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【社説】

通常国会召集 結論ありき慎み熟議を

 通常国会が召集された。安倍内閣を支える与党が衆参両院で圧倒的多数を占めるが、「結論ありき」の強引な姿勢は慎み、よりよい政治の実現に向けて、与野党が建設的な議論を尽くすべきである。

 安倍晋三首相が施政方針演説の冒頭で「断行する」と強調したのが「働き方改革」である。長時間労働の解消や、雇用形態による不合理な待遇差是正の必要性には同意するが、政府が提出する法案が完全とも言えまい。

 野党側は働き方改革関連法案の問題点も指摘する。私たちの暮らしにかかわる重要な問題だ。政権側には結論ありきでなく、活発な議論を交わし、時には野党側の意見も取り入れる柔軟さも求めたい。

 そう指摘せざるを得ないのは、首相自身が特に昨年十月の衆院選以降、結果にはやる姿勢を隠そうとしないからである。

 首相はこの通常国会を、選挙公約を一つ一つ実行する国会にしたいと公言する。政党や政治家が公約実現に努力するのは当然だとしても、多数の議席を得たからといって、野党側や少数意見に耳を傾けなくていいわけはあるまい。

 首相が二〇二〇年までの実現を目指す憲法改正も同様だ。

 施政方針演説では最後の部分で「各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会において議論を深め、前に進めていくことを期待する」と述べるにとどめたが、自民党内では、首相の昨年五月の発言に基づいて九条など具体的な改憲項目の絞り込みが進む。

 二階俊博幹事長らは三月二十五日の党大会までに党内意見を集約し、憲法審査会を経て、年内の発議を目指すことも公言している。

 とはいえ、共同通信社が今月中旬に行った全国電話世論調査では安倍首相の下での改憲に反対する人は54・8%と昨年十二月の前回調査から6・2ポイント増加した。改憲ありきの性急な議論への抵抗感の強さを示しているのではないか。

 大多数の国民が納得する内容でなければ、憲法改正を発議すべきでないのは当然だ。数の力を背景に、自民党の考えを押し通すことがあってはならない。

 首相は昨年の国会で、野党の質問にまともに答えなかったり、自席からやじを飛ばすなど「国権の最高機関」である国会に対する礼を欠く場面も目立った。

 首相が態度を改め、「全国民の代表」と誠実に向き合うことができるのか。首相自身が誓った「謙虚な姿勢」「真摯(しんし)な政権運営」の真偽も問われることになる。

 

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