えるような唇。遠坂が苺なら、こっちは桜桃ぐらいか。化粧っ気のない涼しげな美貌に、不安と期待が明滅して見える。
「あ……」
それでも、近づくと小さく口を開けてくれる。
含んだものを零さないように、そのまま黙って、美綴と唇を交わした。
びくんっ、と相手の躰が震えた。流し込んだ遠坂の甘味を、美綴は喉を鳴らして飲み込んでしまう。全然足りないとばかり、俺の口を吸い、舌を突き入れてくる。
美綴、これが初めてだったりするんだろうか。その、男とは。
「綾子って、キスは上手よ?」
遠坂が、今度は俺の耳に囁く。
言葉通り、美綴の舌は俺の口を官能で征服していく。遠坂とする以上に快感。快楽に中に浮きそうで手がかりを求め、自然、接吻の相手の躰を抱く。また一つ震えが走り、だけど拒まれれはせず、向うからも腕を回される。抱き寄せた躰を互いにまさぐり始める。
鍛えられた、美綴の体。皮膚のすぐ下には躍動する筋肉が感じられて、快い。でも、手に触れる肌はあくまで滑らか、温かくて潤っていて、あたしは女だって声高に主張している。
「衛宮くんの体、素敵でしょ?」
遠坂に言われて、一瞬、背中に触れていた美綴の指に力が篭もり、そこに止まる。だけど、幾らもしないうちにまた撫で始める。くすぐったいようで、官能にも訴える。
「綾子って抱き心地が良いでしょ?」
美綴と唇を吸い合う俺に、遠坂が吹き込んでくる。偽り無く、抱き締めているだけでも快感。背中いっぱいに撫で回し、何度も手に引っ掛かるものが邪魔に思えてくる。
「邪魔みたいだからブラ外して貰う?」
「そっ、駄目だ、そんな……」
遠坂の囁きに、美綴は一々大げさに反応する。
「まだ言ってるの? そんなこと。衛宮くん、綾子の胸、見たいでしょ?」
見たい、と声を上ずらせながら答える。やっぱり震えた美綴を、触りたい、と付け足して更にびくりとさせる。
「衛宮くんが喜ぶわよ?」
「馬鹿、衛宮、あたしなんかより……」
「恥ずかしいの? 綾子」
問われて、こくんと頷く。
「そうね……私だけ脱いでないのは狡いかしら?」
遠坂の言葉に、抱き締めた美綴と頬を寄せ合いながら目を向ける。
「衛宮くん、私の裸は見たい?」
声が出なくて、がくがくと頭を振る。
「良いわ。見せてあげる……」
美綴の背中を相変わらずまさぐりながら、ブラウスのボタンを外していく遠坂の細い指から眼を離せない。淀みなく動いているのに緩慢に思えて、気ばかりが急く。
やっと全部外して袖から腕を抜き、そこでくるりと後を向いてしまった。
「あ……」
落胆した声を漏らしながらも、背中にさえ目を奪われる。
玉を転がすように笑う遠坂は、からかいの表情を肩越しに向けてくる。やっぱり運動の足りた体つきながら、白くて細くて目映いばかり。
ふふふ、とまた笑って、あっさりスカートを落とす。腿まで艶やかな黒いソックスの上に、白いショーツに包まれた丸っこいお尻。
「んっ……」
唾を飲んだ音が聞こえたのか、美綴が呻く。
ゆっくりと、遠坂は体を俺の方に向けてくれる。細いウエストと平らなお腹が妙に目を惹いた。薄い布の下の胸の膨らみが柔らかそうで、手を伸ばしたくなる。妄想の中なら、沢山の男子が遠坂をこんな姿にしてきただろう。でも、いま現に遠坂は下着姿。
「酷いわね、衛宮くん」
言いながら、俺と反対側から美綴の耳に口を近付ける。
「綾子を抱っこしてる癖に、私に脱がせて私ばっかり見るなんて」
言われた途端、美綴は俺の背中に爪を立てた。
「でも、それって綾子が恥ずかしがってばかりだからよ?」
回り込んで、遠坂は美綴にキスした。途端に、美綴は唇に酔い痴れる。その乱れっぷりが面白くなくて、俺も背中に爪を当ててしまう。
「ほら」
俺と美綴の抱擁を半ば引きはがし、遠坂が俺の首に抱き付いてくる。それに続くのは、あくまの誘惑。
「触って良いわよ……」
何を、なんて間の抜けたことを訊く俺に、遠坂は笑って答える。
「どこでも。衛宮くんの触りたいトコロ」
ごくん。
誘われるまま手を出し、幾らか震えながらも迷いはなく、遠坂の胸に届かせる。
「あっ……」
わざとらしい喘ぎなのに、それでも脳天まで突き抜けた。さらさらしたブラの生地越しに、遠坂の体温と柔らかなふくらみが判る。
「いきなりなんて、大胆ね」
悪戯な笑いに耐えて、両手で遠坂の双丘を包む。押すと指が沈み、放せば押し戻してくる、それだけのことが痺れるように快感。
「もっと、して……」
遠坂が俺の首を引き寄せ、小さく唇を開いて眼を瞑る。初めて、自分から遠坂に口付けた。両手は忙しく胸を探りながら、舌を絡め合う。やっぱり、遠坂の口は苺キャンディ。
「えみや……」
うわごとみたいに美綴が言葉を発した。ちらりと眼だけ向けたら、遠坂は俺に囁き続ける。
「邪魔だったら、それも外して良いわ」
「それ、って」
誘惑に頭がいっぱいになっても、両手が意志を持ったみたいに遠坂の胸を揉んでいる。指先がてっぺんのあたりを捕らえたら、そこだけ少し堅いのが薄布越しにも判る。さするほど堅さが増す。
「んっ……判るくせに。綾子は外してくれなかったでしょ」
考えるでもなく、両手が遠坂の背中に移る。とりあえず、抱き寄せてしまう。隔てるものはブラ一枚、肌が触れ合って温かくて、心臓が破裂しそうになってる。さっき美綴にもしたみたいに耳朶を口にし、フルーツめいた淡い髪の匂いで胸を満たした。末端の血管まで遠坂を取り込んだ気がして嬉しくなる。背中をまさぐって、あんまり滑らかだから、引っ掛かったブラジャーに何故かほっとする。
「衛宮くん、背中広くて素敵」
俺の方も、背中を撫でられていた。ゆったりと上下するだけなのに、臍の下の方にびりびり響く。
くい、と遠坂の方から体を押し付けられて、胸の間で潰されている柔らかいものを思い出す。こんなこと初めてするのに、戸惑い無く、ブラのホックを手探りで外す。
銀のベルを思わせる遠坂の笑いに煽られて、一息に剥ぎ取った。
「ぁん……」
愛想ぐらいに悲鳴。露わになった遠坂の胸に、眩しい思いで目を向ける。
それは実際、目が眩みそうに蠱惑の塊。
白状すれば、遠坂の裸体なら、俺も幾度と無く思い描いて来た。
「ちっちゃいから、恥ずかしいな……」
さっきまでの挑発が嘘みたいな言葉。見れば、朱に染めた顔を斜めに伏せながらも眼だけはこちらに向いていて、撃ち抜かれた。
「そんな、こと……」
たぶん、大きい方だとは言えないけど、まるで問題じゃない。遠坂の胸だってだけで滾るのに充分なのに、こんなに綺麗で、息に合わせて少しだけ上下していて。
うわごとみたいに支離滅裂のまま、どんなに魅力的かを口にした。
「ふふっ、こんなので良いなら可愛がって」
言われるまで、見惚れていて触るなんてことに頭が行かなかった。
恐る恐る、手を出す。そのくせ大胆に両手を押し付け、途端に周りが見えなくなる。すべすべして柔らかいのに、遠坂の名のように凛と指を押し返す。てっぺんの小さな苺を摘んだら、遠坂は熱い息を漏らし、慌てて抑えたみたい。
「んふ……」
柔らかな肉の膨らみをこね回し、乳首を指でくすぐる。
「んっ……ぁ……」
澄まし顔だったのが、次第に照れ笑いと陶酔に崩れていく。今更ながら、嫌がられていないって自信が出て、大胆に愛撫する。いきなり乳首に吸い付き、舌で転がす。
「あんっ……」
ふくらみに、頬を擦りつける。夢のように快い肌に、有るや無しやの匂いに、確かな温もりに、血が沸き立っていく。
「ふふ……ねえ、羨ましい?」
遠坂が何か言っている。学園のアイドルを抱いていながら何を羨むのか。また胸に頬ずりしながら思ってて、がたんって音で間違いに気付く。
「綾子も、こんな風にして貰いたいんでしょ」
俺に言ってるんじゃない。遠坂に夢中になってしまって、美綴のことが頭から消えてた。
「べ、別に、そんなこと……っ」
遠坂の胸元に顔を埋めたまま見れば、否定しながらも美綴は泡を食った様子。
「そう? その胸の手は?」
両手でブラの上から胸を押えている。隠してるだけとも取れたのに、初めて見たような狼狽っぷりで、墓穴を掘った。
「いやっ、揉んでたんじゃないぞっ!」
自分から何をしてたか告げてしまっている。
「ふふ、揉んでたなんて言ってないのに」
「そっ……馬鹿っ……」
やりとりを聞きながらも、また遠坂の乳首にキスしてた。すべすべの肌に、ここだけ感触が違って舌先に愉悦。濡れているのは自分の唾なのに、どうかして遠坂の乳首から滴っている気がしてくる。舌に甘露。
「あぁっ……」
あまり、わざとらしくもなくなった喘ぎ。
「それで綾子、誰に胸を揉んで貰うのを想像してたの?」
「だ、誰でも良いだろっ」
慌ててそっぽを向いているけど、こっちが気になるみたいだ。
「誰かに揉んで貰うのを想像はしてたんだ?」
「それはっ……」
美綴が追い詰められるのを聞きながら、遠坂の胸に顔を埋めるのは止められない。舐め回してしまって、もう唾でてかてかしてる。そんななのに、ためらいなく頬をくっつける。
「良いのにね、そんなに恥ずかしがらなくても。衛宮くんも知ってるでしょ、綾子は自分でするのが大好きだって」
「こらっ、別にあたしオナニー好きなんてことないぞっ」
「ん、オナニーって、綾子は大抵のことは人に頼らずに自分でこなすって話よ?」
「う、嘘吐けっ……」
穂群原の女傑も、今日はこの悪魔の前に形無しだ。
「良いわ、綾子って、オナニーは好きじゃないのね?」
遠坂が、美綴を捕まえて問い詰めている。
この二人の口からオナニーなんて言葉を聞いて、また興奮してしまった。おかしなものだ、遠坂を妄想で裸にしたり犯したりは沢山の男子がしてるだろうに、本人の自慰姿ってのは想像するのも御法度めいている。美綴の方でも、妙に悪いことみたい。
「ああ、そうだよっ」
「それじゃ綾子、自分でするより衛宮くんにして貰う方が良いわよね?」
美綴の両肩を掴んで問う遠坂を追い、後から迫る。抱き締めた背中の肌に陶然としつつ、また胸の膨らみを掴んだ。せわしなく、指を動かして快い肉を味わう。
「んふんっ、衛宮くん、おっぱい揉むの上手すぎ……」
美綴は、とろんとした目を遠坂の胸のあたりに向けてる。
「だから、なんで衛宮、なんだ……」
そわそわと落ち着かない調子だ。
「さっきから言ってるじゃない、綾子、衛宮くんのことは好きでしょ?」
「だからって、別に彼氏にしたいとかって……」
問答無用とばかり、遠坂は美綴に抱き付いての口を塞いでしまった。遠坂の胸を楽しんでいた俺の手は、美綴の胸にも押し付けられた。柔らかい感触に挟まれて、ついつい指が動いてしまう。
「自分でするより気持ち良いわよ、衛宮くん上手だし」
遠坂に囁かれる美綴の顔は、俺の正面。
「止めさせろよ衛宮っ、あたしとこんなことしたいわけじゃないだろ、お前もっ」
「美綴……」
呼んだら、遠坂を止めると思ったのか、少しだけ安心した顔をする。でも、そんな期待を裏切ってしまう。さっき見た通り美綴の胸は大きい方で、そっちが気持ち良いからか、知らず知らず手を向け直していた。すぐ、ブラ越しの乳首を探り当てて弄り始める。
「ばかっ、衛宮、やめ……あっ……」
きゅっ、と摘んだらトーンの違う声を上げた。弄ったり摘んだり転がしたりを続けたら、口を噤んだ。
「急に黙り込むなんて、感じちゃったのね」
何か言い返そうとして、声が出ないみたい。俺はますます、乳首に集中攻撃。
「気持ち良いんでしょ、ここ、こんなにしちゃってるし」
「あっ!」
遠坂が何をしたのかは判らない。
「衛宮くんに可愛がられて感じちゃった?」
「ち、違っ……」
「それじゃ、さっき自分で触って濡らしちゃったの? よっぽど手慣れてるのね、オナニー」
違う、とまた繰り返す。抵抗しながらも、見る間に美綴は官能に崩れていく。
「いつまでも恥ずかしがってないで、三人で気持ち良いことしよ?」
「あぁ……」
遠坂に何をされたのか。束の間は眼を泳がせていたけど、やがて、美綴は小さく頷いた。
遠坂が離れて、俺が美綴に迫る格好になる。今更ながら綺麗なのに驚かされ、異性として意識したことの無いのが不思議になる。なのに、はっきり欲情してる今でさえ、やっぱり恋人より友で居て欲しいと思っている。
ただ、抱きたいって欲望は存分にあって、戸惑い顔の女友達に迷い無く口付けた。
キスならさっきも激しく交わしたのに、初めてみたいに新鮮で快感。媚薬含みの遠坂の唇の代わりじゃなく、美綴の唇を味わうのが愉悦。舌を突き出して誘うと、おずおずと応じてくれて、やがて取っ組み合うばかりに熱くなる。
抱き締めて背中を探り、ブラジャーを脱がしにかかる。気が付いたらしい美綴はちょっと抵抗して身じろいだけど、労せず外してしまえた。
慌てて胸を覆う腕には、その実、力が篭もっていない。
「えみや……」
腕を退けたら、一緒にブラが捲れて白い二つの山が露わになる。あからさまに誘っていた遠坂の胸と違って、ふくよかなのに直で見ると侵しがたい気配があった。親友に向けている欲情を咎められた気がして、しばし逡巡して、じっと見詰めてしまった。
「そんなに見るな、衛宮……」
掛けられた言葉に呪縛が解けて、ようやく触れた。
「ひゃっ」
悲鳴を無視し、両手使って形を辿り、こね回して変形を遊んでしまう。鍛えられた美綴の体にあって、ここばかりは柔らかく甘く、手が濡れるほどに女が湧き出している。
大口を開けて、ふくらみに食い付く。かぷ、かぷってあちこち吸い付く。ほとんど肌色の乳首に口付けて、舌触りを堪能する。
「あっ、ふぁあ……ん……」
少年めいたところのある美綴の声も、喘ぎとなれば女そのもの。もっと聞きたくて、休み無く舐め続け、揉み立てる。
「やっぱり大きい方が良いんじゃない、衛宮くん」
遠坂の拗ねた声が聞こえる。言い訳がましいことを口にしたけど、あまり聞いてはいなかった。
「良いわ。でも、こっちは頂戴」
代わりに遠坂は、美綴の乳首を摘んでいる俺の指ごとしゃぶり始める。
「ああぁっ、ちょっ……」
美綴の声が高くなる。両方一辺に舐められるのは、相当に感じるんだろう。
「自分でするより気持ち良いでしょ?」
「あっ……はふっ……ぅっ……」
返事する余裕は無いらしい。それぞれ乳首を責め続けると、すっかり尖っていたのが一段と勃起した。唇で挟んで揺すってやると、ふるふるバスト全体が波打つ。羨ましいのか妬ましいのか、遠坂はちょっとばかり乱暴な仕打ちもしてた。
「衛宮くんに、もっと色々して貰いたいでしょ」
ひたすら胸を愛でていて少しも飽きないけど、遠坂は先に進みたいようだ。
「これも脱がして貰おうね?」
遠坂の言葉に、また美綴は身を捩っている。
「あ、でも、衛宮くんが先かな」
何のことかと思う間もなく、遠坂は俺のズボンのベルトに手を掛ける。
「狡いんだ、自分だけまだこんなの穿いてるなんて」
遠坂、と呼ぶより先にベルトは解かれてしまった。
「でも、焦らしちゃって悪かったわね」
遠坂が俺の服を脱がそうとしている。事態を呑み込めないうちに下着まで下ろされていた。見れば、床にひざまづいた学園のマドンナが、恥知らずに勃起した俺の性器を眺めている。美貌に紅葉を散らして、うっとりとして。
「逞しい、衛宮くんの……」
我に返ったように羞恥に打たれる。妄想にしても不埒過ぎて、だけど遠坂の息があたってるのを感じる。
恭しい手付きで、遠坂が俺のものに触れた。
些細な感触は、それでも息が止まるほど。撫でられて、くすぐられて、腰が抜けそうなのを耐える。
「駄目よ、衛宮くんは綾子を可愛がってあげるの」
それで美綴に注意を戻し、胸に顔を埋める。舐めたら淡く汗の塩気が判る。頬に受ける体温と感触を名残惜しみながら、次第に下に進み始める。
「あっ……」
手はまだ胸に残していて、先端を転がし続けてる。
「そうそう。ご褒美に良いことしてあげるわ、衛宮くん」
言うが早いか、ペニスの先端が濡れた感触に包まれた。遠坂が咥えてくれたんだなんて、しばし頭が受け付けなかったけど、亀頭を襲う快感は否定できない。
じゅるっ、ちゅぷっ、と咥え込んでは舌を使う音と感触。棹をさすり、袋まで揉んでくれる指の動き。夢みたいな快感に、惚ける。
「自分だけ楽しんじゃ駄目」
快感に硬直していて、たしなめられた。がくがく膝を震わせつつ、引き締まったウエストを越え、臍の下に迫る。白いショーツが目に入るあたりで、頭を掴まれる。
「衛宮……」
拒むでもないけど、ためらいなく受け入れるでもない、そんな気配。もっと顔を下げていくと、逞しくも女らしい太腿の間の部分を目の前にする。愛らしく清楚に白いショーツに、だけど、しっとりと濡れ染みができて翳りが薄黒く透けている。
「美綴、こんなに濡らしてたんだ」
「そっ、そんなことっ」
指が頭を掻きむしってくる。脚を閉じるけど、それじゃ頭を挟むだけ。守りのない内腿に手を這わせて、しなやかな筋肉と肌の張りを確かめる。
「ひゃっ、んっ」
腿の力が緩むから、顔を近付けた。ショーツの上から口付けて、何度も息をした。いやらしい女の匂いに、脳味噌が沸騰する。
「はうっ、あぁっ……んぁ……
美綴を啼かせながら、俺も遠坂の舌に耐えている。油断するといきなり放ってしまいそうだけど、良く心得た感じに加減されてるらしい。フェラチオが上手い遠坂だなんて、本当に都合の良い妄想だ。
「脱がすぞ、美綴」
「いっ、いちいち言うなっ」
こちらとしちゃ、口にして気合いを入れなきゃ動けない。
「脱がすの自体は良いのね、綾子」
「ばかっ!」
ショーツの左右に手を掛け、えい、とばかり引き下げる。だけど、お尻で引っ掛かって外れてこない。
「くぁ……」
持ち上げてやるには、遠坂の口が気持ち良くて力が入らない。
「美綴、お尻……」
言ったけど、動いてくれない。しょうがないから、ショーツの上から女のあたりを舐める。
「ひゃっ、んんっ……」
布に染みた美綴の蜜の味は、少し熟し足りない果物を思わせる。だけど、吸ってみたら口に溜まるほど湧いてる。
「ふぁうっ……こら、えみや……」
遠坂の舌が、尿道のあたりをチロチロと舐めてくる。
「とおさっ……」
切羽詰まって、喘いだ。
「綾子も、協力しないと衛宮くん独り占めしちゃうわよ?」
「そんな……ぁん……」
ちゅうっ、ともう一度美綴の泉を吸ってやる。逆に、吐息で熱くしてやる。
「はふっ……」
大きく震え、やがて頭を掴んでいた手が離れた。繰り返すうち、自分で体を支えて、美綴は腰を僅かに上げてくれた。機会を逃さず、お尻の下をくぐらせてショーツを抜き取る。
「あっ……」
閉じてしまった脚を、そっと開かせる。美綴の下の毛は、髪と同じく少し茶色がかって蜜まみれ。
再び太腿に頭を挟まれる。今度は必死みたいで、さっきよりずっと強固。でも、手で攻め込むのには何の障害でもない。
濡れた毛を掻き分けて、生々しくも綺麗な肉色をした美綴の秘所を探る。
「え、衛宮、見るな……」
それはもう、男として無理。
「恥ずかしくないって。なんか、美綴らしい気もするし」
「馬鹿っ、だから変なこと言うなっ」
柔らかく熱く潤った美綴の女の部分に、指を触れる。俺が何か言うたびに、ひくっと収縮するみたいだった。
「あっ……ひゃんっ……」
くちゅ、くちゅ、と水音がするのは美綴の耳にも入っているのか。あまり開いていない脚の間で谷を上に辿って、小さな突起を探しあてる。できるだけそっと、刺激した。
「ひんっ、ふぁふっ……そ、そこ駄目っ」
よほど弱いようで、いきなり悲鳴。
「ぁうっ……」
俺も、遠坂の口技に悶えながらの攻略。
美綴の脚から力が抜けていき、恥ずかしいところをくつろげて見てやれるようになる。指で広げたのが判るんだろう、ばたばたと腕を暴れさせてる。淡い色の肉の蠢くのが、生々しく魔性の蠱惑。とろ、と落ちる雫。
「綺麗だな、美綴のここ」
口が勝手に、こんなことを言ってる。
「だからっ!」
言うな、とさえ続けられずに悶えているから、そそられて余計に続けてしまう。
「美綴の大事なとこ、よく見えてるぞ」
何か吼えて、頭を叩かれた。
意識しないうちに、性器にしゃぶり付いていた。トロトロになったヴァギナを端から端まで舐め上げてやる。さっき指先だけで悲鳴を上げたクリトリスを唇で挟んで、吸い出すように舐める。
「ひっ、ぁうっ、ふぁふんっ……だめっ、それ駄目っ、堪忍っ……」
口で拒んでいるくせに、美綴は腰を持ち上げていやらしい動きで俺の方に擦り寄せてくる。水蜜桃みたいに、美味しい代わりに顔中が濡れるほど汁気が多い。
「くぅぅ……」
美綴を思いきり啼かせながら、やっぱり俺も果てそうだった。どんな姿勢なんだか、遠坂は俺のものを深々と咥えてくれてる。根本まで唇に包まれ、それが上下するたびに吸い出される感覚がする。がくんがくん膝を震わせながら、それで耐えられるかのように美綴を舐めた。指を谷間に当てて、くちゅくちゅと掻き回す。
遠坂の指は袋を揉みつつ根本を締めていて、アクセルとブレーキを両方踏まれてる。
鼻腔を満たす女の匂いに猛る。女の子にしゃぶられながら、別の女の子を舐めている。あまつさえ、それが遠坂と美綴だ、不埒過ぎて理が飛んでしまってる。
「良いのよ、二人とも。そんな我慢しなくても」
声と共に、遠坂のフェラチオは一段と激しくなった。
「はぅっ、もう、無理……」
快感に降伏。それでも、狂ったみたいに美綴にクンニするのは止まらない。良いわよ、と囁かれた気がして力が抜け、腹の奥から何か湧き出していく。遠坂の指にもてあそばれている睾丸から、マグマみたいに飛び出してくる。
「それっ、駄目だってばっ、えみやぁっ……」
美綴の声も一段と上がった。駄目って繰り返しながら、でも頭を掴んで引き付けている。
「じゃあ、止めようか?」
「ふぁうっ、駄目っ……」
駄目、駄目、と言い続けているだけ。俺が止まったのは、もう本当に弾けそうで息が詰まったから。
「んっ、嫌っ、だめっ、止めちゃ駄目っ……」
支離滅裂な美綴に口を戻しつつ、じゅうっと吸われて、こっちは弾けた。焦らされ、散々に抑え付けられ、爆発しそうに熱くなっていた精は、背骨が融けて流れ出たほどの勢いと量で噴き出した。腰が砕けながら、それでも美綴にしがみついて、そうすればもっと長く気持ち良いみたいに蜜の壷を舐めていた。
「ふぁあっ……ふぁうんっ、あぁっ……」
実際、美綴の嬌声が耳に届くあいだずっと、血管が破裂しそうに快感。ひときわ強い声が上がって頭を腿で締め付けられる。愛液を飲み尽くそうってほど吸い、俺も遠坂に吸われてる。
「ひっ、あっ……ああっ」
短く感極まった喘ぎの後、がくんと頭を挟む腿から力が抜けた。
長い長い射精の快感がやっと引いていく。
失禁したかってほど蜜を垂らした美綴の秘所を目の前にしつつ、俺も脱力して座り込む。恥ずかしい姿を見られてると知ってか知らずか、美綴の体は呼吸に合わせて脈打っているだけ。まだ、とぷんとぷん雫が落ち、液溜まりを作っている。
「……女なんだな……美綴って」
射精の余韻に胡乱なまま、随分なことを口にしてしまっていた。
幸い、まだ羽化登仙らしくて美綴は弛緩し切っている。さっき口付けていた脚の間を指で突付いたりしても、力なく腕が動くだけ。こんな姿を眺めていたなんて知られたら、えらい目に遭わされそうだ。
それにこの先、今までどおり付き合えるだろうか。
しかし、そんな思惑は、また遠坂に追い飛ばされた。