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トキの生息環境改善、コンタクトの汚れ除去応用 メニコンが開発

冬場に水が張られた田んぼで餌を探すトキ=新潟県佐渡市で(同市提供)

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 新潟・佐渡島にいる国の特別天然記念物「トキ」の生息環境の改善に、コンタクトレンズのケア技術が生かされている。餌不足を解消するため島では冬場も田んぼに水を張るが、稲わらが残って次の稲作に支障が出ていた。しかし、レンズの汚れ落とし技術を応用した稲わらの分解促進材をまくことで悩みが解消され、真冬でも水をたたえる田んぼが増えた。野生下での絶滅から一転、今や三百羽余が暮らす島で、人との共生に一役買っている。

 この分解促進材を手掛けるのは、コンタクトレンズ大手のメニコン(名古屋市)。レンズに付着した汚れを分解して除去する酵素を長年にわたり研究する中、稲わらなどの植物繊維を断ち切る酵素を見つけ、二〇〇三年に農業資材として製品化した。「当初は収穫後に稲わらを処理する野焼きに代わる手段として売り出した」。開発した亦野浩(またのゆたか)主席研究員(54)は振り返る。ただ、佐渡島では別の需要があった。

 島ではトキが暮らしていた環境を取り戻そうと、農家がコメを収穫後の十一月ごろ、再び田んぼに水を張る。水を張ることで餌となるドジョウなどが冬場も生息できる半面、収穫後に残る稲わらが微生物に分解されないまま水底にたまって腐り、翌年の苗の成長を阻んでいた。

 そこでメニコン側が分解促進材を収穫後にまくことを提案。酵素の働きでわらの分解を早めれば、水をためても稲作への影響を軽くできると考えた。農業用機械で一回散布すれば、効果を見込めるという。粉末タイプで価格は二キロ入り三千円ほど。JA佐渡によると、販売が始まった〇六年に百五十袋だった販売数は、一七年には約四千袋まで増えた。このうち25%が冬期に水を張る田んぼで使われた。担当者は「翌年への影響を低減できるため、農家も安心できるのではないか」と推し量る。

 実際、冬期に水を張る田んぼは、この十年間でナゴヤドーム約六十個分の三百ヘクタール分増え、計六百七十五ヘクタールになった。佐渡市では〇八年から人工繁殖したトキの放鳥を続けており、保護担当者は「餌場の確保につながり、人との共生も進めばありがたい」と話す。

 新潟県出身の亦野さんは「トキの生息環境の改善に役立ててもらっているのは光栄です」と喜んでいる。

 (酒井博章)

 <メニコンの農業事業> レンズケア商品づくりで培った酵素などの研究を2000年代から、農業分野に転用。稲わらの分解促進材のほかにも、トヨタ自動車、豊田通商と共同で鶏ふんなどを短時間で堆肥化する商品を開発し、スターバックスコーヒーの廃棄されるコーヒー豆かすを乳牛用の飼料として再利用する取り組みも始めている。農業事業の売上高は17年3月期で1億9500万円。

稲わらの分解促進材を開発したメニコンの亦野浩さん=名古屋市西区で

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