2018-01-22
ICOは何がすごいのか?
最近ブロックチェーンやICO関係について少し調べたり考えたりしてます。
最初に余談ですが、最近ICOで大型調達したCentralityはすごくイケてると思います。自分が6年前に起業した当初からずっとやりたかったことはこういうことだ!という感じのものを初めて見た感じ。
*1
トークンの価値の源泉って何?
余談はさておき、突然ですが、ICOにおけるトークンに貨幣的価値がつくことについて直感的に納得できますか? 普通のIPOでしたら株なので当該企業の区分所有という形、あるいは将来にわたっての配当の総計額という形ですんなり納得できます。
ICOはITシステム的な仕組みはともかく機能としてはクラウドファンディングのように無償あるいは有償(特典付き)で広く一般人から資金調達ができるというものですが、クラウドファンディングの場合は「寄付」や「(転売不能な)債権の売買」だと直感的に理解できます。
でも、それと同様の理解の仕方をICOに当てはめようとしても、やっぱりよくわからないです。
ICOで発行されるトークンには、発行元企業の区分所有権は(たぶん)付随しないと思うので、トークンの価値の源泉は株のそれとは全く別物でしょう。仮に特典付きのクラウドファンディングのようにトークンに何らかの特典が付いていたとしても、それは一回限りの価値の発揮を保証するものでしかなく(債務の履行による(当該債務の)消滅)、発行元企業が存続する限り続く価値を保証しえないと思いますし、そもそも何の特典もないトークンに価値が付いたりもしてるのが今現実に起きてることです。
これはかつて金と交換可能だったお札(兌換紙幣)が不換紙幣となったことに似ていると思います。
*2
では、中央銀行が発行する紙幣の価値の源泉って何でしょう?それはよく「信用」と呼ばれていますが、信用って何でしょう?
信用? なにそれ、おいしいの?
例えば日本の国土に巨大な隕石が落ちて国全体が壊滅的なことになってしまったとしても*3、一万円あれば少なくとも吉野家で牛丼数杯くらいは食べられそうな気がしないでもないです。それは、円というお金の価値を「みんなが信じてる」だろうからです。また、仮に吉野家が牛丼を出せないくらい食糧難になってしまったとしても、物々交換の不便さよりは(半ば信用が揺らぎつつも)円の価値を信じてそれなりに自給自足農家からお金で食料を買ったりしそうな気がします。
このことについて考えた当初、僕は不換紙幣の価値を、「いざとなったら発行元が何とかしてくれる(=債務履行してくれる)」という風に理解しようとしていました。例えば、ハイパーインフレになる前に日本が紙幣を何か食料や貴金属と(市役所とかで)交換してくれるような救済策が必ず打ち出される、という「信用」として、理解しようとしていました。これを仮に「胴元最強」理論とでも呼んでおきましょう。
しかしこの胴元最強理論ではICOにおけるトークンについて理解するのは難しいです。トークンの発行元企業がつぶれてしまった場合にトークンの価値がゼロになることについてなら胴元最強理論でも理解できますが、トークンに交換価値があることや発行元企業の業績や信用によって価値が変動することは胴元最強理論だけでは理解できない気がします。
なので、不換紙幣に付随する「信用」には「いざとなったら発行元が何とかしてくれる」という(胴元最強理論的な)信用に加えて、別の種類の信用が付随していると思います。それは何か?
お金の価値の源泉は、そのお金を介して流通するモノやサービスの価値の総体である*4
そこで、ちょっと思考実験をしてみましょう。石油が産出でき、石油を輸出し、それ以外に産業がなくもっぱら必要な(石油以外の)財・サービスは輸入に頼っている(お医者さんとか散髪屋さんは輸入という概念をあてはめられないですがここは思考実験として)A国があったとしましょう。
このA国には政府と中央銀行があり、不換紙幣を発行して流通させています。A国は資本主義国であり、産出される石油の取引は民間企業によって行われており、取引に行われる通貨はドルまたはA国紙幣となっています。
A国政府金融セクションは、それらの石油取引企業に対して、財務会計報告をA国通貨換算で行うことを強制していませんし、全てドルのみで取引を行いドルベースで決算を行う石油会社もA国内に存在します。今のところA国が国内の石油会社に強いているのは税金の納付をA国通貨にて行うことだけです。しかし当然ながら、A国政府はいつでも国内の企業に対してA国通貨ベースでの取引や決算報告を強制させる法律を作る権利を有しています。
A国の国民の多くは、A国の国土における石油埋蔵量の豊富さを信じており、実際A国政府調査にて石油埋蔵量が平年の産出量の400年ぶんであると発表しています。また、政府の助成の元、油田開発が定常的に行われており、十数年に一度、大油田が発見されるというイベントが繰り返されており、ここ100年間で大油田が7つ発見されています。
そんなA国の国民のほとんどが日常的にA国紙幣を使って生活しており、またもちろん普段使う銀行口座もA国通貨のものです。国内で消費するモノやサービスはすべて輸入物ですが、そんな生活にA国国民は満足しています。
さてこのとき、A国紙幣の価値の源泉をどう理解したら良いでしょう? この仮想A国の紙幣の価値、これがICOにおけるトークンの価値の構造に近からずとも遠からず、といった構造なんじゃないかと思うわけです。
トークン経済とは、いわば「まだ見ぬ石油経済小国」がたくさんできるようなもの
前節の例のA国通貨をイメージして分かるのは、不換紙幣の価値というのは外から見ると「その紙幣を使った経済的な財やサービス流通に対する信用」であり、発行元の信用が間接的に寄与しているとはいえ、それよりも流通の場の恒常性についての信用のほうが重要だということです。
ICOで資金調達する企業の多くは、そのビジネスモデルの中に「発行するトークンを使ったxx」を含んでいることが多いのが特徴です。そのxxに相当する財は実現されてもいなければ価値も不明という状況ですが、当該企業が描く未来像ではその財の流通がありありと描かれます。
仮にそのICOする企業がICO時点で発表するビジネスモデルにその発行するトークンが関与していなくても、「お金」に相当するツールが絡まないビジネスモデルなどありえず、かならずどこかでそのトークンに絡んだビジネスモデルが将来生まれてくるだろうというイメージは沸きます。トークンの価値の源泉って、そういうことなんじゃないかなぁと最近僕は理解しました。
そして前節の例えで、仮想A国を石油立国として描いたのにも理由があります。ICOにて資金調達した企業の機能とは、いわば現在の財(≒既存通貨)を使って新たな財を創出することです。これは、かつて利用方法が開発される以前に埋蔵されていただけだった石油が、科学技術の進歩や経済の発展によって一躍人類にとって主要な財になったように、ICOによって新たな財がまるで、いままで埋蔵されていた資源が次々に掘り起こされるかのように生み出されるイメージを沸かせると思ったからです。
石油は天然資源なので、石油立国は地理的に恵まれている数限られた国に許されるものですが、AIの進展と絡んで今後生み出される財やサービスの多くは「無形の人工リソース」を使って作られるでしょうから、その多様性・質・量ともに無尽蔵です。ICOが抱かせてくれる未来とは、そういうものでしょう。
というわけで
いつもながらダラダラと長くなりましたが、最後まで読んでくれてありがとうございます。
ではまた。
*1:当時はブロックチェーンやトークンの仕組みのことを知らなかった(世間的にもメジャーな技術ではなかった)のでそういう企画を作れなかったのが悔やまれるところです。Centralityでエンジニアとして働いてみたいです。
*2:紙幣が完全に不換紙幣となった転換点であるニクソンショックですらわずか47年前の出来事なので、新しい経済の仕組みがここ約50年を経て生まれたとしても、何ら不思議がるべきことでは無いのでしょう。僕も歳を取った中年になってきてしまいましたが、そのせいで「新しいもの」を「自分がいままで常識的に知っていること」の「応用」あるいは「メタファー」として理解しようとする癖がついてしまっています。ゼロベースで物事を理解できないのですよね。それは仕方がないのですけど。
*3:もちろんそうなったら日本だけでなく地球上どこの国の気候にも大影響ありそうですが笑
*4:経済学徒にとっては、もしかしたらこのことは常識的なことなのかもしれませんが、少なくとも僕が20代のころに週末暇つぶしに読んだ「マンキュー経済学」には書いてありませんでした。
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