京都大は22日、iPS細胞研究所の山水康平特定拠点助教らが2017年2月に発表した論文について、捏造(ねつぞう)と改ざんの不正行為があったと発表した。内容に疑義があるとの指摘を受けて調査したところ、主要なグラフなど6点全てに不正があったと認定した。京大は論文を掲載した米科学誌に撤回を求めるとともに、関係者を処分する予定だ。
山水助教は山中所長とは別の研究室に所属している。iPS研で研究不正が発覚したのは初めて。記者会見した山中伸弥所長は「同じような論文不正が二度と起こらないように取り組む」と謝罪する一方で「他の研究とは無関係であることを理解してほしい」と強調した。自身の進退については「どういう形が一番いいのか、(所長辞任など)全ての可能性を検討したい」と述べた。
論文は血液中の有害物質や異物が脳に到達するのを防ぐ「血液脳関門」と呼ぶ組織を人間のiPS細胞から作製したという内容。京大は調査委員会を組織し、保管していた実験データからグラフを作成しようとしたところ再現できなかった。京大によると、不正があったのは論文の根幹をなす部分で、結論に大きな影響を与えているという。
山水助教は調査委に対し、1人で不正を行ったと認めた。「論文の見栄えをよくしたかった」と説明したという。調査委は論文の共著者10人について関与はなかったと結論づけた。
iPS研は所属する研究者に対して実験ノートやデータの提出を求め、研究室を統括する主任研究者がチェックしてきた。不正を防げなかったことについて、山中所長は「不十分だった。管理を強化したい」と語った。