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【私説・論説室から】

「米国の責任」を語る意志

 米カリフォルニア州から届いた年賀状は地元の大学院生、エマ・トーメさん(27)からだった。「明けましておめでとうございます 当銘英麻(とうめえま)」。日本語で名前も漢字をあてた自筆の手紙は力強さにあふれている。昨夏の私たちの出会いを素直に喜んでくれていた。

 エマさんの父は一九八〇年代に渡米した沖縄出身者。エマさんも帰省する父と一緒に何度も沖縄を訪ねていたが、米軍基地のことを意識するようになったのは、那覇市の高校で英語指導助手を務めた五年前のことだ。

 戦後、米軍支配下にあった沖縄の人びとは雇用でも何でも米軍の影響を受けてきた。基地の話題は口にしないという人は少なくなく、米軍には賛否だけでない複雑な思いがあることを、エマさんは知るようになった。

 新基地建設が強行される辺野古のキャンプ・シュワブゲート前の集会にも通い、反対の声を上げる人たちに会って気づいた。沖縄の人びとを引き裂いているのは誰なのか、と。

 昨夏。ゲート前でエマさんは初めてマイクを握った。「私は沖縄にルーツがあるから基地建設に反対しているのではありません。よその国だけでなく、自国民にも暴力と差別を繰り返してきたアメリカの国民として、基地をなくすことに責任があるからです」

 世界中の人と歩もうとするエマさんの言葉が心に突き刺さった。北風に背中を丸めてなんかいないで、私も書く。 (佐藤直子)

 

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