クローズアップ現代+「“バブル”再来?それとも…どうなる世界同時株高」[字] 2018.01.15

151月 - による admin - 0 - 未分類

バブルの再来なのか?30代のこの投資家、年明けは…。
株取り引きを始めて12年。
去年1年間で過去最大の8億3000万円の利益を上げました。
26年ぶりの株高に沸く日本経済。
ニューヨーク市場でも連日史上最高値を更新するなど世界的な景気拡大への期待が高まっています。
こうした状況、投資するにはちょうどいいとして「適温経済」と呼ばれています。
でも、景気のよさを実感できないという人も多いのでは?今後の行方を世界の大物たちが読み解きます。
2018年、世界同時株高は私たちの暮らしに、どんな影響をもたらすのでしょうか。
連日、歴史的な高値が続く株式市場。
世界に目を向けますと、去年からことしにかけて、アメリカ、アジア、ヨーロッパと、あらゆる所で株高となり、適温経済と呼ばれる状況になっています。
この適温経済とは、景気が上向いているけれども、物価はあまり上がらないという状態なんですね。
適温経済の背景にあるのは、世界的に行われている金融緩和や、好調な企業業績。
景気が過熱するでもなく、冷え込むでもない、ちょうどいい状態にあるというのです。
とはいえ、個人の賃金や消費は思うように伸びておらず、適温経済の恩恵は、必ずしも広く実感されてはいません。
この世界同時株高、一体どのようにしてもたらされたんでしょうか。
世界同時株高の震源地は株価の史上最高値を更新し続けるアメリカです。
恩恵を受ける投資家たちの熱狂はこんな所でも。
先月、マイアミで開かれた現代アートの展示会。
作品が庶民感覚では考えられない高値で取り引きされています。
日用品のポリ袋で作られたこちらの作品。
ついた値段はおよそ340万円。
木材を使ったこの作品には1000万円の値がつきました。
更なる値上がりが見込めると考える投資家たちのマネーが殺到。
値が定まっていないものまで投資の対象になっているのです。
投資熱が高まる背景にあるのは中央銀行が進めてきた金融緩和。
リーマンショック以降市場に出回るお金を増やすために3.6兆ドルを市場に投入。
その結果、投資対象の価格が高騰しているのです。
さらに追い風となったのはトランプ政権が打ち出した大幅な法人税の引き下げでした。
企業の収益増加への期待が高まりアメリカの株価は史上空前の伸びを示しました。
その影響は日本にも。
アメリカ発の世界経済の好調に支えられ、企業の業績も改善。
日経平均株価は1年間で3650円値上がりし26年ぶりの高値をつけたのです。
日本の株を買っている多くの外国人投資家は株価はさらに上がると見て買い進めています。
日本の株に2400億円を投じているヘッジファンドです。
海外の投資家が、今後も日本株が上がると見るのにはある理由が…。
日銀が世界に例のない金融政策を続けているからです。
金融緩和策の一環として日銀はある金融商品の買い入れを進めています。
ETFと呼ばれる投資信託で多くの上場企業の株式を組み合わせたものです。
2010年に始まった買い入れは増え続けその額は去年15兆円を突破。
いわば日銀が日本企業の株価を下支えする状況が生まれているのです。
このヘッジファンドは日本でのバブルの再来を期待しています。
2018年も適温経済は続くのか。
スタジオには、見方の異なる2人のアナリストに来ていただいています。
まず大和総研の熊谷さんは、適温経済は続くという見方ですね。
景気は強すぎても弱すぎてもいけない。
今はお風呂でいえば、ちょうどいい湯加減で、熱くもぬるくもない状態が続いている。
ことしの日本経済は、まず海外経済がアメリカを中心に拡大しますので、日本から輸出が着実に伸びていくということがある。
もう1つは、日本銀行ですけれども、2%物価が上昇するまでは、今の大胆な金融緩和を続けますから、これも景気を下支えをしていく。
もう1つは、今、安倍政権が経済界に対して、3%の賃上げを要請していますけれども、徐々に国民の懐具合もよくなってくる。
これらを受けて、企業収益が拡大する中で、株価は2万7000円程度まで上がるんじゃないかと考えています。
そしてもうひと方、BNPパリバ証券の中空さんは、年前半は?
強く続くでしょうと。
これは今、熊谷さんがご説明にあったことが全部あるわけなので、ちゃんと株も上がっていきますし、金融市場強いですと。
ただし、年後半になると、ハテナかなと思っていますのは、金融政策が、例えば欧州の中央銀行の金融政策、この6月で例えば社債の購入買い入れプログラムというのをやめようかという話もあるんですね。
なので中央銀行のスタンスが変わってくる可能性が出てくる。
加えて、去年の年末にアメリカで税制改正ありましたが、これを受けて、年前半は好景気が続きますけれども、後半には息切れする可能性もあるということで、年後半はちょっと不透明感が出るんじゃないかということで、ハテナにしてみました。
減税効果も一段落する可能性があるということですね?
過剰に強くドル高になり過ぎると、その反動が出てくるということも考えなきゃいけないかなと思います。
もう1つ、日本の株価の下支えになっているのが日銀のETFの買い入れということでしたけれども、これはどうなんでしょう?長続きすることなんでしょうか。
日銀が買おうが誰が買おうが、誰かが買っていれば株価って上がるんですね。
上がることはいいことだし、みんなにとって株が高いって、なんとなくハッピーな感じがしますよね。
だから、いいことだと思うんです。
ところが、それ続けていいかというと、やっぱり日銀、中央銀行が株を買い続けるということは、禁じ手の1つでもありまして、それをやり続けるということは、市場経済には影響が出てきてしまうんですね。
例えば、日銀が結果的に日本の上場企業の多くの大株主になっている、しかも、それに対して議決権はどうなるのか、日本はこれからコーポレートガバナンスとかやっていくのに大丈夫かとか、さまざまな問題が出てくると思います。
なので、中央銀行がずっとやり続けるということに関しては、問題が出てくるんじゃないかというふうには考えています。
投資家のほうも、日銀が買ってるんだったら、大丈夫だって、企業の業績に関係ない投資になってしまったりということもありますよね。
それをモラルハザードというんですが、それを期待して、投資行動を考えるというのは、ちょっとおかしなことになりますよね。
では一般の人たちの景気の実感はどうなんでしょうか。
こちら、日銀が先週発表した調査です。
景気が1年前と比べて、よくなったと答えた割合と、悪くなったと答えた割合を見ますと、景気の受け止めは改善しています。
一方、暮らし向きについては、ゆとりがなくなってきたと答えた割合が前回よりも増えて、多くの人がまだまだ景気回復を実感できていない現状がうかがえます。
熊谷さん、適温経済の恩恵を、多くの人があまり受けてないんじゃないかという、そういう見方については、どうご覧になっていますか。
今の世界的な状況は、企業の取り分がどんどん増えて、他方で個人の取り分はなかなか増えないという、そういう状況があると。
ただ、実は、その状況こそが、景気の拡大を長期化させるということがあるわけですね。
まずそのグローバル経済の中で非常に企業は強くなってますから、企業の取り分が増えることによって、企業収益が上がって、株高が続く。
他方で、個人の取り分はなかなか大きくは増えないわけですけれども、ただむしろ、裏を返して言えば、そのことによって物価が上がらず、極端なインフレにならないわけですから、むしろ緩やかな適度なペースでの息の長い景気の拡大が続くという状況ですので、こういう微妙なバランスが、少なくともことしいっぱいは続くんじゃないかと考えています。
中空さん、その適温経済の恩恵、企業はもうけて、個人になかなか恩恵を感じにくいという状況、これどうですか?
私自身もあまり感じたことはないので、そのとおりかなというふうに思うんです。
今、熊谷さんから説明ありましたとおり、個人と企業という、その対じする姿もそうなんですが、個人間でもやはり差が出てきているんだと思うんですね。
個人間でも?
たとえば、株式公開をした若手経営者というのはたくさんお金持っていたりしますよね。
先ほど、ビデオにもありました、たくさんお金をもうけてますという個人の投資家の方もいらっしゃる。
なので、差が出てきているんだと思います。
なので、分配政策などをきちんと実行していくことが必要になるんだろうというふうに考えます。
というわけで、今は適温経済が続いていますが、そこに死角はないのか。
好景気から一気に金融危機に見舞われたリーマンショック。
あれから10年になります。
当時、引き金を引いたのは、アメリカの住宅サブプライムローンでした。
サブプライムローンというのは、低所得者層向けの融資で、これを組み合わせた金融商品は、リスクがある分、利率が高く、投資家の間で人気を集め、大量に出回っていました。
ところが、住宅ローンを返済できない人が相次ぎ、金融商品が焦げ付き、一気に金融危機に陥ったんです。
適温経済に果たしてリスクの芽は潜んでいるんでしょうか。
リーマンショックをいち早く予言した、シカゴ大学大学院のラグラム・ラジャン教授です。
今、その発言に世界が注目しています。
潮目の変化を感じ始めたニューヨークのヘッジファンドの代表です。
低金利が続く中でも利益を上げようとこれまでリスクが高い金融商品を買い進めてきましたがある状況に警戒を強めています。
自動車向けのサブプライムローン。
貸し倒れのリスクの高い低所得の人たちに高い金利で融資する仕組みです。
リーマンショックのあとも利用が増え続け新車の販売台数を伸ばしてきました。
しかし今、ローンを返せなくなる人が急増しています。
自動車の差し押さえを行う専門の業者が返済できなくなった人の車を次々と回収しています。
最新の画像認識システムによってナンバーを瞬時に識別。
滞納者リストと照合します。
(アラーム音)差し押さえる車は月に160台。
その数は増え続けています。
株高に沸く日本にもリスクの芽があると指摘する人もいます。
ロンドンに拠点を置くヘッジファンドです。
これまで日本株などに1200億円を投じてきましたが今、慎重な姿勢に転じています。
懸念しているのは日銀が続ける異例のマイナス金利政策。
特に地方の金融機関に致命的な影響を与えかねないといいます。
世界的な投資家ジム・ロジャーズさん。
世界中で続く大規模な金融緩和はいずれ大きな危機につながりかねないと警鐘を鳴らしています。
世界の国と民間で積み上げられた債務はリーマンショック以降の金融緩和によって急増しています。
債務の総額はおよそ1京8000兆円という天文学的な数字に上っているのです。
VTRで専門家が指摘した、世界のあらゆる所に潜むリスクの芽、まとめるとこのようになっています。
この中でお2人が特に気がかりだとお感じになったのは、どういう点でしょうか。
熊谷さん。
私は、世界中の膨大な債務、この1京8000兆円というのが、ここはやっぱり非常に心配ですね。
とりわけ心配なのが中国。
今、中国では、企業とそれから個人、この両者の借金を足すと、国内総生産、1年間で中国が稼ぐお金の2倍以上まで借金がもう積み上がっている。
この2倍以上というのは、日本のバブル崩壊直前、1980年代末と大体同じぐらいの水準だということなので、ここは相当やっぱり警戒する必要があるんじゃないか。
もう1つ心配なのは、例えば中国でバブルがはじけたときに、それが世界中のお金の流れを通じて、もぐらたたきのように、違うところで問題が起きることがある。
例えば日本は中国に巨額の直接投資を行っている。
イギリスについては、中国に対して巨額の債券、この貸し付けを行っているんですね。
中国でバブルがはじけると、それが巡り巡って、日本だとかイギリスで悪影響が出てくる。
ここが心配です。
とはいえ、中国というのはしょせんは社会主義の国ですから、少なくともことしいっぱいぐらいで見れば、まだまだカンフル剤で問題を先送りすることが可能なので、すぐにはバブルははじけないんじゃないかと、考えています。
中空さんはいかがですか。
先ほどの専門家の方が指摘した、すべてのリスクというのの芽ですね、これはすべて言いえているなというふうに思っています。
それ以外にもまだまだあって、例えばイギリスの個人信用残高ですとか、レバレッジドローンのマーケットとかほかのものも指摘できるんですね。
要は何かと言うと、バブルというのは、どこにいっているかというと、じゃぶじゃぶになったお金が結局、どこのマーケットに入っているかが大事なんです。
そういう意味では、どこに入ってるのかを見つけることが大事になってくる。
先ほどの指摘の中でとりわけ気になっているのが、投機的なマネーがどこに行っているのかという、そこの動きですね。
ラジャンさんのですね?
これはなぜかと言うと、見えないからなんです。
見えないお金の動きというのは、いよいよ分からないので、少しリスクとしては気にしているというところです。
ラジャンさんもさまざまなリスクが目に見えにくくなっているという点を指摘しているんですね。
世界のマネーの流れ、とりわけシャドーバンキングとも呼ばれる動きに警戒が必要だということなんですけれども、これ、どういうことなんでしょうか。
シャドーバンクというのは、文字どおり影の銀行ということになりまして、例えば銀行とか生命保険というのは、銀行監督当局や生命保険の監督当局から指導を受けたり、監督を受けたりします。
ところが、金融仲介をしていながら、そういった監督の力が弱いというか、緩やかな金融仲介業者というのがいるんですね。
たとえば、ファンドとか、ヘッジファンドとか、そんなものです。
そういったところに、たくさんのお金が今、流れている。
そのお金は何がいけないかと言うと、監察されないんです。
どこに投資をされているのか、どんなものに行っているのか、それは誰がリスクを取っているのか、本当にブラックボックスなんですね。
ですので、いざ何かが起きたときに、先ほどVTRでも誰かが言っていましたけれども、流動性が急速になくなることがある。
こういったことが懸念材料ということになると思っています。
熊谷さん、投資家のジム・ロジャーズさんですけれども、アメリカ経済がことしの秋にも減速する可能性を指摘しているんですけれども、アメリカのリスクはどうご覧になってますか?
景気自体は、この景気の先行きを示すなどから見れば、少なくともことしいっぱいは拡大が続くんじゃないかと見ています。
ただ問題はですね、株価については、ちょっと割高なところまで来てですね、高値警戒感が出ている。
例えばその株の時価総額が、GDP・国内総生産と比べて何倍ぐらいあるかというところで見ると、過去に一番割高だったのが、2000年前後のITバブル、そして2番目に割高だったのが、1929年の世界大恐慌だと思うんです。
今、実は3番目なんですけれども。
もう2番目に迫るぐらいのところにまで割高感が生じている。
恐慌のときに近い?
だからリスクとしては、例えば中東情勢が混乱をして、原油価格が急騰してですね、そこから悪性のインフレになって、これをきっかけにして、アメリカで急速な金融引き締めが行われて、株が崩れるようなことを、ここを一定程度警戒する必要があると考えます。
この適温経済の今、さまざまなリスクを回避しながら、私たちが経済成長を実感できるようになるためには、一体今、何が必要なのか。
最後にひと言ずつ、中空さん、いかがでしょうか。
リスクを回避するためには、着目ポイントが今回、あると思っていて、例えば先ほどシャドーバンクの話をしましたが、シャドーバンクが私たちの目に見えてくる、問題が出てくるときというのは、ファンドの資産凍結といったニュースが必ず出ると思うんですね。
ですからそういったニュースに敏感になっておく、これが1つだと思っています。
もう1つ言えることがあるとすると、やはり、日本全体として稼ぐ力をつける必要があると思います。
稼ぐ力を?
なので例えばAIやIoTにきちんと設備投資をする、こういったことで、経済成長をよりしっかりとしたものにしていく、その結果、先ほど格差があると申し上げましたが、すべての人に富が回ってくるような形ができるんではないかなというふうに思っています。
熊谷さん、いかがですか。
1962年にケネディ大統領が、太陽が出ているときに、屋根は修理すべきであるということをおっしゃっている。
まさに今の日本もそういう状況であって、景気は短期的に見れば、金融政策などのカンフル剤によって、非常によくなっている。
ただ、中長期の構造問題、例えば人口の減少の問題、財政赤字の問題、社会保障制度の抜本的な改革が遅れているということ、もしくは岩盤規制などといわれる、農業、医療、介護、労働等の既得権が強いところまで踏み込む形で、さらなる構造改革をしなくてはいけない。
短期の景気回復に甘んじるではなくて、景気のいい今こそ、中長期の成長基盤を、ここをしっかりと整えることが必要であると考えています。
景気がいい今だからこそ、先を見て、足元だけを見るんじゃなくて、先を見て行動するということですね。
2018/01/15(月) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「“バブル”再来?それとも…どうなる世界同時株高」[字]

株高にわく日本経済。今年に入ってもニューヨーク市場で史上最高値をつけるなど、景気拡大への期待が高まっている。マネーの潮流を展望しながら日本経済の行方を探る。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】大和総研チーフエコノミスト…熊谷亮丸,BNPパリバ証券投資調査本部長…中空麻奈,【キャスター】武田真一,鎌倉千秋
出演者
【ゲスト】大和総研チーフエコノミスト…熊谷亮丸,BNPパリバ証券投資調査本部長…中空麻奈,【キャスター】武田真一,鎌倉千秋

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ニュース/報道 – 定時・総合

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:8619(0x21AB)