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【社説】

障害者の雇用 活躍の機会を広げたい

 国を挙げて進められる働き方改革。働き手を大事にする企業かどうかを見極める指標の一つは、障害のある人が働きやすいかどうかだ。障害者の雇用を評価する機運を高め、チャンスを広げよう。

 仕事を通して自立と社会参加を果たし、夢や希望の実現をめざす。障害の有無にかかわらず、多くの人が描く人生の道筋だろう。

 労働市場から締め出されがちな障害者の働く機会を確保するのが、障害者雇用促進法の目的だ。官民を超えて、事業主に働き手の一定割合以上の障害者を雇うよう義務づけている。

 法定雇用率と呼ばれ、民間企業では従業員の2・0%とされている。それが二〇一八年度から2・2%へ、さらに二〇年度末までに2・3%へ引き上げられる。

 障害者を雇わねばならない企業規模は、いまの従業員五十人以上から四五・五人以上へ、さらに四三・五人以上へと広がる。

 法定雇用の枠組みは、これまで身体と知能の障害者のみを対象にしてきた。これからは発達障害を含めた精神障害者も加えることとされ、雇用率が上昇した。

 障害者を福祉に任せきりにするのではなく、経済を支える一員としての立場を保障する。そんなメッセージと受け止めたい。

 少子高齢化が進み、労働力は不足し、社会保障制度は揺らいでいる。国が女性や高齢者、外国人と併せて、障害者の就労を後押しする背景には財政的な要請がある。

 だが、忘れてならないのは、障害のある人もない人も、分け隔てをしない共生という理念だ。

 法律はそれを担保するため、募集や採用、賃金、配置、昇進や降格、福利厚生といったすべての場面で差別を禁止している。同時に障害特性に応じて、勤務条件や職場環境への配慮を求めている。

 厚生労働省の昨年六月時点の集計では、従業員五十人以上の企業で働く障害者は約四十九万五千八百人に上り、過去最多を更新した。十四年連続で伸びている。

 だが、残念ながら、法定雇用率を満たす企業は五割にとどまる。障害者を一人も雇っていない企業は三割を占め、その多くが従業員三百人未満の中小企業だ。

 事業主は社会的責任と法令順守を自覚せねばならない。教育や福祉、医療と連携した労働行政による支援ももっと手厚くしたい。

 世界的に広がるESG(環境・社会・企業統治)投資の視点を取り入れ、取引先や消費者の理解と協力を促すのも一案ではないか。

 

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