米国証券取引委員会(SEC)で運用会社の監督をしているダリア・ブラスが、全米投資会社協会(ICI)と全米資産運用協会(Asset Management Group)の二つの業界団体に対し「ファンドのイノベーションと仮想通貨関連商品」という題の書簡を送り、その中でビットコインETFに対するSECの見解を明らかにしました。

まずこのレターは「1940年投資会社法ではイノベーションのためのフレキシビリティーが強調されている。だからSECもイノベーションは大歓迎」とした上で、投資家保護の見地から以下のポイントが重要だと考えていることを明確化しました。以下抄訳。

値洗い(Valuation)
投信およびETFは、純資産(NAV)を計算するため、毎日、それが保有する銘柄の価格を確かめないといけない。それが確定できないと、投信の場合、デイリーのパフォーマンスの計算が不正確になるし、ETFの場合、APと呼ばれる業者が、現物とETFとの間の乖離を鞘取りすることができなくなる。しかし仮想通貨の取引はフラグメント化されており、どの値段を使うべきか?が確定しにくい。フォークが起きた際、それを投信やETFのバリューにどう反映するか?が未知数。エアドロップのようなイベントが起きた場合、投信やETFの保有者の誰が、どれだけそれを受け取るのか?のポリシーが不明快。先物の清算価格の決定の際、現物市場の故意の関与による操作をどう防ぐ?ということなどが不明。

流動性(Liquidity)
投信やETFの特徴は、受益者がいつでも換金できる点にある。流動性に関する新ルール(rule 22e-4)では、ファンドが流動性確保のためリスク管理プログラムを実施することが義務付けられている。そこではファンドが組み込む投資対象のうち流動性に欠けるものは15%以上組み込んではいけないことが規定されている。

カストディー
1940年投資会社法ではファンドは顧客資産をカストディアンに預けることで護ることが規定されている。仮想通貨に投資するファンドは、どうやってカストディアンを設定するのか? 現在、仮想通貨をキープできる信託会社は存在しない。また仮に仮想通貨のカストディアン・サービスが開始された場合でも、そこに保管された仮想通貨の所有者として投信会社がプライベート・キーを通じて所有権をちゃんと主張でき、記録できることは未知である。またカストディーに対するハッキングが起きた時の対応は未知である。

ETFの鞘取り
ETFはそれがなぞることになっている原資産との間の価格乖離を業者による鞘取りで埋める仕組みになっている。しかし仮想通貨取引はフラグメント化されており、鞘取りを行う指定参加者(AP)が十分に鞘取りを行えないリスクがある。

どの法律をあてはまる?
以上の説明は1940年投資会社法の見地からされてきたが、業者によっては1933年証券法に基づくETF上場申請を行おうとしている者も居る。どの法律に準拠して商品設計すべきかハッキリしていない。

それらがハッキリするまで、どの法律に基づいた申請でも承認しない。

また、過去に「有効」が宣言された申請に関し、証券法rule 485(a)の規定を利用し、仮想通貨に投資する商品の組成をしやすくするループホールを利用することは認めない。




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