◆青葉のキセキ−次代を歩む人たちへ−(6)第1部 立ち直り 大二 支援の道へ(下)
「お前たちも一緒にごみ拾え」。沖縄大学2年生で22歳だった2013年10月、緑色のオリジナルTシャツを身に着け、軍手をはめた仲座大二(だいじ)(26)は、北谷(ちゃたん)町美浜でたむろする少年たちに次々と声を掛けた。
大学で意気投合した與古田亮希(24)や中学時代の悪友らと立ち上げた立ち直り支援のボランティア団体「HOME(ホーム)」の初めての取り組みは、美浜の清掃活動。一見、柄の悪い男たちが列を成し、海岸や繁華街のごみを率先して集めていく。嫌々ながら加わった少年たちも、店の人の「ありがとう」の言葉に表情が変わっていった。
活動に参加した少年が仲間や後輩を呼び、次第に参加人数は増えた。次に取り組んだのは夜間パトロールや登校支援。過去の悪行を知る人たちから「悪さばかりしてたくせにばかか」「何をたくらんでいる」と非難されたこともある。
それでも、不良少年と真正面から向き合えるのは自分たちだと信じた。「非行に走ってしまう環境は今、俺たちが変えないと」。信念は揺らがなかった。
立ち上げから1年が過ぎたころ。ごみ拾いを通じて知り合った16歳の少年から「定時高校の普通科に通いたい」と相談を受けた。仲座と同様、バイクの無免許運転で逮捕された前歴がある。1年間、勉強に苦しむ彼を必死に励まし続けた。
高校入学後、彼が再びバイクに乗り始めたことを知る。自分の経験上、暴走行為に戻る可能性が高い。「家庭教師の費用を工面して、飯を食わせたのは親だろ。そういうことも考えたか」と叱り、やめさせた。
今月、県内の大学に合格した彼が報告に来た。口べたゆえ「良かったさ」としか言えない。でも、内心は喜びでいっぱいだった。
パートナーの與古田も、ひたむきな仲座の姿に刺激を受けている。「やると決めたらやり切る彼がリーダーだから続けられた。これからも支えていきたい」
仲座は今、税理士事務所で働き、資格取得を目指しながらHOMEの運営を続けている。2年前に北谷町の補助を得て吉原に構えた事務所には週2回、居場所を求める少年少女約10人が集う。菓子や飲み物、時々作る食事の材料はメンバー6人が毎月積み立てた資金を充てる。「飲みに行くより、この子たちに使った方がいい」が共通の認識だ。
「変わろうと思えば誰でも変われる。そのために自分自身と向き合え」。12日、仲座は中学生8人を前に自分の歩みを語った。「いいことで目立とうぜ」。一人一人の目を見つめ、こう呼び掛けた。=敬称略(社会部・新垣卓也)