アマゾンが取引先に課している「冷酷な条件」

合理性を追求した徹底したロジカル経営

書店に限らず、「いつもお世話になっているから」と取引先に気を遣い、義理人情をもってビジネス判断を下すのが日本の商慣習です。しかし、そんな平和な日本のビジネスの世界に、アマゾンが本気の資本主義をもって乗り込んできたのです。

何十億という決裁権を持ったアマゾンの人間は、「この条件で承諾いただけないのであれば、契約は破棄させていただきます」と言って、平然と取引を打ち切っていきます。義理人情がまったく通用しない、アマゾンの徹底した合理的なやり方は、日本企業には衝撃的でしたが、アマゾンとの取引額が1000億円という巨額の規模になってくると、どんな不都合な条件も呑まざるをえないのです。

なぜそこまで「冷酷」になるのか

このように、アマゾンとかかわる取引企業からすれば、合理的すぎるアマゾンのビジネスのやり方が冷酷に見えるのも仕方ありません。しかし、アマゾンがこうした合理主義を徹底するのは、アマゾンが「顧客至上主義」を大切にしているからなのです。

『なぜアマゾンは「今日中」にモノが届くのか』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

アマゾンのビジネスの判断基準は「それが最終的に顧客のためになるか」です。そのため、一見冷酷なやり方であっても、データと数値をもって完璧にマージンコントロールを行うことで、その利益をどこよりも「速く、安く、高品質の」サービスという形で顧客に還元しているのです。

アマゾンの取扱商品が増大する昨今、アマゾンの強大化を危惧している企業は多いでしょう。しかし、この徹底したアマゾンのロジカル経営と組織文化は、一朝一夕でまねできるものではありません。

真っ向からアマゾンとぶつかっていくのではなく、アマゾンの「顧客至上主義」という考え方を取り入れつつ、長年培ってきた自社の強みや、新たなビジネスの種を見つけ、磨いていくことが大事なのではないでしょうか。そうすれば、アマゾンにすべての顧客を奪われることはないでしょう。

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  • NO NAMEda36107b4d2f
    小売りが苦しんでいるといいますが、
    義理人情で商売してたのはパパママ家電みたいな街の小売店では。
    それらを資本力とブラック経営で片端から潰したのは日本の大規模量販店でしょう。
    それがアマゾンに資本力と経営力で負けたとたん義理人情を騙って被害者面をすることには大いに違和感を感じます。
    だからアマゾンが正しいと言うつもりはありませんが。
    up98
    down1
    2018/1/19 08:16
  • NO NAME5423e687c818
    >私が自信満々に「We met the goal!(目標を達成しました)」と話したところ、「どうして目標を達成できたんだ?」という質問を受けたのです。

    なるほど。そう突っ込まれたら、確かにパニックになりますね。目標を達成できたなら、その理由を明確化する。それが次に繋がるということですね。勉強になりました。
    up85
    down1
    2018/1/19 06:17
  • SaM0c0f99192269
     なるほど、これやられたら日本企業は勝てんわ。

     でも、これを”文化”といっているうちはまだ甘い。世界企業にはすべてこういったシステムが埋め込まれている。自分たちが必要とおもえば、容赦無くM&Aをしかけ、不要になれば切り捨てる。これが究極の市場適応。
     ただ規模だけを競ってきた日本に企業にはもう先はない。

     現在の若い経営者たちの、自在な考えと行動には将来への希望を見出せる。
    up70
    down1
    2018/1/19 06:57
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