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連載:むむ先生の"食”超"解説シリーズ

「海苔」を消化できるのは日本人だけという噂・・・これって本当なの!?

Rettyグルメニュースをお読みの皆様、こんにちは。「むむ先生」こと、杉村です。

ライター紹介

杉村啓
杉村啓
日本酒ライター、料理漫画研究家、醤油研究家。 日本酒の基本から歴史・造り方までを熱く語った『白熱日本酒教室』やタモリ倶楽部でも紹介された醤油の奥深さを書いた『醤油手帖』など、食に関する書籍を多数執筆。「むむ先生」として食のコラムや紹介を各メディアで担当。8月末には、グルメ漫画の半世紀を辿る新著『グルメ漫画50年史』を上梓。

「むむ先生の"食"超解説シリーズ」の15回目は、「海苔を消化できるのは"日本人だけ"という噂を聞いたことがあるけど、これって本当なの?」です。

いやー、またもや難しいお題がきてしまいました。

結論から言いますと、半分本当で、半分本当ではありません。何がなんだかわかりにくいと思いますが、どういうことなのか説明していきましょう。

日本人にしか海苔は消化できない!?

この話は、2010年にフランスの微生物学研究チームが、「生の海苔を消化できるのは日本人だけ」という研究結果を発表したところからきています。

生の海苔は、非常に固い外壁(ポルフィラン多糖という物質で細胞壁がつくられています)を持っているので、通常の消化液では分解できないのですね。

もともと食べ物の消化というと、胃液などで食べ物をドロドロに溶かし、吸収するというイメージを持っている人もいるかと思います。

でも実は、腸の中に存在しているさまざまな菌の力も、食べ物の分解に一役買っていたりするのです。

そして前述の研究では、日本人の腸内にのみ、この海苔の細胞壁を分解する酵素を生み出す微生物が存在することがわかったのです。

他の国の人は、腸内にその微生物がいないので、消化できないということですね。

日本人は大昔から海苔を食べていました。
701年に制定された、大宝律令の中にも、朝廷への税の一種として、海苔の記述があったほどです。

そんな昔から食べ続けていたためか、海苔を分解する海洋性のバクテリアを体内に取り込み、消化できるようになったというわけですね。

ここまでが、半分正しいという意味のところです。

海苔は"加熱"してしまえば誰でも消化できる

前述で、生の海苔の消化は、日本人の腸内にのみ、海苔の細胞壁を分解する酵素を生み出す微生物が存在する・・・とお伝えしましたが、

実は、海苔を加熱してしまえば、細胞壁が壊れて誰でも消化できるようになるのです。

たとえば日本以外の海外の海苔に、韓国海苔がありますが、あれは焼いた海苔を使っているので、腸内に微生物がいない韓国の人達でも消化できるというわけですね。

これが、残りの半分です。

つまり、生海苔は腸内細菌のある日本人しか消化できないが、焼き海苔は誰にでも消化できるというわけです。

海苔の養殖方法は2つある

そんな海苔ですが、養殖の方法が2つあるのをご存知でしょうか。

簡単に言うと、海苔は胞子を網につけて、海中に張った海苔網で育てます。

この網を海につけて管理する方法が、2種類あります。

ひとつは水深の浅い海で行われる「支柱柵養殖」です。
海中に支柱を建てて、そこに網を張って育てます。網の位置が固定されているため、干潮時には網が海の上に出て、空気に触れた状態に。満潮時には網は海の中に沈んだ状態となります。

こうして、空気中と海中を交互に繰り返すことで、柔らかい、口当たりの良い海苔になるのです。有明海などがこの方式の代表的産地です。

もうひとつは水深の深い海で行われる「浮き流し養殖」です。海に浮きのついた海苔網を沈め、流されないように錨などで固定します。こうすることで、潮の満ち引きにかかわらず、常に海苔網は海中にある状態で養殖を行うのです。

浮き流し養殖で作ると、しっかりとした厚みのある海苔に育ちます。瀬戸内海の、兵庫県産や香川県産などがこの方式の海苔です。

ちなみに浮き流し養殖の海苔は、コンビニのおにぎりにも採用されています。食べる直前におにぎりに巻くので、しっかりとした浮き流し式の方が合っているというわけですね。

いま、海苔の生産量が減っている現実

ところで、海苔の生産量が減ってきているという話をご存知でしょうか。その原因は、海の貧栄養化にあるとされています。

1960年代から80年代は、さまざまな排水が海へ流れ込み、いわゆる「海が汚い」状態となっていました。その中には、海の生物が必要とする栄養分も多く含まれていたため、赤潮というプランクトンの異常発生がしばしば起きたほどです。

そこで、綺麗な海を取り戻そうと、排水を規制するなどして、徹底的に浄化に務めることになりました。そのかいあってか、今の海はずいぶんと綺麗になったと思います。

ところが、それが海苔にとってはあまりよくなかったのです。

というのも、赤潮が発生するほどの栄養分が多い状態、つまり富栄養化の状態だと、海苔が育つための栄養も多かったのです。

今の海は、水質の浄化に注力をしすぎた結果、栄養分があまり入ってこない、いわば貧栄養化の状態にあるのですね。

その分、養殖の海苔の育ちがあまり良くなく、生産量が落ちているというわけです。

ただ海を綺麗にすれば良いというわけではなかったのは、難しい問題ですね。

【むむ先生のイチオシ調味料〜海苔編〜】

海苔の世界でも、関東と関西で大きく違うことがあります。それは、焼き海苔か、味つけ海苔のどっちが好きか、です。

実は、関東では焼き海苔の方が消費量が多いのに対し、関西では味つけ海苔の方が多いのです。地域によっては、焼き海苔の2倍、味つけ海苔が売れるところもあるとか。

これは、海苔の味そのものを楽しむ関東に対して、ダシ文化のある関西では、ダシ醤油が合わさった複雑な味わいが好まれるからとも言われています。

関西というよりも、関東より西では、卓上に味つけ海苔を置いておいて、パリパリとおやつ代わりに食べるところも少なくありません。

そんな、そのままパリパリ食べても美味しい、最近のお気に入りの海苔が、今回紹介する大野海苔です。

徳島へ行ったときに薦められて買ったのですが、すっかりハマってしまいました!

以後、徳島に行くたびに購入していますし、何なら通販で補充したりもするほどです。あまり普段から味つけ海苔を食べないという人も、是非試してみてください!

■漫画で解説!日本酒教室

日本酒に興味はあるけど、「なんだか難しそう」「どれを選べばいいのかわからない」……。そんなあなたのための“日本酒教室”、はじまりはじまり!詳しくはこちらから http://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/nihonshu/0002.html

■グルメ漫画の歴史をまとめた本『グルメ漫画50年史』を出しました

50年にわたるグルメ漫画の歴史を、10年ごとに区切り、当時の食文化からどういう影響を受けてきたのか、そして食文化にどういう影響を与えてきたのかを記しました。

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