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【暮らし】<Life around the World> 「日本食」所変われば海外でも人気の日本食。中でも、すし、刺し身、ラーメンは世界に通じる日本食の代表格。しかし所変われば微妙な違いが。お国柄を感じさせる食べ方や楽しみ方を、特派員が紹介する。
◆米国 オシャレにラーメン無数の洋酒が並ぶカウンターバーで色とりどりのカクテルを飲み、会話を楽しむ。空腹を満たそうとメニューを開くと、「Ramen」の文字が。首都ワシントンでは近年、バーを併設したラーメンレストランが注目を集めている。 「日本のラーメン屋はもちろん知っている。だけど、音楽も会話もなく、飲み物と合わせて楽しむこともない。僕たちはもっとエネルギッシュな雰囲気の中で日本食を楽しみたいんだ」 ラーメンレストラン「チャプリン」の共同店主アリ・ウィルダーさん(38)はこう語る。日本人が多く、和食の需要が多いニューヨークとは異なり、ワシントン近郊で「Ramen」店ができ始めたのはここ十年ほど。当初は日本人経営者による和風の味や内装を施した店が多い中、同店は二〇一四年六月開店。知名度と人気は年々上がり、首都近郊ではカウンターバーをしつらえた同種のラーメン店が増える傾向にある。
同店のラーメンは鶏がらスープをベースに、米国人の好みに合わせ、塩分を抑える代わりに多めのコショウとクルミ味を利かせる。みそ、しょうゆ、担々麺などを十三ドル(約千五百円)~十五ドル(約千七百円)で。日本産の焼酎やウイスキーを使ったカクテルとともに味わってもらうことで差別化を図る。 ラーメンには生ビール、との声も聞こえてきそうだが、店内のボックス席で夕焼け色のカクテルとみそラーメンを食べていた女性は「おいしい料理とおいしいお酒が合わないわけがない」と事もなげに笑った。 共同店主のミカ・ウィルダーさん(40)は「トリュフやフォアグラを使ったハンバーガーが生まれたように、日本のファストフードを違う形で昇華させることを目指している」と語った。 (ワシントン・石川智規、写真も)
◆エジプト 巻きずし 揚げちゃうエジプトの首都カイロ郊外にある高級住宅街タガンモ。おしゃれなカフェの雰囲気を漂わせたすし店「mori sushi」に入ると、平日の夜なのに若者や家族連れで満員だ。独創的な盛りつけのすしが多いのは想定内。だが、すしが衣をまとっている。 「すしを揚げたスシフライが一番人気なんだ」。経営者のワエル・アブドルラフマンさん(35)が胸を張る。作り方は簡単。巻きずしに天ぷら粉を付けて数分フライヤーで揚げるだけ。「レモン風味スパイシーマヨネーズソース」なるものをかけて出来上がりだ。 例えば、クリームチーズ入り鉄火巻きのスシフライは、八個で九十八ポンド(約六百四十円)。三ポンドでサンドイッチが買える国では、なかなかの値段だ。
友人同士で訪れた大学生タリルさん(20)は「生の魚は食べられないけど、これならイケる」。妹のマリアムさん(19)も「おなかいっぱいになるのがいいわ」とおいしそうにほおばる。店にはにぎりずしもあるが、客の要望に応じて揚げることも可能だ。 エジプトでスシフライを始めたのは、アブドルラフマンさんが元祖といわれる。鉄板焼きの派手なパフォーマンスに引かれ、カイロの日本食レストランで修業。「エジプトらしい一品を」と二〇〇四年に独立する際に考案した。生魚は食べず、揚げ物を好む食習慣と一致。今では、国内外に十五店を構える一大チェーンになった。「すしを通じてエジプト人に日本文化に興味を持ってもらいたい」と真剣だ。 さて、肝心の味は-。揚げてあるので温かく、チーズが溶けてリゾットのよう。ピリ辛のソースが利いている。ただ…。もはや独自に発展した「sushi」の世界。一個を食べて、静かに箸を置いた。 (カイロ・奥田哲平、写真も)
◆タイ カニカマ昇格 主役級おや、これは「カニ」? タイの首都バンコクにある日本料理店「TOK Q(トッキュー)」の「カニ・サシミ」(39バーツ=約130円)。見慣れた紅色の練り物が付け合わせを従え、きれいに並ぶ。 まずは、そのまま味わう。しょうゆを付ける。ワサビを加える。……。うーん、やはり「カニカマ」(カニ風味かまぼこ)だ。 客のパタカーンさん(21)は「タイ語なら『プー・アップ』(カニを圧縮した物)。『カニカマ』より『カニ』の方が通じる」と名称に違和感はないようだ。 同店経営者ラッタポンさん(34)は「食べやすいので、特に子どもに人気です」と説明する。本物のカニと比べ、手ごろな値段も親しまれる理由だという。 すし、ラーメンなど、多くの日本料理店が見られるタイ。日本では引き立て役の印象が強いカニカマが、タイに来ると格が上がる。
すし店ではにぎりに巻物に大活躍。しゃぶしゃぶ店でも重要具材。うどん店では天ぷらの種で登場する。 タイ独特のアレンジも面白い。コンビニでよく見掛けるのがカニカマのサンドイッチ。味付けは甘い。 タイの代表的なサラダ「ソムタム」風に、トウガラシの辛味とライムの酸味を利かせたカニカマサラダを出す店もあった。 カニカマの先駆者「大崎水産」(広島市)は1980年代からタイに製品を輸出している。大崎桂介社長は「魚食文化があり、鍋や揚げ物などカニカマが活躍できる料理も定番で、広がりやすい下地があったのかも」と分析する。 大崎社長は、一昨年訪れたバンコクの国際空港のレストランで、多彩なカニカマのメニューがあったのを思い出してぽつり。「日本ではあんなに使われない。うらやましい限りです」 (バンコク・北川成史、写真も) 関連記事ピックアップ Recommended by
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