日銀:金融政策は8対1で現状維持-物価見通しも据え置き

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  • 予想物価上昇率の記述を「横ばい圏内で推移」に上方修正
  • 事前調査はエコノミスト全員が金融政策の現状維持を予想

A pedestrian walks past the Bank of Japan (BOJ) headquarters in Tokyo, Japan, on Tuesday, Jan. 23, 2018.

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

日本銀行は23日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を8対1の賛成多数で決定した。片岡剛士審議委員は4会合連続で反対。2017年度から3年間の物価見通しは据え置いた。

  誘導目標である長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」といずれも据え置いた。長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針にも変更はなかった。

  片岡委員は18年度中に物価目標を達成することが望ましく、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう長期国債の買い入れを行うことが適当として現状維持に反対した。物価目標の達成時期が後ずれする場合は、追加緩和を講じることが適当と主張した。議案の提出は見送った。

  同時に発表した3カ月に1度の経済・物価情勢の展望(展望リポート)は、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通し(政策委員の中央値)を17年度0.8%上昇、18年度1.4%上昇、19年度1.8%上昇(消費増税の影響を除く)といずれも据え置いた。

  3年度分の見通しを変更しなかったのは2014年7月以来3年半ぶり。2%程度に達する時期が「19年度ごろになる可能性が高い」との見通しも維持した。コアCPI前年比は1%程度となっていると指摘。これまで「弱含みの局面が続いている」としていた予想物価上昇率は「横ばい圏内で推移している」に判断を引き上げた。

  みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは発表後のリポートで、「予想物価上昇率の記述が上方修正されたことなどを除いて無風と言える内容であり、日銀の金融政策は現状維持が当面続くと見込まれる」との見方を示した。

  3月に期限が来る「貸出増加を支援するための資金供給」と「成長基盤強化を支援するための資金供給」などの1年間延長も決定した。

関心は総裁人事に

  エコノミストに行った調査でも全員が金融政策運営方針の現状維持を予想していた。日銀が9日の金融市場調節(オペレーション)で超長期債の買い入れを減額したことなどをきっかけに、市場で金融緩和の縮小が近いとの見方が浮上したが、エコノミストの多くは早期の正常化に懐疑的だ。

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  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは発表後の電話取材で、「早期の正常化を示すような内容は見られなかった」と指摘。黒田総裁の会見についても「マーケットの観測に沿うような発言はなされないだろう」とみている。

  任期満了まで3カ月を切り、市場の関心は黒田東彦総裁の後継問題に集まっている。ブルームバーグ調査では、黒田総裁が退任した場合の為替への影響について回答した24人のうち23人が「円高になる」と回答。株価について回答した22人全員が「株価は下がる」との見方を示した。

  ソシエテ・ジェネラル証券の会田卓司チーフエコノミストは発表後の電子メールで、総裁人事は黒田総裁の再任か、同程度にハト派で現行政策に理解のある人が任命されると予想。その上で、「政府・日銀が一体となって2%の物価目標を目指すアコードは強化され、日銀は現行の金融緩和政策を粘り強く維持するのがメインシナリオだろう」としている。

  会合結果の発表前は1ドル=110円90銭前後で取引されていたドル円相場は午後1時25分現在、110円80銭前後で推移している。黒田総裁は午後3時半に定例記者会見を行う。決定会合の「主な意見」は31日、「議事要旨」は3月14日に公表する。

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