住む地域のバカ格差

バブル時代の日本では「日本人は平等」と信じられていました。ところが90年代を境に日本にも様々な格差が存在することが目に見えるようになりました。国際経験豊富な元国連専門期間職員の @May_Roma (めいろま)さんは、新作書籍「バカ格差」で日本人を苦しめる格差について分析します。

1月11日発売の新作書籍「バカ格差」では日本人を苦しめる格差について分析していますが、日本人を苦しめるバカ格差の代表には「住む地域のバカ格差」があります。以下は本書からの抜粋です。

先進国の稼ぎ頭はいまや製造業ではなく知識を扱う産業なのに、日本では未だになんでも東京に集中する風潮なのが不思議でなりません。

日本以外の先進国では、知識産業(コンピュータや情報処理などを扱う産業)の人々は特定地域には集まっても、大都市の中心だけに集まるのではなく、郊外にオフィスを構えたり、さまざまな国や地域を移動しながら働いたりすることが増えており、かつてよりも柔軟な暮らし方が当たり前になっています。

▼実質賃金を考えないバカ

日本は通信インフラが世界最高の水準であり、宅配便の配送も正確で迅速、そのうえ全国どこでも世界的に見て犯罪率が非常に低いという恵まれた環境なのですから、東京へ一極集中する理由はないのです。

確かに東京では「豊かな生活」ができます。都道府県別のデータを見ると、最も収入が良いのはやはり東京都で、平均年収は601万円です。しかし、賃金のことを考える際は、「実質賃金」も考えなければなりません。

実質賃金とは、もらったお金を使って、どのぐらいのモノを得られるかということです。これは例えば家賃、食料、電気代、学費、娯楽費などといったものを含みます。

東京は賃金が高いですが、モノの値段も高いので、出て行くお金も多いのです。実質賃金が下がるのであれば、地方に仕事があれば無理して東京に住む必要はありません。

▼東京と福岡、どちらが豊かに暮らせる?

例えば東京と福岡ではどちらが豊かな生活ができるでしょうか。

東京に住んでいる人にとって福岡は地の果てのような印象かもしれませんが、交通機関が発達しており、交通費も比較的安い日本では、東京から福岡への移動は、例えばアメリカ国内での移動と比べると随分容易なことなのです。

福岡県の平均年収は450万円ですが、家賃相場は3万円台です。東京都内だと家賃相場は7万円台。また全国平均の物価水準と比べると、東京は平均より9%ほど高いのですが、福岡は2%ほど安い。つまり福岡の物価は東京に比べて10%ぐらい安いということになります。

福岡ぐらい発展した街であれば、東京並みとはいかずとも商業施設や娯楽もたくさんあるので、刺激がなくて退屈するということもありません。

さらに、日本人が気づかなければならないのは、バブル崩壊後、国の財政が悪化しているにもかかわらず、新幹線の新路線の多くが地方にばかり作られている点です。

便利な新幹線が開通することで、人もモノもお金も地方から東京やその他の大都市に集中し、地元は廃れるというストロー現象が起きましたが、その一方で、地方に住んで、大都市で稼ぐという働き方が容易になりました。

日本の鉄道は新幹線をはじめとして時間も運行も正確なので、東京に通勤することも不可能ではありません。

東京からほんの少し離れるだけで生活の質がうんと上がることもあります。

▼1000万円以下で一軒家が買える

私の実家は神奈川県にありますが、かなり奥地のほうに住んでも、東京や横浜までは電車で1時間もかかりません。しかも家賃は東京の半額以下だって珍しくない。駅前に田んぼや畑が広がり、中古一軒家だって探せば1000万円もしないものもあります。

しかし中古とはいっても住めないような家ではなく、ちょっと壁紙を変えたりすれば十分住める家です。中には90年代にたてられた物もあります。不便だからと子供達が住まないのです。

車がなければ生活できないということはなく、バスや電車があるので交通もそれほど不便ではありません。

近くに海があり、農園や果樹園もあります。農協の直売所も珍しくなく、都内のオーガニックショップの数分の一の値段で、地元の新鮮な野菜が手に入ります。保育所は空いています。

東京志向の人々は、東京以外の暮らしについて特に調べることもせず、現地にも行かないので、郊外はまるでチベットの山奥かなにかのような印象を持っています。

しかし欧州やアメリカと比較すると、日本の郊外は驚くほど便利で、不動産も大変安いのです。しかも交通機関が故障することもなく、ストライキもないので、通勤の問題がありません。治安も恐ろしく良いですから、家賃が安い場所でも銃撃されたり、ジャングル用の草刈鎌で襲われたり、酸を投げつけられて強盗されることもありません。道路はひび割れておらず、図書館やスポーツ施設は小奇麗で格安で使え、麻薬中毒患者だらけの地域にはありません。

欧州や北米の感覚だと全く不便ではないのです。

同じ様な立地でロンドンやパリ、ローマの郊外なら、一軒家なら中古でも8千万円、6千万円の家が、日本では1千万円どころか、下手したら数百万円で売られています。中古で、都心にないから、というだけの理由です。

しかし自分の頭でものを考えない日本の人々は、なんでも東京が素晴らしいと思い込み、低い生活レベルに甘んじています。

このような「住む地域のバカ格差」というのも、日本人の思考の浅さと柔軟性のなさをよく表しているように思います。

ケイクス

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May_Roma

海外居住経験、職業経験をもとに、舌鋒鋭いツイートを飛ばしまくっているネット界のご意見番・May_Romaさん。ときに厳しい言葉遣いになりながらも彼女が語るのは、狭い日本にとじこもっているひとびとに対する応援エールばかり。日本でしか生き...もっと読む

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コメント

restart20141201 私も大都市集中に疑問。 ただし、企業(収入源)、インフラ、文化娯楽、商業施設が揃ったところには住みたい。 約6時間前 replyretweetfavorite

replicorn ”実質賃金とは、もらったお金を使って、どのぐらいのモノを得られるかということです。これは例えば家賃、食料、電気代、学費、娯楽費などといったものを含みます。” 約9時間前 replyretweetfavorite