INSIGHT#ENERGY
電気自動車で復活する「ワーゲンバス」に試乗してみた──VWは排ガス不正のイメージを払拭できるか?
フォルクスワーゲンが電気自動車(EV)の積極的な投入に動き出した。そのブランド戦略の鍵を握るのが、「Volkswagen I.D.」と名づけられた3台の市販前提のコンセプトカー。なかでも過去に人気を博した「ワーゲンバス」のEV版が注目されている。その注目のコンセプトモデルに『WIRED』US版が試乗した。
TEXT BY JACK STEWART
TRANSLATION BY HIROKI SAKAMOTO/GALILEO
WIRED(US)
フォルクスワーゲン(VW)は電気自動車(EV)に熱意を抱いており、そのことを世界に知ってもらいたいと考えている。さらにいうと、世界を揺るがした「ディーゼルゲート問題」については、きれいさっぱり忘れてもらいたいと思っている。それは同社が試験を“裏技”でくぐり抜け、制限をはるかに超える量の排出ガスで環境を汚染するよう設計された自動車1,100万台を、全世界で販売した「あの事件」のことだ。
フォルクスワーゲンは現在、汚染源となるディーゼルエンジンから脱却し、バッテリーの世界へと進んでいこうとしている。2025年までに新型のEVを30モデルも発表する計画を打ち出しているのだ。
脈々と受け継がれてきた信頼の糸を断ち切らせまいとするフォルクスワーゲンは、同社の熱意の大きさを物語るコンセプトカーを3タイプ開発した。「Volkswagen I.D.」と名づけられたこのラインナップは、ハッチバックの「I.D.」と、クロスオーヴァーSUVの「I.D. CROZZ」。そして、フォルクスワーゲンの名を一躍有名にしたマイクロバス(通称、ワーゲンバス)をEVで復活させた「I.D. Buzz」だ。
同社は17年12月、これら全車種を、ヒッピーたちの安息の地であるカリフォルニア州のヴェニスビーチにもち込んだ(1960年代後半の米国のヒッピームーヴメントの時代には、当時中古で手に入れやすくなっていた「フォルクスワーゲン・タイプ1」が若者たちに愛用された。サイケデリックなペインティングにピースマークなどが描かれ、のちにつづくワーゲンバスのイメージの原点となった)。
『WIRED』US版は、ワーゲンバスのEV版であるBuzzに試乗して、アボットキニー通りを行き来してみた(下の動画)。イエローが映えるツートーンの塗装は大正解。小さな長方形のハンドルは妙な使い心地だった。回転させてうしろに向けられるフロントシートは、搭乗者に好評だった。
Buzzの発売は22年に予定されている。それに先立つのがCROZZの量産モデルで、20年から販売店に並べられることになっている。第3のモデルであるI.D.は19年に登場する予定だが、米国での発売はいまのところ予定されていない。
ところで、このオール電化版のヒッピーモービルをどこで充電すればいいのだろうか? 心配には及ばない。ディーゼルゲート問題を巡る米規制当局との和解の一環として、フォルクスワーゲンは現在、全米各地のEV充電ネットワークに何十億ドルもの投資を行っているのだ。
これらのコンセプトカーが発売されたあかつきには、見た目でわれわれを楽しませてくれるだけでなく、実際に役にも立ってくれるだろう。
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