絶望モモンガ様(勇者ガゼフ編完結/本編完結) 作:思いつきと実験
<< 前の話 次の話 >>
13 / 16
超不定期更新&見切り発車編
ダイジェストではなく、普通に書く予定
勇者ガゼフ編ダイジェストではなく、普通に書く予定
勇者ガゼフの大冒険①
人類有数の戦士であり、漆黒聖典やクレマンティーヌなどが殲滅された今や、実質人間最強の彼は人生という道に迷っていた。
陽光聖典に命を狙われ、文字通り命を分けた愛すべき部下たちの犠牲によって生き残り、王都に戻ったときには全てが終わっていたのだ。
王都にはかつてなかった希望が溢れていた。
自分のいない間に歴史に残る決起があり、女王となったラナーと彼を支えるクライムによって王国の闇は取り除かれたのだ。
「そうか……、やってくれたのだな……」
このときほどガゼフは己の無力さを痛感したときはないだろう。
陽光聖典によって殺されかけたときよりも無力さを実感する。
何が王国最強の戦士だ。
大事なときに主君を守れず、長年願っていた王国の闇を晴らすのに己は必要がなかった。
「はははは!
俺は自惚れていたようだぞ!ブレイン!」
「ガ、ガゼフ?
いきなりどうしたんだ?」
うつむいたと思いきや、次の瞬間には晴れやかな表情で笑うガゼフを怪訝な表情で見る。
「俺はまだまだ未熟だ。
心身を鍛えなおす旅にでるぞ!
どこかの国に仕えることもない、1人の冒険者としてやり直してみようと思う。
ブレイン、お前も一緒に来ないか?」
ガゼフはブレインに笑いかけ、ブレインは苦笑いとともに差し出されたその手を握った。
「俺も自分の限界を感じていたところだし、ちょうどいい。
お前に付き合ってやるよ」
ブレインもまた瀕死のガゼフを拾ったときから変わり始めていたのだ。
自分よりも強かったガゼフが死ぬ寸前まで追い詰められ、敗走させられた現実。
この世界にはまだまだ己の想像できない強者がいる。
強くなっていたと勘違いしていた自分を戒めたのだ。
尤も、この旅の果てに想像を遥かに超えた強者の集団に出会い、再び心を折る寸前となるのだが、それは今はどうでも良い話であろう。
「まずはどこに行くんだ?」
「まずはあてのない旅というのもいいかもしれん。
南の方へ行くとするか!」
ガゼフは初めてといっていいほどの開放感を味わっていた。
王国戦士長として、王の懐剣として常に重圧と戦っていたときとは違う。
もっと強くなるために、求道のために人生を賭けることの喜びを久しぶりに思い出したのだ。
こうして、人類最強コンビのガゼフ、ブレインコンビは南へと旅立った。
勘か、本能かはわからないが彼らは知らず知らずに最良の選択を選んでいた。
そう、南はナザリックとは正反対の方向。
彼らの旅は最高の幕開けを予感させるものであった。
次回予告
勇者、ハムスターに出会う?