京都大iPS細胞研究所の助教の論文に不正が見つかり、記者会見で謝罪する山中伸弥所長(左)ら=22日午後、京都市左京区

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 京都大学は22日、同大iPS細胞研究所の山水康平特定拠点助教(36)らが執筆した人工多能性幹細胞(iPS細胞)に関する論文で不正が見つかったと発表した。

 論文の図が捏造(ねつぞう)・改ざんされており、京大は掲載した出版社に論文の撤回を申請した。山水助教のほか、所長を務める山中伸弥教授らの監督責任を問い、懲戒処分を検討する。

 不正があったのは、人のiPS細胞から脳の血管の細胞を作製したとする論文。山水助教が責任者を務め、昨年2月に米科学誌ステム・セルリポーツ電子版に発表した。

 京大によると、論文の根拠データに改ざんの疑いがあるとの情報がiPS細胞研究所に寄せられた。同研究所で論文内容の再現を試みたができなかったため、京大は昨年9月に調査委員会を設置して調べていた。

 調査の結果、論文の根幹をなすデータについて、主要な図6枚すべてと補足図6枚中5枚に捏造と改ざんを確認。「重要なポイントで有利な方向に操作されており、結論に大きな影響を与えている」と認定した。

 山水助教は調査に対し、「論文の見栄えを良くしたかった」と話したという。測定結果の解析や図の作成は山水助教が担当しており、京大と早稲田大の共著者10人に不正は確認されなかった。

 同研究所で論文に不正が見つかったのは初めて。iPS細胞の開発者でノーベル医学生理学賞を受賞した山中教授は「所長として非常に強い後悔、反省をしている」と陳謝。自身の処分に関して「一番重い辞任も含め、検討したい」と述べた。再発防止策として実験ノートの3カ月に1度の点検など、取り組みを強化するという。