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2018年01月23日 09時16分

小室哲哉さん「不倫は犯罪じゃない」のに社会の晒し者、本来は当事者間の法的責任

小室哲哉さん「不倫は犯罪じゃない」のに社会の晒し者、本来は当事者間の法的責任
画像はイメージです(稲垣 一志 / PIXTA)

小室哲哉さんの女性看護師との不倫疑惑が週刊文春(1月18日発売)で報じられ、小室さんは引退を表明するに至った。

今回の騒動を通じて、「不倫報道はもううんざりだ」という声とともに、「芸能人とはいえ、一個人の不倫がそこまで悪いことなのか」といった声もあがっている。

不倫の法的問題については、正確に理解されていない部分もあり、ツイッターでは、「浮気や不倫を万引きに置き換えるとしっくりきます」「不倫って犯罪じゃないの?」などの声も出ている。

ただ、明確なことは、不倫は犯罪ではない(わが国においても戦前は姦通罪の規定が存在したが、戦後、1947年に削除されている)。では、法的にはどんな位置づけなのか。

●不倫は民法770条の離婚原因に該当し得る

まず、不倫とされるもの中でも、男女間の性交渉を中心とする不貞行為があった場合、民法770条1項1号で定められた離婚原因に該当することとなる。今回、小室さんは不貞行為は否定しているので、それが真実ならば、該当しないだろう。

また、不貞行為がなかったとしても、不倫によって、夫婦関係が破綻して、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するのであれば、離婚原因となる可能性がある。

以上が離婚原因とされるものについてのものだ。

●民法上の「不法行為」ではあるが、刑法上の「犯罪」ではない

つぎに考えたいのは民法709条の「不法行為」というものだ。「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められており、権利侵害に対する賠償責任を定めている。

つまり、配偶者の不倫によって、「夫婦としての実体を有する婚姻関係共同生活の平和の維持」(最判平成8年3月26日民集50巻4号993頁)という権利が侵害された場合に、損害賠償責任が発生し、慰謝料を支払う必要が出てくるということだ。

「不法行為」はあくまで「民事」の話で、責任は当事者間でのみ発生するものだ。一方で、犯罪は「刑事」のことであり、こちらは、国による懲役や罰金などの刑罰の対象となるものだ。両者の間には明確な違いがあり、罪刑法定主義の原則により不倫は犯罪ではない、ということとなる。

では、「不法行為」は「違法」といえるものなのか。濵門俊也弁護士は「そもそも『違法』とは法律に違反することをいいます。民法上の『不法行為』は権利侵害という違法行為です。『正当防衛』や『緊急避難』(当然ながら刑法上のそれらとは要件を異にします)による違法性阻却事由がなければ違法性を帯びます。ちなみに、民法上違法であるからといって、刑法上もただちに違法となるわけではありません(違法多元説)」と話している。

いずれにせよ、不倫は犯罪ではなく、当事者間の問題であるにもかかわらず、ここまで大きくクローズアップされている。今回の小室さんの一件は、異論は多数あがっているものの、法律というものを超えた、社会の空気のようなもので裁かれてしまっているといえるのかもしれない。

【法律監修・取材協力】

濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士

当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。

所在エリア:東京中央区

事務所名:東京新生法律事務所

事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/

(弁護士ドットコムニュース)

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