最大のライバルはあの記者?(時事通信フォト)

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 菅義偉・官房長官は隙のない答弁で知られ、番記者にすら軽口を叩いたりしない。それだけに、1月11日、官邸で番記者たちを前にした“オフレコ発言”は物議を呼んだ。

「選挙に出ればいいんだよ。街頭演説みたいにしちゃって。早く質問してよ」

 話題の的は、東京新聞社会部の望月衣塑子記者。昨年、加計問題について菅氏に記者会見でしつこく食い下がり、冷静沈着で知られる菅氏を珍しく狼狽させたことから一躍有名になった女性記者だ。実は2人のバトルは年が明けてからも続いていた。

 このオフレコ発言の前日に行なわれた会見では、望月記者が生活保護費の削減について、「弱者を支えて生活を底上げしていくのも政策として必要なのではないか」と持論を交えて質問を繰り返し、司会から「簡潔にお願いします」「質問に移ってください」などと再三注意を受けた。さらに翌日も望月記者の質問攻撃は続き、しまいには菅氏が質問を遮って「政府としてはさまざまな対策をしっかり行なっていると明確に申し上げておきたい」と語気を強めた。

 そうした経緯が、オフレコ発言に繋がったのだ。

「望月さんのやり方に菅さんは相当ピリピリしている。同じ質問を繰り返さないという“暗黙のルール”も守らないし、質問に長々と持論を織り交ぜるのも『記者らしくない』というのが菅さんの考え。『選挙に出れば』という言葉にはそういう皮肉が込められているのではないか」(政治部記者)

 しかしこの発言が、永田町では別の意味に受け取られている。

「望月氏が本当に野党から出馬すれば間違いなく目玉候補になる。野党はこぞって彼女に接近を試みており、実際に立憲民主党の山尾志桜里氏や自由党の森ゆうこ氏など、野党の女性政治家が次々とメディアで彼女と対談している。彼女の質問力を国会で発揮してもらえれば、与党を追い込む切り札になるのは間違いない。菅長官もそれを意識しているのかと思った」(野党の議員秘書)

 望月氏本人に、オフレコ発言や出馬の可能性について聞くと、いきなり大笑い。

「そんなこと言っていたんですか! 知りませんでした。すみませんが、これ以上は会社を通してもらわないと……」

 発言を気にしている様子はみじんもなかった。情けないのは、国会質問で政府与党を本気で追い込む野党議員が見当たらないという現状である。

※週刊ポスト2018年2月2日号