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【感想】邦画史上最炎上作品『デビルマン』が自分に遺してくれたモノ

2018-01-23 01:24:32 | 映画

こんにちは、かずひろ(@kazurex1215)です。






ここ数年、漫画やアニメを原作とする実写映画が、邦画においてもたくさん手がけられてきた。昨年公開されただけでも、「銀魂」「ジョジョ」「ハガレン」思いつくだけで10作品は越える勢いだ。それらが語られる中で避けては通れないというか、いつもいつも槍玉に上がるのが、2004年に公開された永井豪原作の同名漫画を実写映画化した『デビルマン』だ。








一応、実写『デビルマン』および原作漫画の内容に触れた内容となっています。ネタバレにご注意です。※







観た方は分かると思うんですが、実写の『デビルマン』は凄い。そこかしこに火種ともいえる部分ばかりで、5分に1回はツッコめてしまうし、まず一本観終えられるかどうかが鬼門な人も多いのではないかと。この作品が公開されて以降"デビルマン基準"というものが用いられ、封切られる実写化作品に対し、「これはデビルマンよりはマシ」「デビルマンに匹敵するクオリティだ…」だとか言われてしまうほど、邦画界の歴史に名を刻んだという意味では、原作と同じように悪魔的な伝説を作り出したといえる。ちなみに、自分はこのデビルマン基準をあまり好きではないことは補足しておく。


とか言いつつ、自分はDVDで実は3回も観ていて、そろそろ観賞用に買ってもいいんじゃないかと思ってるくらい。まあ、初見はもちろん「え?????んんんんんんん!?!?!???!?」となったけど、回数を重ねるごとに謎の愛着も湧いてきて、自分の中で実写『デビルマン』は、駄作と評された向こう側の境地に辿りついた稀有な作品という位置づけになっている。

肝心の本編の内容はというと、正直言って、あぁぁ……そりゃあ叩かれまくるわな……と思わずにいられなくて、映画を作る上での悪い部分やダメな所を全部ひとまとめにして仕上げ、色んな不運も重なった結果、出来上がってしまったんだな、と。


・状況全てをセリフで説明しようとする
・場面転換が雑(昼から夜に突然切り替わるなど)
・役者の演技が全体的に棒読み(特に主演2人)
・聞いてて気恥ずかしくなるセリフ選び(自動車教習所で流れるドラマかよ)
・辻褄が色々と合わない



だいたいの不満は自分的にこの5つに集約される。これ一つでも当てはまればヤバい映画なのに、実写デビルマンは全てハマってますから、それはもう凄いですよ。軽く具体例を出してみると、

・全体的に演技が…。主演二人はこれが演技初挑戦らしい。
→会見時に自身の演技を褒めるようなコメントを出していたようで、まさに火にガソリンを注ぐ状態。

・ヒロインの父親に悪魔であることがバレた主人公が「ああぁぁぁああああ」って謎に叫び出す。
→大切な人に隠しごとがバレてしまったら、その人の隣で天を仰いで叫ぶのだろうか。

・中盤、隠れ家を襲撃されたデーモン達が丸腰で人間相手に特攻する。脈絡もなく。
→一体化したデーモンは並の人間より強いはずなのに、銃弾に向かって無惨に散っていく彼ら。

・客演の芸能人が邪魔で緊張感を削ぐ以外の何物でもない。謎のK-1推し。
→近所のおばさん風の小林幸子、車椅子姿の的場浩司、ニュースキャスターのボブ・サップ(これが一番意味不明)、デーモン万歳!のKONISHIKI、何が辛いって主人公より客演の人の方がいい演技してるってことなんだよなあ…。

・物語の中盤で「俺はサタンだからな」と何故か自分の正体を主人公の前で口走ってしまう飛鳥了。にも関わらず「俺を騙したな!」と終盤で激昴する不動明。
→物語のラスボスであるサタンの正体は原作でも最後まで明かされず、その正体が判明するまでの流れが重要なキーポイントだったのだけど、自分で言っちゃうし天使の羽が生えた姿で登場もしてるのになぜ不思議に思わないんだ。

・デビルマンの姿になるのは本編中で恐らく10分もない。
→ビジュアルは悪くないのに、デビルマンとして変身した姿もその姿で戦うシーンもあまりに少ない。戦闘シーンを担う半デーモン化した明の姿、あれもうちょっと何とかならなかったの!?

などなど。




ストーリーラインは端折りつつも原作に一応準拠した形にはなっていて、強引ではあるが全5巻の原作漫画を網羅した作りになっている。完結まで描こうとした気概は認めたいのだけど、上映時間の2時間弱にその全てを詰め込んだ''だけ"になってしまっている。たった5巻しかない原作だし、まとめ上げることはさほど難しくないのでは?と思う方もいるだろう。しかし原作はその中身が異常なほど濃い。

大きく分けると「誕生篇」「妖鳥シレーヌ篇」「魔獣ジンメン篇」「デビルマン軍団篇」「最終戦争篇」という5つの章に分けることが出来る。この一つ一つに見どころも沢山あって、ほんとに面白いんだけど、これら5つのエピソードに含む重要なパートだけが単発でぶち込まれるという、非常にもったいない構成になっている。

原作どおりに全てを描くことが正しいとは思わないし、アレンジを加えて映画として自然な仕上がりにするのは当然のことだと思う。事実として、「デビルマン軍団篇」から不動明以外のデビルマンをミーコだけにしたのは上手いと思う。デーモンとデビルマンが区別しづらいのと、2時間に納める為にここは描けないと判断してのことだろう。

読者にトラウマを与えた牧村家への虐殺も、原作からかなり改変されている。美樹のストーキングをする男性のちっぽけな嫉妬が、疑心暗鬼に囚われた近隣住民をまさに悪魔に変えて、家族に襲いかかる。人間の内に秘める陰の部分が爆発して悲劇を生んだという意味で、映画の尺に納める作劇の描き方としては上手いなあと。夫妻の最後の会話で、妻の「浮気したことある?」という言葉も、死が目前に迫ったからこそ不意に出てきた言葉ともとれる。近所の住民が家に押し込み夫妻に対しリンチをかけめった刺しにするシーンは何度観ても気分が悪くなる(褒めてます)。


しかし、改変で良かったのはそれくらいだろうか。原作でも屈指の人気キャラ「シレーヌ」との闘いも描かれるが、人間体のままの戦闘は素人レベルだし、CGで描かれる空中戦もなかなか迫力があったけど決着は描かれないまま、シレーヌが倒されたのかどうかも分からない(分からないってどういう…って感じですけど、ほんとに分かんないですよね…)。原作で心理作戦を用いてデビルマンに揺さぶりをかけた「ジンメン」も、狡猾さや残忍さも無くてワンパンで倒される始末。邦画で一時期主流だった「DEATHNOTE」「進撃の巨人」のような前・後編で制作するスタイルがこの映画に導入されていれば、もっと上手くやれていたのかなと時々考えてしまう。




そんな実写デビルマンだけど、唯一良いなと思うのが、全体的なCGの画作りだ。登場する悪魔こそ数は少ないが、造形はグロテスクで気持ち悪さも出ている。特にジンメンは良かったなあ。終盤に登場するサタンも、デビルマンと対になる造形で美しい。明がデビルマンへ変身するシーンも毛並みが逆立ってゾワっとする原作の感じが出ていて、CGと現実の繋ぎ目がいい具合に分からなかった。

VFXの凝ったバトルシーンの迫力もなかなかで、上で少し触れたシレーヌとの空中戦も良かったし、クライマックスのサタンvsデビルマンが引き起こすアーマゲドンは一見の価値があると思っていて、「最終戦争篇」がこれまで映像化されたことはアニメでも無かったのだけど、二人の闘いで引き起こされる大爆発や、デーモンの大群と覇気を纏ったデビルマン、あの一連のシーンを実写で映像化したという面については評価したい。まあ、これも数分くらいしかないのが惜しいのだけど。




と、書いてはみたが実写「デビルマン」に色々物申すことすら手垢がつきまくったことで、自分があーだこーだ言うことも言い尽くされてきたことだと思う。そこでタイトルに戻るんだけど、そんな実写「デビルマン」が自分に唯一遺してくれたモノとは、『デビルマン』というコンテンツを知るきっかけを与えてくれた、ということだ。


自分にとってのデビルマンといえばアニメ版の「あれは誰だ 誰だ 誰だ」の有名すぎるOPと「デッッッビィィィィィィィィル!!!!!!」でチカチカ光りながら変身するあの姿、80年代の完全懲悪ヒーローというイメージだった。実写作品が無ければ、アニメ版と原作漫画が全く違う別モノであることも知らなかっただろうし、アニメと漫画、両方で全く異なったメディア展開がこの時代に実現していたのかと思うと、ホントこの作品は先駆的だったんだな、と。




「アニメ版とどう違うんだろう?」ちょっとした興味から当時小学4年だった自分が、原作漫画を手に取って読んだあの瞬間の、まさに身体中に衝撃が走るトラウマに近いあの感覚は、今でもハッキリと覚えている。どこか血と殺戮を求めている不動明は果たして"善"なのか、デーモンに追い込まれていく内にその本質を見せていく人間の醜悪さ、そして衝撃のクライマックス。実写デビルマンがあの時代に制作され公開されたからこそ、当時中学・高校でもなく小学生だった自分に衝撃を与えてくれたという意味で、この作品が世に放たれたことは大いに意義があると思っている。






こうしたアニメ・漫画の実写化作品が、現代においてたくさん生み出されていくのも、そういうことなのだと思う。もちろん知名度が高く名の知れた作品を実写にすることの集客率の高さもだけど、連載中もしくは連載が終了した作品に再びスポットが当てられ、当時をそのままとはいかないが、ファンの方にとってはハマっていた熱気が蘇るし、新たなターゲット層の開拓にも繋がっていく。だからこそ、その実写化した作品が傑作だろうが駄作だろうが関係なく、公開に至るまでの過程そのものが重要なんじゃないかな、と。原作者にとってマイナスになることはなくて、実写作品がクソつまらなくても「やっぱり原作が一番だな」となるし、面白ければ「原作も面白いよ!」となるだけ(いやしかし、面白いに越したことはないのは事実)。


とにもかくにも、原作を読んだトラウマからなかなか抜け出せなかったのですが、中学生・高校生の時にOVAや派生作品を片っ端からチェックし、見事にデビルマンオタクとなってしまった。実はまだNETFLIXで配信されている「DEVILMAN CRYBABY」は観れていないので、早くチェックしたいところ。

ぜひ実写「デビルマン」、観てみてください。
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