アマゾンが取引先に課している「冷酷な条件」

合理性を追求した徹底したロジカル経営

そして、カスタマーサービスでは、出荷に対してどのくらい問い合わせがあったのか、電話の問い合わせを一定の時間内に何%取れたか、メールの問い合わせに対して一定時間内にどれだけ返せたか、1回で簡潔に答えられたか、また、回答に関するアンケート結果をもとにした顧客満足度なども見ています。

各KPIの数字は非常に細かい単位で見られ、0.0X%というレベルで目標が立てられます。これらのKPIについて、社員はすべて同じフォーマットで資料を作り、年対比や目標対比、直近の推移などの数値を出していきます。

こうすることで、自分の担当部署だけでなく、上流から下流までの全体のビジネス状況を見ることができます。アマゾンでは、販売機能や物流機能がそれぞれ独立せずに社内で一体化しているため、上流から下流までどの機能の業績も同一フォーマットで確認できることが重要なのです。

数字はコントロールするもの

アマゾンでは、各KPIを週次でレビューする、WBR(Weekly Business Review=週次経営会議)という会議があります。各KPIにオーナー(主担当者)が決められており、WBRではそれぞれが先週の状況、今週の進捗と目標達成の見込みについて説明していき、それに対して、ほかのKPIのオーナーたちが厳しく質問していきます。

そのため、WBRでは数値の理由、今後の方策や改善策、さらには、前年との比較のため前年の数値の理由についても答えられるようにしておかなければなりません。ちなみに、日本のWBRは1~2時間、グローバルのWBRであれば3~4時間に及ぶこともあります。アマゾンではこれを毎週行い、その結果をビジネスに反映させているのです。

このWBRについて、非常に印象的だったエピソードがあります。私が当時オーナーを任されていたKPIで目標を達成し、意気揚々とWBRに参加したときのことです。私が自信満々に「We met the goal!(目標を達成しました)」と話したところ、「どうして目標を達成できたんだ?」という質問を受けたのです。

そのままスムーズに次に進むだろう、と思っていた私は一瞬パニックになってしまいました。そこで言われたのが「数字というのはコントロールするものだから、目標を達成しようがしまいが、理由をすべて理解しておかないと何の意味もないんだよ」という言葉でした。

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  • NO NAMEda36107b4d2f
    小売りが苦しんでいるといいますが、
    義理人情で商売してたのはパパママ家電みたいな街の小売店では。
    それらを資本力とブラック経営で片端から潰したのは日本の大規模量販店でしょう。
    それがアマゾンに資本力と経営力で負けたとたん義理人情を騙って被害者面をすることには大いに違和感を感じます。
    だからアマゾンが正しいと言うつもりはありませんが。
    up120
    down4
    2018/1/19 08:16
  • NO NAME5423e687c818
    >私が自信満々に「We met the goal!(目標を達成しました)」と話したところ、「どうして目標を達成できたんだ?」という質問を受けたのです。

    なるほど。そう突っ込まれたら、確かにパニックになりますね。目標を達成できたなら、その理由を明確化する。それが次に繋がるということですね。勉強になりました。
    up99
    down1
    2018/1/19 06:17
  • SaM0c0f99192269
     なるほど、これやられたら日本企業は勝てんわ。

     でも、これを”文化”といっているうちはまだ甘い。世界企業にはすべてこういったシステムが埋め込まれている。自分たちが必要とおもえば、容赦無くM&Aをしかけ、不要になれば切り捨てる。これが究極の市場適応。
     ただ規模だけを競ってきた日本に企業にはもう先はない。

     現在の若い経営者たちの、自在な考えと行動には将来への希望を見出せる。
    up75
    down2
    2018/1/19 06:57
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