モルガン・スタンレー、米通商リスクに警鐘鳴らす-ヘッジ呼び掛け

  • 通商政策の多くで判断期限が迫る、市場に一層大きく影響する恐れ
  • ヘッジとして対ウォンでの円ロング、ディフェンシブ株保有など助言

モルガン・スタンレーのストラテジストは、米国市場における通商リスクはもはや仮定の問題ではなく、投資家は十分に注意を払うべきだと指摘した。

  2016年の米大統領選中のトランプ氏の発言が通商政策に対する国民の想像を膨らませたと見られるが、トランプ政権の1年目はこうした発言よりも実際の行動は少なかった。一方、中国との一触即発状態の紛争や現在行われている北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉など、通商政策の多くで判断の期限が迫りつつあり、こうした問題がマーケットに一層大きく影響し始める可能性がある。保護貿易の兆候を示唆する最新の動きでは、米国が22日に太陽光パネルの輸入品に関税を課す決定を下した

  マイケル・ジーザス氏らモルガン・スタンレーのストラテジストは22日のリポートで、「NAFTA再交渉を進める一方、関税など保護主義的措置を規定した米国法に基づく勧告に対して米政権は行動を起こすのか、あるいは行動を起こさないのか、当面の期限が迫っている」と指摘。「これはNAFTA再交渉やより広範な保護主義的措置で一層厳しい姿勢を取るという懸念をあおる恐れがある」と述べた。

  同ストラテジストらは、現状維持か一時的な通商紛争、強硬な保護主義的措置の3つの通商シナリオを想定。一時的な紛争は市場で短期的にリスク回避の動きを呼び起こす一方、輸入抑制へ全力を挙げるようなら影響が長引く可能性があるとみる。
        

  こうしたリスクを回避する手段として、為替と株式に関するモルガン・スタンレーの助言は以下の通り:

  • ヘッジとして韓国ウォンに対し円をロング(買い持ち)する
  • 年内はメキシコ・ペソとカナダ・ドルのコアショート(売り持ち)を維持
  • 景気敏感株(工業、素材、テクノロジー)や海外売上比率の高い銘柄よりも、ディフェンシブ株(ヘルスケア、不動産投資信託、通信、公益)を選好、特に海外売上比率が低い銘柄
  • 米国の関税措置でサプライチェーンが混乱するリスクのある銘柄は売り:衣料、自動車、通信機器、小売り、半導体、太陽光、テクノロジーハードウエア
     

  ジーザス氏は「関税措置の発動決定は近年の米国史で例がないわけではないものの、米国の従来の自由貿易スタンスが大きく転換したことはない」と説明。「ただ、現行の自由貿易政策を米国は堅持するのかどうかについて投資家の見方が関税措置によって揺らぐ恐れがあることを、われわれは認識しておかなければならない」と記した。
   
原題:Morgan Stanley Warns on U.S. Trade Risk and Suggests Hedges (1)(抜粋)

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