日本人が知らない、中国「最強のユニコーン企業」10社とは

2017年、中国で最も注目されたユニコーン企業10社の資金調達額が明らかになった。その背後にあったアリババとテンセントの投資競争、ユニコーン企業の今後の戦略について予測した。

日本人が知らない、中国「最強のユニコーン企業」10社とは

2017年、中国で最もお金を集めたユニコーン企業とは

中国では2017年、急速にシェアリングエコノミーが普及した。日本でも、中国の無人コンビニやシェア自転車が話題になったので、注視する人が増えているのではないだろうか。

社会を急激に変えたのが、今回紹介する中国のテック系ユニコーン企業。2017年、この10社はそろって多額の資金調達に成功していた。そしてその大半はアリババVSテンセントの投資競争が加速した結果でもある。

アリババとテンセントといえば、アリペイとウィーチャットペイという中国の2大決済システムを提供している大手企業だ。アリババ・テンセントとユニコーン企業がタッグを組み、また争いながら、中国の社会を変革したのだ。

そんな中国「最強のユニコーン企業」10社の顔ぶれはこうだ。

第10位:菜鸟网络 Cainiao

資金調達額:7.99億USドル

アリババが自社の配達の強化を目的で2013年に15の運送会社と提携してつくった運送会社で、株式の51%を保有している。

倉庫内は全自動で管理され、また従業員はVR技術を使って倉庫管理をしている、運送業注目の企業だ。

第9位:摩拜单车 mobike(モバイク)

資金調達額:8.15億USドル

テンセントと、ホンハイの子会社であるフォックスコンが揃って投資しているシェア自転車の会社だ。いま中国のシェア自転車業界は、このモバイクと後述するオッフォの2大勢力が支配している。

中国ではシェア自転車はすでに飽和状態。モバイクでは自転車から自動車へのシフトを急ピッチで進めている。貴州省の贵安新区でEVのシェアリングサービスを開始しており、ユーザーはモバイクのアプリから車を呼ぶことができる。調達した資金はこちらの新規事業に投下されるとの見方も強い。

ちなみに2017年モバイクは日本法人を設立しており、12月にはLINEが出資を発表。2018年上期には日本でもサービス提供を開始すると見込まれている。

第8位:饿了么 eleme

資金調達額:10億USドル

「饿了么」とは、“お腹が空いたか?”という中国語で、その名のとおりデリバリサービスを提供する会社だ。いまや饿了么は、中国全国の2000都市にサービスを拡大しており、2.6億人のユーザーがいる(1ヶ月での利用者数3402人)、130万もの飲食店と提携している。

2017年は、デリバリサービスのシェア争いが最も熱い1年にだった。特に美团外卖(以下、美团)と饿了么のシェア争いは熾烈を極めた。

お互いに相手より安く、より多くのクーポンを顧客に還元しようと必死で、いまのところは饿了么が優位に立っている。毎日のように割引クーポンが配布され、遅くても1時間以内には注文の品物を届けてくれる。また利用者が配達員を評価をできるため、配達員のサービスが物凄くいい。

そんな饿了么ゆえに、アリババグが買収するのではないかと話題になっている。アリババはこれまでも、投資をして来た企業に対して、最終的にその企業を飲み込み自社化させる決断を繰り返してきた。その度にその企業のCEOを追い出しているケースが多く、それが原因で饿了么の最大のライバル美团はアリババに嫌気がさし、アリババと縁を切ってテンセントの傘下に入ったという経緯もある。

アリババは2016年、饿了么に12.5億USドルを投資、すでに株式の27.7%を所有していている。

ちなみに饿了么の日本語読みは「アーラマ」「オゥーラマ」など、まだ定まっていないようだ。

第7位:字节跳动

資金調達額:10億USドル

日本ではこの会社の名前を聞いたことのない人も多いと思うが、ニュースや娯楽などのサービスを展開している会社で、代表とされるのが「今日头条(今日頭条)jinritoutiao」というニュースアプリだ。

機械学習でユーザーの趣向や滞在している地域に合わせて記事を配信しており、いまや中国人の約10%が毎日閲覧しているニュースアプリだ。

最近ではブログ機能も追加されて、ツイッターやウェイボのように個人や著名人がブログを投稿できるようになったことも話題だ。

「今日头条」の利用者数は累計6億人に達しており、1日当りアクティブユーザー数が1.2億人にのぼる。ちなみに1人あたりの平均利用時間は76分。LINEの月間アクティブユーザー数約7000万人と比べると、その規模感を実感できるだろうか。

2017年2月2日にFlipagramを買収、2017年10月に10億USドルでMusical.lyも買収し、「内涵段子」、「搞笑囧途」、「内涵漫画」、「好看图片」、「今晚必看视频」などの漫画やムービーなどの娯楽アプリを提供している、勢いのある企業である。

日本でもアプリをダウンロードできるので気になる方はのぞいて見るのはいかがだろうか。

第6位:口碑 koubei

資金調達額:10億USドル

アリババと、アリババの金融部門でアリペイを管轄する蚂蚁金服 Ant Financial(アント・ファイナンシャル)が共同で作ったO2Oサービスだ。

App 上でデリバリーの注文、お店や美容院の予約、飲食、ショッピング、などオンラインとオフラインをつなげるサービスで、ユーザはお店に対して評価ができ、ユーザはその口コミ評価でデリバリーの注文や美容院の予約をすることができる。

2015年6月23日に成立、アリババが10億USドル出資しており、2017年の資金調達で市場価値は80億USドルに達している。

第5位: ofo(オッフォ)

資金調達額:12億USドル

アリババ、アント・ファイナンシャル、後述するDidi(ディディ)が出資するシェア自転車の会社だ。前述のとおりオッフォは、テンセントの出資を受ける前述のモバイク(第9位)と並んで「中国の2大シェア自転車サービス」である。

日本でも2017年夏、オッフォ日本上陸にあたりソフトバンクが出資を発表し話題になったので、聞いたことがある人もいるだろう。

ちなみに、オレンジ色の自転車がモバイクで、オッフォは黄色だ。

第4位:蔚来汽车(NEXTEV),上海赛睿迪新能源汽车有限公司

資金調達額:17億USドル

NIO蔚来として知られている、通称「中国のテスラ自動車企業」だ。電気自動車、自動運転車の開発を手がけており、テンセントとバイドゥ,シャオミの雷军、JD.comのCEO刘强东,レノボなどが出資している。

2016年11月に発表されたNIO EP9は、テンセント CEO ポニーマー、シャオミ CEO雷军,JD.com CEO 刘强东が購入している。

1,360馬力,0〜200km加速するのにわずか7.1秒。急速充電モードでわずか45分で充電完了、一回の充電で427km走行可能だ。約10分間の充電で100km走行できる。

注目すべきは、NOMIという独自の車載人工知能OSが搭載されたことで、車の音声操作が可能になったという点だ。

蔚来汽车では2020年までに、“NIO Power”というバッテリーの交換スタンドを110都市に建てる計画だ。この"未来型"のスタンドでは、3分間でバッテリーの交換をすることができるという。

“NIO House”と言われる実店舗を2018年に、上海、北京、深圳、南京、杭州、武汉など10都市で展開する計画も進む。“NIO Service”車が故障した際には、NIOの従業員が直接持ち主の自宅を訪問し修理などに対応するサービス向上も進める。

第3位:易鑫车贷

資金調達額:20億USドル

易鑫集团は、テンセント、 バイドゥ、 JD.com,、易车などが共同出資して作ったサービスで、ローンで新車や中古車を買えるサービスを提供、頭金0元でも自動車を購入できる。

自動車保険やレンタカーサービスも手がけており、ワンストップ自動車取引小売プラットフォームを構築している。

第2位:美团 meitun

資金調達額:40億USドル

アリババが出資している饿了么の最大のライバルであるデリバリサービス提供会社だ。こちらにはテンセントが投資している。

実は2018年の1月8日、美团が配車サービスに進出と発表した。美团は北京、上海、成都、杭州、温州,福州,厦门(アモイ)でサービスを始めるとのことだ。後述するDidi(第1位)から顧客を奪うために、大量に割引券を顧客に配り、2016年に中国のUberを吸収してから配車サービスを独占してきたDidiに挑戦状を送った形だ。

第1位:滴滴 Didi (ディディ)

資金調達額:55億USドル

Uber同様の配車サービスで、今回の資金調達で、ディディの市場価値は500億USドルに達したといわれている。資金は今後、海外展開、電気自動車、自動運転のサービスと技術開発に使うという。

中国で自動運転といえばバイドゥが最も力を入れてる分野だ。ディディはバイドゥの最大のライバルになるであろうとの見方が強まっており、これから激化するであろうディディ対バイドゥの争いに注目が集まっている。

そしていま、それ以上に注目なのが「ディディ vs 美团」の新たな戦いだ。美团はデリバリーサービスやO2Oのサービスを主に展開しており、その美团が配車サービスの事業に進出すると発表し戦いの火蓋は切って落とされた。

ディディは配車サービス以外にも、シェリング自転車、中古車の売買、また美团の主要サービスであるデリバリサービス業にも進出する計画を打ち出しており、2018年はDidi と美团の争いが一番の注目どころだ。