経産省がEdTechの研究会発足 “チェンジ・メイカー”を育成

さまざまなEdTechの開発・導入に向けた意欲を語る世耕大臣
さまざまなEdTechの開発・導入に向けた意欲を語る世耕大臣

経産省は「『未来の教室』とEdTech研究会」を発足させ、1月19日に第1回会合を開いた。学校教育だけでなく、就学前やリカレント教育も視野に入れた人材育成の課題を明らかにし、EdTechの活用や産業としての振興を加速させる狙い。会合の中では具体的な人材像として、「自ら問いを立て、その解決に乗り出す課題設定・解決力と、イノベーションを起こすための創造性を持った『チェンジ・メイカー』」が示された。

同省では現在、先行してリカレント教育の充実や、転職などの労働移動の在り方についての検討を進めている。同研究会では、①就学前、初等中等教育、高等、リカレント教育の各教育段階で必要な教育②①に必要なEdTechの開発③教育現場への導入・普及や海外市場への展開を見据えた課題――などを議論する。

初会合では、委員らによるプレゼンテーションが行われ、これからの人材育成に向けた課題が議論された。

世耕弘成経産大臣は「私自身も以前、近畿大学の理事長として、全国で初めてタブレットを学生全員に配って反転学習を行うという改革に取り組んだので、この分野には非常に関心が強い。EdTechは、安倍政権が目指す生産性革命と、人づくり革命の両方に資する要素として位置付けられている。この研究会の議論を踏まえて、先進的・革新的なEdTech活用プロジェクトを現場に導入していきたい」と話した。

座長代理を務める佐藤昌宏デジタルハリウッド大学教授は、EdTechを「デジタルテクノロジーを活用した教育のイノベーション」と定義し、同研究会が目指す方向性として「教育、学びの選択肢を増やすとともに、教育イノベーターを支援し増やしていきたい」と意欲を示した。

会合では一方で、国際間競争での日本の遅れもデータで示された。事務局から配布された米、英、中の各国と日本を比較した資料によれば、学校での無線LAN普及率は、アメリカが88%、イギリスが78%(いずれも2017年)なのに対し、日本は26%(15年時点)に過ぎない。

また、プログラミングの必修化年度は、アメリカ15年、イギリスが14年からなのに対し、日本では次期学習指導要領が始まる20年から。すでにイギリスでは、日本のセンター試験に相当するGCSEでプログラミングが必修となっている。中国は地域によって差があるものの、学生1人当たりのEdTech関連の年間予算は約1.7万円で、4カ国の中で最も多い。教育予算の8%に相当する約4兆円が、ICT関連に充てられているという。

同研究会では今後、専門委員会を設置し、教員をはじめ、人材開発、EdTechなどに携わる民間人らによるワークショップを複数回実施する。今年度中に「中間まとめ」を、今年5月をめどに「まとめ」を出す。

また、同省は今年度補正予算で「学びと社会の連携促進事業」として約25億円を計上。EdTechの開発・実証として、STEAM教育プログラムの構築や、個別学習と一斉講義を組み合わせた効率的な学習法の確立などを進める。将来的には、日本の人材育成への波及だけでなく、EdTech自体の成長産業化や海外展開なども見据える。