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1.歩く卵
 ぱきり、目の前で何かが割れた。
 真っ暗だった世界に、一気に光が差す。
 その隙間から辺りを見渡す。

 えっと、ここ、森かなんかっすか?
 なんだか木の上っぽいけども。

 立ち上がってみると、足許でまた何かが割れる音。
 え、なんか変なもん踏んだんじゃないのコレ?
 っていうか、突き破った感じ?

 と、その直後、頭の中にゲーム画像的なものが浮かんでくる。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
種族:ドラゴンエッグ
状態:通常
Lv :1/5
HP :5/5
MP :1/1
攻撃力:1
防御力:3
魔法力:1
素早さ:10
ランク:F

特性スキル:
〖卵の殻:Lv--〗
〖神の声:Lv1〗

耐性スキル:
〖物理耐性:Lv1〗

通常スキル:
〖転がる:Lv1〗
〖ステータス閲覧:Lv1〗

称号スキル:
〖竜王の息子:Lv--〗
〖歩く卵:Lv--〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 これって……よく、RPG的なのである奴?

【ステータス画面を開きました。】

 続いて頭に文字が浮かんでくる。
 おん? ステータス画面?

【ステータス画面とは、***の能力値をわかりやすく数値、字面に直したものです。】

 え、これ、俺の質問に答えてくれてるの?

【特性スキル〖神の声:Lv1〗はステータスに関する説明、アイテムに関する説明を行う特性スキルです。】
【ステータス変化等をお知らせすることもあります。】

 ちょっと待って、どういうこと?
 何? 何がどうなったの? え、これ、ひょっとしてゲームなの?

【特性スキル〖神の声:Lv1〗では、その説明を行うことができません。】

 なんだ?
 Lv1って言ってるし、あれか、Lv上げたら答えてくれんのか?
 これ、誰が喋ってんだ?

【特性スキル〖神の声:Lv1〗では、その説明を行うことができません。】

 お前は誰だ?
 そんでもって、ここはどこだ?

【特性スキル〖神の声:Lv1〗では、その説明を行うことができません。】

 …………。
 なんだろ、この虚しさ。

 とにかくこの変な声相手にすんのはやめて、何か意思疎通のできそうな人間を探してみるか。
 要領を得ないことを言うばかりで、人と話してるって気がまるでしねぇわ。

 しっかしなんか、視界が狭い。
 こんなんじゃ足許が見えな……痛いっ! 落ちた! 今どっからか落ちた!


 つつつ……。
 どうやら俺は木の上にいたらしい。
 そこそこの高さから落ちたけど、なんとか生きているっぽい。

【耐性スキル〖落下耐性:Lv1〗を得ました。】

 なんだこれ?
 落下の衝撃に堪えたからパワーアップしたってことか?

 あ! ステータス画面のHP、5から3に減ってるじゃん!
 これ0になったら死ぬんじゃないの?
 これ夢だよな? 夢だと思っていいんだよな?

【称号スキル〖ドジ:Lv1〗を得ました。】

 これただの悪口じゃねぇのかァッ!
 おい、どういうことだ神の声さんよ!
 俺をどっかから見て馬鹿にしてるんじゃねぇのかコラァッ! 趣味悪いぞッ!
 称号スキルだとか大層なこといっといて、これただの悪口じゃねぇか!

【特性スキル〖神の声:Lv1〗では、その説明を行うことができません。】

 こんにゃろう……。
 まあ、いい。気にしていたらこっちがストレスでやられそうだ。

 俺が落ちた木の上を見たかったけど、上に目が届かない。
 なんか視界が狭いし首が動かないんですが。

 あ、向こうに泉があるじゃん!
 ちょっち自分の姿確認すっか。

 泉を覗き込み、水面に映る自分の姿を見る。

 でっかい卵だった。
 目の部分と足の部分にだけ穴が空いている。
 異様なサイズだし所々割れているけど、その風格が、存在感が、なんというかこう……卵特有のものだった。

 え、なにこれ?
 てっきり自分じゃなくて、水奥からお化けが出てきたのかと思ってメッチャ仰け反っちまったぞ。
 なんの悪ふざけよ。

 俺? 俺なのか?
 これが俺なのかよ! 意味わかんねぇぞ! どういうことだ!
 答えろよ馬鹿ッ!

【〖ドラゴンエッグ〗、Fランクモンスター。】
【早熟なドラゴンの子供が、不完全なままに自我を持ったモンスター。】
【中身が完全でないまま殻が割れると、死亡する。】

 冗談じゃねぇぞ。それが俺だっていうのか。

【素早いが非力であり、まだ脳も発達しておらず、転がるしか能がない。】

 そんなことねぇよ!?
 俺、結構色々考えてるよ!

【成長すると危険であり、また育ちかけの中身が非常に珍味かつ美味であることで有名。】
【そのため見つけたら即殺せというのが冒険者間の常識である。親ドラゴンが近くにいるならば、その限りではない。】
【また持ち帰る冒険者もいるが、親ドラゴンが匂いを辿ってくることもあるのであまりお勧めできない。】

 嘘ォッ!
 嘘だろ? 酷くない?
 見つけたら即殺せって、んなもんゴキブリ並の待遇じゃねぇか!

 つかなんだよ、冒険者だのドラゴンだのモンスターだの。
 いったいこれはなんなんだ。
アース・スターノベル様より、現在四巻まで書籍化しております!

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