ニホンウナギのシラス(稚魚)(愛知県水産試験場提供)

■24都府県 密漁、無報告の疑い

 昨年11月から今年4月にかけ、国内で採捕されたニホンウナギのシラス(稚魚)のうち、45・45%に密漁など違法取引の疑いがあることが21日までに共同通信の集計で分かった。ニホンウナギは環境省が指定する絶滅危惧種で、専門家からは資源管理の強化を求める声が上がっている。

 ニホンウナギは漁獲量が急減したことから、日本は2014年以降、中国・台湾・韓国との合意で、養殖池に入れるシラスの量を年21・7トンまでに制限。また国内でのシラスの採捕には都道府県知事の許可を得ることが義務付けられている。

 水産庁によると、昨年11月~今年4月の池入れ量は全国で19・5トンだった。同時期には4・1トンが香港から輸入されており、15・4トンが国内で採捕された計算になる。

 しかし共同通信が、養殖のための採捕許可を出している24都府県に確認したところ、採捕量は合計で8・4トンにとどまっており、7トンもの開きがあった。佐賀での採捕は7・8キロ。

 同様の差は14~15年に9・6トン、15~16年も5・9トンあった。中央大の海部健三准教授(保全生態学)によると、これらは採捕者が実際より少なく申告する「無報告」か、許可を得ない「密漁」の可能性が高いという。

 また香港では、ウナギ漁そのものが行われておらず、稚魚の輸出を禁じている台湾から密輸したものを日本に輸出している可能性も指摘されている。

 海部准教授は「無報告や密漁を放置していては正確な資源量が把握できず、持続的な利用が困難になる」とし、シラスの産地を証明するトレーサビリティー(生産流通履歴)制度の導入が必要だと訴える。

 水産庁は問題の存在を認めつつ「密漁されたシラスも最終的には養殖池に入れられて量が報告されるので、資源管理上の問題はない」として、制度の導入には否定的だ。

 東京大の吉田丈人准教授(生態学)は「無報告や密漁は資源管理だけではなく、ウナギ業界全体に対する社会の信頼も失われかねない問題。積極的に対策を取るべきだ」と話している。【共同】

■ウナギ養殖規制 環境省は2013年、乱獲や生息環境の悪化で個体数が激減し、近い将来、野生で絶滅する危険性が高い種として、ニホンウナギをレッドリストに掲載した。国際自然保護連合(IUCN)も14年に絶滅危惧種に指定。国はウナギ養殖業を許可制にするなど資源管理策を強化しており、14年9月には中国、台湾、韓国とともに自主的な取り組みとして、養殖池に入れる稚魚の量を制限することで合意した。【共同】