コム・デ・ギャルソンでディスプレイされている作品について
- 2018.01.18 Thursday
- 12:00
2018年が明けてすぐの1月初旬、自分の作風と一見似ている作品がコム・デ・ギャルソンの青山店にディスプレイされていると、ファッションメディアの投稿やファンからのSNSのコメントで知りました。加えて、「これはあなたの作品?」「コム・デ・ギャルソンとのコラボレーションおめでとう」といったメッセージを受けました。(展示されているディスプレイはコラボレーション作品ではありません。)
「TOKYO」「Kawaii」という日本のポップカルチャーのイメージを、コム・デ・ギャルソン(以下CdG)というハイブランドがこのようなカラフルなヴィジュアルで採用したことに驚きましたが、それ自体は、喜ばしいことだと思います。ただ、僕は20年以上このカルチャーの現場で、このカルチャーを軸にアーティストとして活動しており、これからも続けていく中で、この件についてはコメントする必要があると思います。
類似を指摘されたディスプレイは、CdG2018SSのコレクションを基にしたインスタレーションで、オモチャやキャラクターなどのカラフルなマテリアルを無数に人型のマネキンに貼り付けています。 把握している限り、青山、ニューヨーク、ロンドンの店舗に登場しているようです。
様々なマテリアルを貼り付けるという手法自体は、古くより使われてきたものです。しかし、アーティストはそれぞれ何をどういう美術的・文化的なコンテクストに乗せてコラージュするか?ということに心血を注ぎオリジナリティを作ります。今回展示されているCdGでのディスプレイが、「TOKYO」、そして、戦後に進化していった「Kawaii」カルチャーを意識した「人型」の立体物であること、そして使用されている素材が、主にオモチャやアクセサリーなどであること、そのカラフルなものを大量の物量により色彩構成されていることにより、自分の作品だと誤解してしまう人がいることは確かでしょう。
僕の作品群は、どれも「Kawaii」というテーマを、多数の「色」を通じて表現しています。また、絵の具で絵を描くのではなく、世界中の違う文化圏を旅し、自分の感覚で集めてきたマテリアルを集積させることにより、それが、つまり「原宿」であり、世界中の文化をミックスする「TOKYO」そのものを表現している…というのが、僕の作品の大きなコンテクストになっているのです。
では、このKawaiiカルチャーとは何かと問われれば、「好きなものは好き!」という自分以外の第三者や世界に向けた主張なのではないでしょうか。その根源的なメッセージを伝える為に、僕は1995年原宿に6%DOKIDOKIを開店させました。2009年以降は、原宿を飛び出し、世界で”Harajuku Kawaii Experience“というツアーをはじめました。今や、Kawaiiカルチャーは世界に広まり、その文化を確立した1人として認められ、2017年度は文化庁文化交流使として世界中を旅し、このコンテクストを通じて、文化圏の違う人々とコミュニケーションしながら、”Kawaii”の本質である「自分だけの小宇宙をつくること」というのを伝えているのです。
アート作品においては、僕の代表的な作品シリーズ「Colorful Rebellion」(2010-写真作品、2013-半立体作品)で、先の手法で作品を制作しています。僕は、ニューヨーク、フロリダ、アンカレッジ、ミラノ、アムステルダムなど世界各国で作品を発表しているので、Kawaiiカルチャーを調べたことがある人なら、僕のアートワークに一度は出会ったことがあるのではないかと思います。
当CdGディスプレイの類似案件について、僕のアート作品を見た事のある各国の人々からコメントやメッセージが届きました。最初にディスプレイの写真を見ての所感は、「せっかくなら、コラボレーションさせてほしかったのに!」ということでした。なぜなら、「TOKYO」 「Harajuku」「Kawaii」をテーマにこの手法を続けてきたオリジナルとしての誇りがありますし、この文化自体、”Kawaii”に賛同してくれるコミュニティと一緒に育てて来たという自負があるからです。
1980年代後半から90年代にかけて、モードの世界で「モノクロ」が流行する中、僕は自分のリアリティであった「カラフル」を武器に真逆の個性を主張していました。経験もなくジタバタしながらも20年以上続けて来た結果、今や、このカラフルなカルチャーを大切に思ってくれる人々が世界中に存在しているという事実は、とても感慨深いことです。(だって、あの時、散々大人から馬鹿にされていた20代の自分が望んでいた未来がついにやって来たのですから!)
僕はアーティストとして、“対話”を大事にしています。
今回思ったこと・感じたことは、メディアなどで聞かれれば答えていこうと思っています。
そして、何よりもコム・デ・ギャルソンの皆さんともお話出来たら一番嬉しいです。
今回の出来事は、ファッション業界とアート業界が、より良い進化を遂げる為の”対話”の起点になればと考えています。また、僕個人としては、色々な意見をくれたファンの意見や行動も含めて、自分の作品やコンセプトをさらに強固なものにしていかなくてはいけないと、深く刻まれた一件になりました。
変わらずずっと増田セバスチャンの作品を好きでいてくれる世界中のファンやサポートしてくれている皆さんに感謝を込めて。
2018年1月18日
増田セバスチャン
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