経営難・教育質低下の私大は助成金を削減へ
受験生への情報公開も強化、2018年度から
文部科学省は、私立大・短大を運営する学校法人が著しい経営悪化に陥った場合などに、法人への私学助成金を減額する新しい仕組みを2018年度に導入する方針を決めた。
財務情報を開示していない法人の減額幅も拡大する。18年度は18歳人口が再び減少局面に入り、経営環境の一層の悪化が見込まれるため、経営改善が進まない法人には撤退を含む抜本的な対応を促す。
文科省はこれまで、特色ある研究や地域連携、大学の国際化などに積極的な法人には助成金を加算する一方、大学の大幅な定員割れや不正経理などの不祥事の際には減額を行い、改善を求めてきた。
18年度からは減額要件として、従来の「定員割れ」に「5年程度の連続赤字」「教育の質が低評価」を加え、すべて該当する場合はさらに助成金を削減する。
法人の経営分析は私大・短大への経営支援を行う「日本私立学校振興・共済事業団」(東京)と連携して実施。教育の質は、討論などを通じた主体的な学び「アクティブ・ラーニング」や教員評価の実施状況などを数値化し、文科省が5段階で判定することを想定している。
具体的な減額幅は今後検討するが、教育の質が高評価の場合は、逆に加算の対象になる。
受験生への情報公開も強化する。これまでホームページ上などで財務情報を公表していない法人には、助成金の一部を15%削減してきたが、これを50%程度に拡大する。また、従来は経営改善計画を策定すると助成金が加算されたが、今後は第三者委員会が計画を評価し、実効性がないと判断された場合は加算分を減額または打ち切りとする。
文科省はすでに今回の制度改正について各法人に説明を始めており、同省幹部は「メリハリの利いた補助制度に改めるのを機に、各法人は学校規模や教育内容が今のままで良いのか見つめ直してほしい」と話す。
定員割れの私大は17年度、全581校のうち229校(39%)、短大は全304校のうち204校(67%)。同事業団が16年度時点の収支を分析した調査では、全国660法人のうち、17%にあたる112法人が経営困難な状態で、そのうち21法人は経営改善をしないと19年度末までに破綻する恐れがあると指摘している。
◆私学助成金=学生の負担軽減や教育研究の向上のため、国が私大・短大を経営する学校法人に交付する補助金。学生数や教職員数などに応じた「一般補助」と、特色ある教育研究に配分する「特別補助」がある。2018年度の予算額(案)は総額3154億円。