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【社会】

成年後見利用者の差別解消へ 職業、資格制限を撤廃

 知的障害や認知症などで成年後見制度を利用した人が、公務員などの資格を失う各種法律の「欠格条項」を見直す一括法案の概要が十八日、判明した。制度利用者の権利を一律に制限してきたこの規定を、国家公務員法など関係する約百八十の法律から一斉に削除。資格取得に必要な能力は個別に判断するよう改善し、利用者への不当な差別を解消する。高齢化の進行に伴う認知症増加に対応する狙いもある。

 政府は二十二日召集の通常国会に法案を提出する方針。三月上旬に閣議決定し、会期内の成立を目指す。

 成年後見制度は判断能力が不十分な人の権利を守るために、家族や司法書士らが後見人や保佐人となり財産管理などを行う制度。欠格条項は、制度を利用すると公務員や保育士などになれない規定で、国家公務員法など約百八十の法律に設けられている。

 欠格条項があるため希望する職業に就けなかったり、仕事を辞めざるを得なくなったりするため、成年後見制度の利用をためらう要因になっていると指摘されていた。規定を削除することで、利用促進を図る。

 判断能力や心身の状況には個人差があるため、法案では業務を適切にできるかは、面接などで個別に審査するとしている。成立すれば、二百以上の資格や免許に影響するとみられる。

 欠格条項をめぐっては、岐阜県の男性が今月、保佐人が付いたために勤務先の警備会社を退職せざるを得なくなったのは違憲だとして、国に損害賠償、会社に地位確認を求める訴訟を起こしている。

 認知症や障害で支援の必要な人は数百万人以上いるとみられるが、成年後見制度の利用者は約二十万人にとどまっている。

 政府は高齢社会に不可欠な仕組みとして成年後見制度の普及を目指しているが、欠格条項が普及の妨げになっているとの指摘が出ていた。

<成年後見制度> 認知症や知的、精神障害などで判断能力が不十分な人を保護、支援する制度。後見人らが預貯金の管理や、福祉サービスの利用手続きなどを行う。判断能力に応じ後見、保佐、補助の3段階があり、家族のほか、司法書士や弁護士が務めることが多い。

 2000年に禁治産、準禁治産制度を廃止して導入されたが、制度を利用すると資格が取れなくなる「欠格条項」の多くは残されたままだった。公職選挙法には後見人が付くと選挙権を失うとの規定があったが、13年の違憲判決で法改正され、現在は投票ができるようになっている。

 

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