香港の出版社オーナー、中国当局が電車内で拘束

2015年に相次いで失踪した5人の香港の書店関係者の一人、桂氏はスウェーデン国籍を持っている(写真は失踪後、2016年1月に再び姿を現した際に中国のテレビで罪を「自白」する桂氏)
Image caption 2015年に相次いで失踪した5人の香港の書店関係者の一人、桂氏はスウェーデン国籍を持っている(写真は失踪後、2016年1月に再び姿を現した際に中国のテレビで罪を「自白」する桂氏)

香港の出版社などを経営する作家の桂民海氏(本名・桂敏海)が20日、北京行きの電車に乗っていた際に当局者らによって連れ去られていたことが明らかになった。

中国指導部の個人的な生活に関する本を複数出版している桂氏は、刑務所から最近釈放されたばかりだった。

桂氏の娘によると、電車に突然、私服警官が乗り込んできて桂氏を連れ去ったという。

報道によると、中国生まれでスウェーデン国籍の桂氏は、病気の検査のためスウェーデン大使館に向かう途中だった。

桂氏の拘束を最初に報じた米紙ニューヨーク・タイムズは、桂氏には上海領事館の職員2人が同行してた。

英国に滞在している桂氏の娘アンゲラさんは、ニューヨーク・タイムズに対し、「状況が悪い方向に非常に急に変わってしまったことだけは分かっている」と語り、同氏の解放を訴えた。

アンゲラさんは、当局者に連れ去られた際の詳しい状況については知らないと話した。

一方、スウェーデン政府は桂氏の拘束を受け、中国大使を呼び抗議したとみられる。

スウェーデン外務省のカタリナ・ビレニウス・ロスルンド報道官は、「スウェーデン政府は何が起きたのか十分認識している」と述べたが、詳細については触れなかった。報道官はさらに、「高い政治レベルで確固たる対応が取られており、中国当局と連絡を取り、彼の状態についてすぐに情報を提供するとの約束を取り付けた」と明らかにした。

桂氏は2015年10月にタイで休暇中に行方不明となった後、ほかの書店関係者と共に中国本土で拘束されていることが明らかになり、謎めいた経緯が国際的な関心を集めた。

中国の工作員が国外で超法規的に桂氏を拉致したとの疑惑は、海外の懸念を高めた。

しかし、中国当局は桂氏らが自主的に中国に来たと説明している。

桂氏はその後、10年以上前に起きた交通事故への責任を認めたが、同氏の支援者たちは自白は強制されたものだと主張している。

複数の人権擁護団体は、桂氏らが中国で一党支配を続ける共産党への反対意見に対する取り締まりの対象になったと考えている。

しかし、1997年まで英国が統治していた香港では、中国に返還された際の合意で明確な自治権が認められている。

桂氏は、昨年10月に刑務所から釈放されたが、家族はしばらく桂氏の居場所が分からなかった。その後、桂氏が東部の浙江省寧波市に住んでいることが明らかになった。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、桂氏には筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状が出ており、大使館で検査を受ける予定だった。

しかし、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、桂氏の友人や知人たちは、同氏がスウェーデンのパスポートの更新をしようとしていたため、大使館を訪れようとしていた可能性があると語ったという。

桂氏の現在の居場所は分かっていない。

(英語記事 Hong Kong bookseller seized from China train

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