シリーズ 欲望の経済史〜ルールが変わる時〜1▽時が富を生む魔術〜利子の誕生[字][再] 2018.01.21
2017年7月ドイツで開催された…グローバル化した世界経済がどう成長を維持すべきか集まった首脳たち。
豊かさをめぐる議論。
だが会場の外では…。
反グローバル化を訴えるデモ。
資本主義の在り方や格差の拡大に不満を爆発させる人々の姿があった。
時代を物語るデータがある。
世界で最も豊かな8人の資産が世界人口の半分にあたる36億人の資産とほぼ同じだというのだ。
利潤が新たな利潤を生む資本主義。
富める者がますます富む。
それは定めなのか?私たちはいつからこんな世界を生きているのだろう。
WewillmakeAmericaGreatagain!Thankyou.Godblessyou.Thankyou.Thankyou.やめられない止まらない。
分断を深める経済のシステム。
それはどのように生まれたのか?そこにはいつの時代も人間の欲望が生んだルールがあった。
そして…。
富をめぐる欲望の物語を駆け抜ける。
時代のルールが変わる時を6回にわたって読み解く異色の経済史。
8か国13都市を巡り世界の知性と共に考える知の大冒険。
世界の金融の中心地ニューヨーク。
利子をめぐる欲望の物語。
そこには大いなるルールが変わる転換点があった。
舞台は今から600年ほど前に遡る。
北部の街プラートの資料館には当時の商業金融業の膨大な帳簿が保管されている。
中世の商取引に詳しい研究者に貴重な記録を見せてもらった。
フィレンツェ大学銀行歴史学の…中世キリスト教社会で神の教えは最も根本的なルールだった。
高い利子を取る者は地獄に落ちると考えられていた。
しかし光の世界があれば闇の世界もある。
こちらは金貸しをしていた仕立て屋の帳簿。
仕立て屋が要求した半年分の利子は当時の庶民の年収8年分にも相当した。
帳簿に記された利子の実態。
人々の欲望は神の教え時代のルールにおさまりきらないものだった。
時が富を生む魔術利子。
その欲望は一体いつから始まったのか?今へとつながる資本主義の課題。
ベルリンに資本の動きからその本質を読み解く経済ジャーナリストを訪ねた。
古代の取り引きにも見られる後払いと利子。
利子への欲望は根源的なものなのか?その問いに文化人類学の視点から新たな光を当てるのが…私たちが前提とするお金の成り立ちが債務を負わせるためにあったというのだ。
グレーバーによれば貨幣は借用書と同じ。
貨幣を持つ事は国家から債務を負う事であり時に暴力的な回収を受ける危険性もあるという。
グレーバーは古代メソポタミアの利子をめぐる欲望のドラマを描く。
恩を売る者の欲望。
それは時を操作してより多くの利益を得る事。
欲望に歯止めをかけるルールが必要とされた。
神話からハリウッド映画までさまざまな分野にわたって資本主義の本質に迫る異色の経済学者は言う。
しかし例外的な宗教もあった。
時に迫害され仲間とその他を強く意識した多くのユダヤ人がなりわいにしたのが金融業だ。
時に命を落としかねない利子。
どう成立させるルールを思いついたのか。
利子が広まるきっかけが15世紀中世イタリア・フィレンツェにあった。
人々の欲望が高まった時代お金を借りる商人が増え金融業が盛んだった。
利子を禁じる規範をかいくぐり巨万の富と名声を欲しいままにした一族がいた。
銀行家…メディチ家が最盛期を迎えたのは2代目コジモの時代。
野心と教養類いまれな経営の才覚でジュネーブロンドンなどヨーロッパ各地に支部を開設。
コジモには各国を結ぶネットワークによる富の錬金術があった。
ロンドンで商売をしたいので100フィオリーニを貸してほしいのですが…。
大金だな…。
利子を取るには教会が目を光らせているしどうしたものか。
そうだ!フィレンツェとロンドン為替レートの違いを利用すれば…!今フィレンツェでは1フィオリーニ100ペンスだがロンドンでは80ペンス。
同じ1万ペンスでもロンドン支店で両替させれば125フィオリーニになるじゃないか。
為替を巧妙に使った利子の取り立て。
こうした方法で巨万の富を得たのだった。
利子の抜け道から富を蓄えたコジモ。
しかしそこに別の感情が芽生え始める。
メディチ家と関わりが深かった修道院の院長が言う。
コジモは教会の大規模な修繕の費用や修道士の食費などに莫大な寄進をした。
絵画の中で時代の本質を見るフィレンツェの美術史家は…。
尽きせぬ富への欲望。
そして同時に生まれた罪の意識。
欲望へのやましさが皮肉な事に芸術へ形を変えて花開く。
コジモは数多くの芸術家たちのパトロンとなり莫大な富を社会に還元した。
やがて孫のロレンツォの代になるとボッティチェリやラファエロミケランジェロなど若い才能が集まるようになる。
次第にイタリアヨーロッパへと広がる文化運動となっていった。
更に久しく利子を禁じてきた時代のルールに一大転機がおとずれる。
16世紀の宗教改革。
改革の指導者ジャン・カルヴァンの手によってだった。
カルヴァンは貧困者への高利は禁止したが5パーセントの利子は認めた。
一方カトリックでも変化が起こる。
「時間に価格がある」。
利子を肯定する欲望が長い葛藤の末ついに公認された時だ。
闇の世界から日の目を浴びておよそ300年後の現代。
利子は資本主義に欠かせないシステムとなった。
債権証券複雑な金融商品に姿を変えた。
時が富を生む魔術はあらゆる経済活動に浸透し秒刻みのシステムに組み込まれた。
もう利子には一点の陰りもないのだろうか。
未来から前借りしたパワーに支えられて。
利子によって富の流れはダイナミックに加速を始めた。
利子を是とするなら無限の時間の中で富は限りなく増殖を続けるのだろうか?やめられない止まらない。
時代の中で人々の欲望が生み出すルール。
それが書き換えられる瞬間をとらえる「欲望の経済史」。
2018/01/21(日) 14:30〜15:00
NHKEテレ1大阪
シリーズ 欲望の経済史〜ルールが変わる時〜1▽時が富を生む魔術〜利子の誕生[字][再]
時代の欲望が生む資本主義のルール、それはどこで書き換えられた?「ルール」が変わる時をつかみ出し世界の知性とともに考える。大反響「欲望の資本主義」からスピンオフ。
詳細情報
番組内容
今、揺れる世界経済。資本主義の歴史とは、際限のない欲望のドラマだ。壮大な経済史を、欲望という視点から捉える異色のドキュメント。なぜ世界同時不況は起きるのか?なぜバブルは繰り返すか?どこに「ルールが変わる」ポイントがあったのか?6つのポイントに立ち返る旅に出る。「資本主義の終えん」も叫ばれる今だからこそ考える、知の冒険シリーズ。第一回は利子の誕生に着目する。時が富を生む魔術はいかにして成立したのか?
出演者
【出演】コロンビア大学教授、ノーベル賞受賞…ジョセフ・スティグリッツ,イタリア・フィレンツェ大学経済学部准教授…アンジェラ・オルランディ,ドイツ・経済ジャーナリスト…ウルリケ・ヘルマンほか
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:15703(0x3D57)