あの有名なTrick or Treatの日本語訳は意訳だった!?本来の意味とは…/トリックオアトリートで学ぶ英語のニュアンス

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10月31日はハロウィンですね。かなり広まってきていますが「そもそもハロウィンって何?」という方も多いのではないでしょうか。そんなハロウィンについて編集部の遠藤と今井が対談形式で解説します。

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ハロウィンの意味:なぜ仮装するの?

今井 ハロウィンって最近よく聞きますけど、なんでハロウィンに仮装するのか、いまいちよくわかっていないんですよね…

遠藤 確かに。仮装してパレードするイベント01)渋谷のスクランブル交差点を中心に仮装して歩くイベント(特に主催者はいないためHPもありませんが、例年10月31日が一番多く集まるようです)や川崎のラ チッタデッラなどが有名ですはありますが、「仮装する理由」や「ハロウィンが何の日なのか」を知っている人は少なそうですね。

 では、今回はハロウィンで使われる有名なセリフ “Trick or Treat” を題材に、ハロウィンについて深堀りしてみましょうか。今井くんは、この “Trick or Treat” って聞いたことありますか?

 ありますよ。有名な「お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ」ですよね。

 そうそう。trick は「いたずらをする」で、treat は「お菓子をもらう」というわけですね。でも、これはちょっと意訳になっていて、それぞれの単語がもっている本来のニュアンスからは少しずれているんです。いー訳(やく)ですけどね。

 (…)

Kids say “Trick or Treat!!”

“Trick or Treat”(トリック オア トリート)に省略されている言葉

 それでは、どうズレているのかを説明していきましょう。その前に今井くん、”Trick or Treat” って省略されている言葉があるんですが、わかりますか?

 うーん…、わからないです。

 このフレーズは元々 “Treat me or I’ll trick you.” なんです。「私をTreatしなさい。さもなくば、あなたをTrickするぞ」ってことですね。

 あれっ?trick と treat の順番が変わってしまうのは、何か不思議な感じがしますね。

 順番を変えた “Trick or Treat” のほうがネイティブにとって言いやすいんでしょうね。 

 なるほど。確かに “Trick or Treat” は言いやすいですけど、”Treat or Trick” は何か言いにくいですね。慣れの問題かもしれませんが(笑)

“Trick or Treat”の意味

treatのコアイメージ

 それでは、”Trick or Treat”という表現を深掘りしていきましょう。まずは treat ですね。treat のコアイメージは「人・モノが良くなるように扱う」です

 つまり、基本的には「喜ばせたり、いい感じにしたりするための行為」を表しているわけです。

 「おもてなし」のような意味合いでしょうか?

 そういった使われ方もするね。他には「施しをする」ようにも使われて、それが子ども相手だったら「お菓子をあげる」ことになるわけです。

 幅広い意味で使われる単語なんですね。

trickのコアイメージ

 次は trick ですね。trick のコアイメージは「ある目的をもってだます、惑わせる」です

 つまり、何かを得たいとか、誰かに何かをさせたいといった目的をもっているわけです。

 テレビの刑事モノでよく出てくる「犯人の使ったトリック(trick)」は、犯行をばれないようにする目的のもとで行われた「だまし」ってことですね。

 そういうことだね。

“Trick or Treat”は元々、誰のセリフだったのか

 そう考えると、treat の「お菓子」はまだ理解できますが、trick に「いたずら」という訳を当てるのは少しズレているように感じますね。

 子どものセリフとすれば妥当な訳なんでしょうけどね。子どもが「惑わす」といっても、せいぜい「いたずら」程度のことしかできないですから。

 でも、trick のコアイメージからはやっぱりズレていますね。このようにズレている理由は “Trick or Treat” が元々は子どもたちのセリフじゃないからなんですよ。

 あー、何かハロウィンは信仰チックな背景がありそうですね。

ハロウィンで仮装して練り歩く理由

 元々、ハロウィンは日本でいう「お盆」のようなもので、この時期はこの世とあの世を隔てている「門」が開いて、霊が行き来できるようになると信じられていたんです。

 そのときに、死んでしまった親族の霊とは別に悪霊なんかも現世にやってきちゃうと。でも、そういった悪霊さんたちには穏便に立ち去ってもらいたいわけですよね。

 そりゃそうですよ。誰も喜んで「悪霊さん、いらっしゃ~い」なんて言わないと思います。

 そこで、悪霊たちを追い払う一連の儀式として、悪霊に扮した子どもたちに家々を訪問してもらい、玄関で “Trick or Treat” と言ってもらう

そして、家人が悪霊たちにおもてなしをすることで、立ち去ってもらっていたわけなんです。

悪霊に仮装する子どもたち

ジャック・オー・ランタンは何者なのか

 ”Trick or Treat” は悪霊たちのセリフなんですね。

 そうなんです。だから、悪霊たちが言う “Trick or Treat” は、「ここで我々をもてなさなければ、次の一年間、お前たちを惑わせて困った状態にしてしまうぞ」といったニュアンスを表しているわけです。

 そういえば、ハロウィンには「ジャック・オー・ランタン」というカボチャのお化けみたいなのが出てきますよね。あのお化けカボチャがどうして怖そうな顔をしているかというと、悪霊たちを追い払うためなんです。

 えっ!?あのお化けカボチャは敵じゃなくて味方なんですか?てっきり悪霊の一種かと思っていました。

 元々は悪霊を追い払うためのものだったんです。でも、いまでは悪霊たちとお化けカボチャが仲良く一緒に描かれたりしていますからね…。そのあたりは、もはや適当だってことですね。

 なるほど。これまであまりハロウィンには詳しくなかったですけれど、それなりにわかった気がします。ありがとうございましたー。

まとめ:”Trick or Treat”の意味

trick のコアイメージは「ある目的をもってだます、惑わせる」。

treat のコアイメージは「人・モノが良くなるように扱う」。

“Trick or Treat” は元々「ここで我々をもてなさなければ、次の一年間、お前たちを惑わせて困った状態にしてしまうぞ」という意味でしたが、子どもたちのセリフとして「お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ」という意味に変化していったわけです。

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注釈   [ + ]

01. 渋谷のスクランブル交差点を中心に仮装して歩くイベント(特に主催者はいないためHPもありませんが、例年10月31日が一番多く集まるようです)や川崎のラ チッタデッラなどが有名です

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Masayoshi Endo

英語と日本語の研究をしています。専門分野は認知言語学です。著書は『英会話イメージリンク習得法』『英会話イメージトレース体得法』、英会話教材『英会話エクスプレスシリーズ』。英会話エクスプレス出版代表。日本認知言語学会所属。

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