悲しいことに、人間が動物を虐待する事例は後を絶たない。暴力という分かりやすい例以外にも、不衛生な状態で放置してエサもろくに与えないというようなネグレクト(飼育放棄・育児放棄)も虐待に当たる。
だが、そういった状態に置かれた動物を助けようとする人間がいることもまた事実だ。コスタリカで、ネグレクトで瀕死の状態になっていた犬が発見され、アニマルレスキューによって救出された。
しかし、何週間も閉じ込められ食べ物も与えられていなかった犬の生命力は底をつきかけていた。まさに瀕死の状態にあったのだ。
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ネグレクトを受け、瀕死の状態だった犬
今年の初め、「チャーリーズ・エンジェルズ・アニマルレスキュー・コスタリカ」は、傷だらけで、骨と皮ばかりになった一匹の犬を保護した。どうした経緯でそのようなことになったのかは分からないが、その犬は何週間も閉じ込められたまま、放置されていたのである。
レスキューの人々は息を飲んだ。手遅れだったのか?
しかし、人間の気配を感じた犬は、わずかに頭を持ち上げて見せた。
レスキューの創設者のタニア・カッペルティさんは、この犬をレオンと名付けた。ライオンのようにたくましく、生き延びて欲しいという願いを込めて。
「骨と皮の塊のような姿を見たときには、あまりの悲惨さに膝から崩れ落ちそうになりました」とカッペルティさん。「これまでの数々の動物救助の中でも、レオンの場合は最悪のケースのひとつでした」
重度の貧血に陥っていたレオン。一刻も早い輸血が必要
惨い状況におかれていたにもかかわらず、レオンにはまだ生きようとする意志があった。与えられたエサを平らげ、ボウルを舐めることまでしたのである。
少し希望が生まれた。レオンはまだ生きようとしている。
だが、エサと水と寝床、そして傷の手当以外にもレオンが必要としているものがあった。血液だ。レオンは重度の貧血状態だったのである。
血液のドナーになる犬は、健康で、体重が25kg以上なければならない。レスキューは、フェイスブック上にある愛犬家グループに、ドナーを募集する投稿をした。しかし、名乗り出てくれた人はみな、住んでいる場所が遠すぎたのだ。
救世主となるドナー犬が駆け付けてくれた!
その時、カッペルティさんの脳裏に浮かんだのがロットワイラー犬のノルマンだ。
カッペルティさんは早速ノルマンの飼い主のホセ・ロボさんに電話をかけた。ロボさんとは旧知の間柄だ。レオンのことを聞いたロボさんは、忙しい最中であったにもかかわらず、仕事を全部キャンセルしてノルマンを連れてきてくれた。
何種類かの血液検査が行われ、スタッフ全員が安堵の息をついた。ノルマンは非常に健康でドナーとしての資格を備えており、レオンに輸血できるタイプの血液型を持っていたのだ。
愛犬の採血に気を失いそうになる飼い主
「ノルマンは終始落ち着いていました」とカッペルティさんはその時の様子を振り返る。「もっとも、飼い主の方は失神寸前でしたけどね!」
飼い主のロボさん自身も、採血のための一連の流れを見ているのは大変だったと認めている。当事者であるノルマンは、全く問題ないという顔をしていたのだが。
「ノルマンは理想的なドナーでした!私はずっと側についていたのですが、抜かれた血の全量を見たら、部屋にいられなくなってしまったのです。獣医の助手が水を一杯くれて、ようやく落ち着きました」とロボさん。
「ノルマンはとても勇敢で落ち着いていました。考え深げな目つきをして、こう言っているようでした。『大丈夫だよ、心配しなさんな。頑張ろうぜ!』ってね」
その後、カッペルティさんはお礼の品を持ってノルマンの家を訪ねた。いくつかの選りすぐりのおもちゃの中でも、ピンクのテニスボールが特にノルマンのお気に召したそうだ。
image credit: Charlie's Angels Animal Rescue - Costa Rica/The Dodo
回復の兆しを見せたレオン。散歩にも出られるように。
そして、ノルマンの健康な血を分けてもらったレオンはメキメキと回復し、フェイスブック上の動画(1月20日)では、リードをつけて散歩に出るようになっていた。里親も決まって、幸せになるはずだったのだ。
運命はあまりにも残酷だった。れから幸せな余生を送るはずだったのに、まさかの事故で、レオンはこの世を去っていった。
だがしかし、運命というのは時として残酷なものなのである。
この記事を書き終えようというまさにその時、フェイスブックの情報が更新された。新しく入った情報は、レオンの訃報だったのだ。
その投稿によると、レオンは先週土曜日に里親の家庭に移った。犬の飼育経験が豊富な家庭だ。
そしてその日、リードをつけて散歩に出ようとしたところ、家の方に向かって二人の人が歩いてきた。ただそれだけのことなのだが、極端に怯えたレオンはパニックを起こして逃げ出し、林の中に入り込んでしまったのである。
日が落ちて何も見えなくなるまで、そして翌日も日の出と共に捜索が続けられた。しかし、午後になって、川の側でレオンの遺体が発見されたのである。
レオンの人間に対する恐怖感は根強かった
レオンは人間に虐待されていた犬である。とても臆病なことは分かっていたが、人間に対する恐怖心はこれほどまでに大きかったのだ。
動物病院に入院していた頃のレオンはとても快適で落ち着いており、楽しそうに、自信に満ちて歩き回っていた。だがそれは彼が信頼し心を許していたからだった。
見ず知らずの人間に対して必要以上に怯えてしまうのは、彼の生い立ちを考えれば無理もないことだろう。
人によって傷つけられ、人によって助けられ、そしてまた人と暮らせることとなったレオンは、見知らぬ人との遭遇で自ら命を落としてしまった。
レオンよ、安らかに眠れ。
そして願わくば、虹の橋の向こうで、心優しき人間と楽しく暮らせますように!
via: The Dodo / Facebook など / translated by K.Y.K. / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
切ないなあ・・・ただただ切ない
2. 匿名処理班
まって。リードを付けてから外に出る、当然のことを怠った結果、この怯えた子を死に追いやったってことだよね?
リードを付けてからパニックになったって行方不明にはならないよね?
3. 匿名処理班
閉じ込められた証拠の写真が無い
ネグレクトの証拠の写真も無い
飼い犬が逃げて餌をとれずに痩せた可能性もあるね
4. 匿名処理班
なんでこんなこと(ネグレクト)できるんだろう。
R.I.P.レオン
5. 匿名処理班
善意と優しさと勇気を与えたことは無駄じゃ無かった。
覆せないほどのトラウマを植え付けたヤツが地獄へ落ちれば丁度いい。
6. 匿名工作員
ああ、落ち込む。
虐待したヤツを同じ目に…って思う。
負の連鎖になるからダメなんだろうけども
7. 匿名処理班
飼育放棄をした飼い主以外、誰も悪くない
…なのに、どうしてこんなにやり切れない思いをするんだろう
8. 匿名処理班
悲しすぎる
9. 匿名処理班
あぁ最後まで読んでこれはきつい…
10. 匿名処理班
救われないなあ。圧倒的にこういう動物が多いんだろうけど。
11.
12. 匿名処理班
世の中幸せな話ばかりじゃないとわかってはいるが…
希望の持てる経過だっただけに辛いなぁ
来世があるならどうか幸せに
13.
14. 匿名処理班
神様って意地悪やな、と言いたいけど、
そうなるようにしたのはお前ら人間やでって言われるんだろうな
遠い国の話なのに辛すぎてかなわん…
胸糞な元飼い主という名のゴミカスには言うことはない
罵る言葉も時間も与えることすら勿体無い
15. 匿名処理班
レオン君の冥福を祈ると共に、後悔してもしきれないほどの思いで苦しんでいるだろう里親さんの心の傷が少しでも早く和らぐことを願います。
16. 匿名処理班
犬なのに猫科の名前つけられるってどんな気分なんやろなぁ
17. 匿名処理班
つれぇわ
18. 匿名処理班
人間がひどいことをしてごめんなさい。
人類を代表して謝ります。
天国で必ず幸せに過ごせますように。。。
お腹いっぱい食べれますように。。。
19. 匿名処理班
現実とはいかに残酷か…みたいな
ドラマだとハッピーエンドなんだろうなぁ
20. 匿名処理班
うう、涙・・・
21. 匿名処理班
レオン、本当に来世では幸せになってほしい、ただそれだけです。
22.
23. 匿名処理班
悲しすぎる
24. 匿名処理班
やさしさに触れて一瞬でも幸せを感じた生涯であってほしい
25. 匿名処理班
私も人にトラウマあるからわかります
本当人は怖い
逃げちゃう
26.
27. 匿名処理班
自分は因果応報を信じる。
飼い主はこの犬にしたようなことが必ず起きる。
28. 匿名処理班
暴力的な表現かもしれないが、あえて言わせてもらう
ネグレクトした飼い主も同じ目にあえばいい
こんな事ができる人間がのうのうと生きていいわけがない
里親は悪くない。残念だけど保護犬は予測不能な動きをする事がある。
残念な結果だけど短い間でも暖かい寝床とおいしいごはんが食べられてよかったよ
最期も見つけてもらえてさ。それも叶わなかったらかわいそすぎるもの
29. 匿名処理班
やるせないねえ。
人間不信というか、他者には度し難いトラウマのなせる業。
きっと、かつてネグレストされた人間に風貌や衣服が似ていてパニックに陥ったのだろう。
里親さんもつい油断したな。
30. 匿名処理班
映像見ても警戒してるのがわかるね。
31. 匿名処理班
悲しい…
ただただ悲しい…
32. 匿名処理班
虐待されてた犬が首輪やリードをさせてくれるわけないんだよなぁ
33. 匿名処理班
短い間でも、レオン君は救われたと思うよ
34. 匿名処理班
悲しむな、ぜーーーーったい天国で幸せに暮らしとる!
それ以外の選択肢をオレは認めん!
35. 匿名処理班
こういう記事を見て悲しいって思うのは動物のことが好きな人なんだよね
動物をどうでもいいって思ってたり実際に虐待をする人はこんな話興味もない
そして虐待する奴を蔑みはしても実際に何か出来るかって言うと殆どなんにもできない
特定の団体に寄付をしたりはできるけど今そこで傷ついている子を助けることは大抵できない
子供の頃友達の家に行ったら虐待を受けている子がいた。友達をやめるくらいしかできなかった
36. 匿名処理班
防げた事故だよね。何匹も飼育した経験上その子その子の個性があるってのを忘れた行為。結局他の子達と同じに見られて綱も付けずドアあけたら人がきてパニック。綱を付けてからドアを開けてたら…最後まで人間に傷つけられ亡くなったのね。本当に可哀想。
37. 匿名処理班
救いはないのか
38. 匿名処理班
涙止まらぬ・・・
多分だけど近づいてきた二人組の人の何処かに「虐待していた元飼い主」に似た姿を見たんだろうね
それでパニックに・・・シアワセまであと少しだったのに・・・残念です
知り合いの犬も保護犬ですが「作業着」の人がダメみたいです
何のトラウマを持っているのか判りませんが作業着姿の人を我を忘れるほど怯えます
39. 匿名処理班
恐怖が魂にこびりついていたんだね。
助けた人も、散歩に連れて行こうとした人も、知らずに近づいて来た見知らぬ人達も、誰も悪くない。
この子を虐待した人間以外は、誰も悪くない。
悲しい記憶だけを持って行く前に、優しい人間に出会えて、少しでも幸せな記憶をお土産に出来たレオン、安らかに。
(´;ω;`)
40.
41. 匿名処理班
※2
リードを付ける前か後かはっきりとはわからないけど
リードが付いていたってうっかり手から離れてしまえば人間の足では追いつかないこともあるのでは。
42. 匿名処理班
※2
リードを付けて、と文中にあるが
首輪が緩かったとか、リードは付けても持ち方が悪かったんだろうね
手首に巻き付けるように持ってれば、ものすごい力で引っ張られても簡単には外れないと思うけど、普通に握ってるだけだと、パニック起こした犬の火事場の馬鹿力には負けるかもしれない
43. 匿名処理班
知らない人を見ただけでパニックになるレオン
血を抜かれても平然としてるほどの愛情と信頼を得ているノルマン
ほんと世の中不平等
44. 匿名処理班
最期に少しだけ人間の優しさに触れて幸せな気分を味わえただろう事だけが救いかな
哀しき前例となってしまったけど、レオンが存在した事はカッペルティさんロボさんノルマンとこの記事を読んだ人の記憶には残るから
哀しいワンコがこの世から居なくなるといいなあ
45.
46.