オイコノミア「分かって得する!原因と結果の経済学」[解][字][再] 2018.01.19

191月 - による admin - 0 - 未分類

(テーマ音楽)あなたはこの通説を信じますか?
(おかん)ん?「テレビを見せるとバカになる!」。
そうなんやあ。
(笑い声)ん?
(息子の笑い声)もう!
(笑い声)
(息子)えっ!ちょっと…。
何すんだよ母ちゃん!テレビ見るとアホになるんやで!ほら!ここに書いてある!早く宿題やり!
(中室)それ間違ってますよ。
えっ!?と突然登場したこの女性今回の先生中室牧子さん。
中室さんは教育や貧困の問題を経済学の視点で分析。
科学的根拠に基づいた政策を提言しています。
今回中室さんと考えるのは通説の数々。
それってホント?「原因」と「結果」を正しく見極めないとあなたのお金と時間が無駄になっちゃうかも!きゃ〜!この番組で「原因」と「結果」を見極めて得しちゃおう!うし!
(又吉)小芝居につきあって頂いてすみません。
とんでもありません。
はじめまして。
慶應大学の中室と申します。
(岩井)お願いします。
よろしくお願いします。
今日は学生さんもいらっしゃってるんですよね?
(学生)よろしくお願いします。
お願いします。
そして岩井も。
そうです。
頼むわちょっと。
お願いします。
大丈夫かな?この芸人の中でも特に暗い2人が並んで番組的に大丈夫なのかね?まあだから明るくしてもらってるんじゃないですか?雰囲気もね。
明るく盛り上げて参りましょう。
先生先ほどあのテレビを見る事は学力の低下にはつながらないというような事がありましたけどそうなんですか?そうですね。
意外とこれあまり知られてない話なんじゃないかなと思うんですけれども「テレビを見ると学力が下がる」これはお二人は正しいと思われますか?やっぱり勉強する時間が減ってしまったりするんで何か学力が下がるんじゃないかなと思いますけど。
言われましたけどね。
昔母親とかにもね。
実はですねあのアメリカで行われたある研究ですと幼少期にテレビを見た子どものほうが成績が高くなるということを明らかにした研究がありまして私はいつも学生にも言ってるんですけれどももっともらしい通説ほどちゃんと疑ってかからなければいけないということだと思うんですね。
でそのもっともらしい通説というものを考えるにあたって私が今日提案したいキーワードというのが「原因と結果」ということです。
原因と結果。
はい。
物事の間に原因と結果の関係があるということをですね読んで字のごとく「因果関係」というふうに言います。
でこの原因と結果の関係を明らかにする方法論我々は専門用語で「因果推論」などと呼んでますけれども実はアメリカの大学では彼らのように大学生の時にちゃんと必修として勉強するんですけれども日本ではなかなかそういう事が行われてこなかったので。
あまり聞かないですね。
そうですね。
ですので企業の方だったりとか官庁の方だったりとか時々はテレビなんかでも本当に原因と結果の関係があるのかということがわからないままに非常に曖昧な通説がもっともらしく語られているということがあるのかなと思うんですね。
ですので今回はその通説に惑わされて損をすることがないように因果推論の基本というものをぜひ皆さんに知って頂きたいと思います。
はい。
よろしくお願いします。
お願いします。
先生その2つの物事が原因と結果因果関係にあるかどうかっていうのはどうやったらわかるんですかね?そうですね私3つのポイントをぜひ押さえて頂きたいなというふうに思うんですけれどまずこちらご覧頂きましょうか。
えぇ?地球温暖化と海賊?一体どんな関係があるの?「何言ってるんだろうな?」って思いますけど。
地球温暖化が進むとやからむしろ何か海賊の数は増えそうやけど減るんですよね。
減るっていうふうになってて。
はい。
はぁ〜。
グラフ見てみましょうか。
はい。
こんなふうになっています。
あっ如実に減ってますね。
そうですね。
これを見るとですね地球温暖化が進んで気温がどんどん上がってくると確かに海賊の数は減ってきているような感じがすると。
そんなふうに見えますよね?暑いからじゃないですか?海の上。
そうかぁ。
もうしんどいってなって。
これはですね経済学者はこれを「見せかけの相関」などというふうに呼んでいます。
要するにですね一見気温が上がることによって海賊の数が減っているように見えるんだけれどもこれは気温が上がるということが原因で海賊の数が減るという結果がもたらされたのではなくてまったくの偶然と。
たまたまなんや。
そうですね。
でこういうものは因果関係とは言えないんですね。
1860年ごろがピークなんですね。
海賊の数。
現代はそんな。
まあどっかにはおるんですけど。
海賊でやっていけないですもんね。
うん。
気温と海賊の数の間に因果関係があるっていうことになるとなかなか私たちはそれをスッキリ信じることはできないと思うんですよね?「ただの偶然でしょ?」っていう感じになると思うんですね。
そうなんですけれどもちょっともっともらしいことになると例えばテレビを見ると学力が下がるっていうふうに言われると「あっそうなのかな?」と思ってしまって本当にその2つの間に原因と結果の関係があるかどうかっていうことを考えるのを怠ってしまうんだと思うんですね。
近いとね。
近いと。
そうなんです。
まったくの偶然他にどんな例を思いつく?
(学生)はい。
僕ずっと小さい頃から雨男だって言われてたんですけど冷静に考えて雨が降ることと僕が外に出ることって何の因果関係も無いのであんま信じないで生きていけるんじゃないかなと思いました。
うん。
確かにそれは濡れ衣だよね!続いてこちらをご覧頂きましょうか?これは因果関係があるというふうに言えるんでしょうか?どこまでがその因果になるんやろう?体力のあるほうが勉強に集中できたりはするじゃないですか。
はい。
それも含めるんやったら因果関係あるような気するんですけど。
ああ。
運動も頑張れる子どもが学力も高いっていうか勉強も頑張れるみたいな。
又吉さんがおっしゃったもし集中体力があるから集中できて集中ができるから学力が高いという経路があるんだとすると学力が高いことの原因は集中ですね。
ああ〜。
はい。
岩井さんがおっしゃったように意欲が高いので体力のある子は意欲も高いだろうから意欲が高い子は学力が高いんじゃないかということになった場合想定されている原因というのは意欲が高いということなので体力ではないんです。
この場合はですね体力と学力というものの間に直接的な因果関係があるかと…。
直接的なね。
見ているわけなんですよね。
意欲も集中力も体力の中に。
含まれている?含まれてるんじゃないかなって思っちゃうんですけど。
体力と学力の間に直接的な因果関係があるということは……っていうことを意味しているわけなんです。
なるほど。
それは無いな。
それは無いですね。
こういう時にですね実は体力があるっていうことと学力が高いっていうことの間に直接的な因果関係があるというふうに勘違いしてしまう時には大体ここに第3の要因というものが存在している時なんです。
ひょっとしたら今おっしゃったような集中力とか意欲もそうなのかもしれませんが例えばこのケースだと親。
親が非常に教育熱心だという第3の要因があるっていうことなんですね。
例えばですね体力がある子どもの親御さんってどういう人だろうなってことを想像してみると小さい頃からスイミングに習わせるだとかスポーツ教室に行くとかというふうにして子どもに一生懸命投資をされるでしょう。
同じように教育熱心なご両親というのは塾に行かせたり勉強するのを横についてみたりするんじゃないかっていうふうに考えられますので子どもの体力があるということと学力が高いということの本当の原因になっているのは実はこの親の教育熱心さなんです。
だからこの2つの間には直接的な因果関係が無くて親が教育熱心だから体力がある子になり親が教育熱心だから学力が高い子になるわけですけれどもこの第3の要因を完全に見落としてしまうので体力がある子は学力が高いというふうにまあ錯覚してしまうということですね。
まあ大体親が教育熱心やったらいろんな事をこうまんべんなくやってる可能性が高いみたいな…。
そうですね。
子どもに使うお金だったり時間だったりっていうのが長かったり多かったりすると考えられますので。
どうでした?岩井君の家は。
僕んちは本当にねえ教育熱心というか習い事メチャクチャやらされてましたから。
だってサッカーもできるし。
サッカーやっててピアノやってて家庭教師付けて水彩画習っててでプールも行ってましたからね。
どっちも。
だから完全にそうですよね。
体力があって学力が高い。
それが岩井です。
(笑い声)メチャクチャ自慢してるよね。
じゃもうひとつこちらもご覧頂きましょうか?因果関係があると言ってよいのでしょうか?最初っからってことですよね?そうですね。
警察官が多いということが原因となって犯罪が多いという結果がもたらされているかということ。
それはないでしょうね?そうですよね。
どっちかっていうと少ない地域。
いや。
でも町やから盗むものとか犯罪とかが人が多いところで犯罪は起こりやすいしっていう別の原因ですよね?恐らく。
これ何か逆っぽいですけどね。
あ〜!犯罪が多いから警官が多くなる気がします。
はい。
これは警察官の数が多いから犯罪が多いのではなくてまさに今岩井さんがおっしゃったように因果関係が逆ですね。
犯罪が多い地域に余計に警察官を配置しているということなんだと思います。
そうですよね?警察官が多い所に犯罪が多いだったら警察官何やってるんだって話に。
そうですね。
これもやっぱり1つ注意しなければいけないことなんです。
のちのちは警察官が多ければ犯罪は少なくなってくるんじゃないですか?そうですね。
実際にそういうことを研究した研究アメリカにありましてスティーブン・レビットといって非常に有名な経済学者がそれを検証してるんですけれども市長が警察官の数を増やすとですね実際に犯罪は減少してくるという因果関係は証明されていますのでおっしゃるとおり第一段階はこれなんですけれども第二段階であの警察官の数を余計に増やすと犯罪は減少していくということは確認できるかもしれないですね。
因果関係のチェックポイント!まったくの偶然ではないか?第3の要因はないか?原因と結果が逆ではないか?1つでも当てはまると因果関係ではありません!親とかね先生とかに言われてまったく疑わずに信じてた説みたいなもの結構ありますもんね。
そうですね。
お化け出るから寝てきなさいとかもったいないお化け出るから食べなさいみたいな。
それも親が因果関係を考えずに言ってますよね。
そうですね。
例えば今おっしゃったような「早く寝ないとお化けが出るよ」っていうのは結構日本では伝統的に使われてきた子どものしつけ方だと思うんですね。
そうなんですけれどもこれも経済学がきちんと検証した結果ですねその教育の方法は必ずしも正しくないということが言われています。
そういうことなんですね。
はい。
ですのでですねやはりまあみんなそういう子どものしつけだったり教育っていうのは良かれと思ってやる。
善意に基づいてやるわけですけれどもきちんと…きちんと検証することが大切だということかと思います。
そうですね。
それ非常によいご質問だと思うんですけど私は2つポイントがあるというふうに思っていまして。
1つは「ヒューリスティック・バイアス」などというふうに私たち呼んでるんですけれども。
はい。
素早い判断はできても正しいとは限りません。
まあついですね半径5メートル以内ぐらいで起こった出来事に非常に影響を受けてしまうっていう事ってあると思うんですよね。
自分が経験したこと自分の友達が言ってたことに非常に影響を受けてしまいやすいということなんだと思います。
私これを説明するときにですねいつも1つ事例として出すのは今実は政府のほうで議論をされている受動喫煙に関するあの法案があるんですね。
厚生労働省は健康被害を生む受動喫煙をなくすため飲食店の屋内を原則禁煙とする対策を考えました。
しかし猛反対しているのが自民党たばこ議員連盟の方々。
一体なぜなんでしょうか?喫煙率というのは一般の方で見ますと2016年のデータでは約19.3パーセント国民の80パーセントはタバコを吸わないんですね。
ところが議員さんの喫煙率というのはそれよりもかなり高いというふうに言われているんですね。
へぇ〜!まあこのタバコに関する規制というのは日本では非常に緩くてやはり政治家がですね自分がタバコを吸うという人が多いので。
自分のね吸えるところが少なくなるのも嫌でしょうしね。
こういうことあるよな。
はい。
ですので全体ではなくて自分の周辺の出来事だったりとかまあその経験で判断してしまう。
それが固定観念となってしまうということがやっぱりあるということなんですね。
俺の友達で2人おるとか何の役にも立たない情報なんですよね。
恐らく。
はい。
そういうこと言ってしまうもんな。
こっちも。
2人いるだけでもいや俺の友達みんなそうだみたいに言いますしね。
結構話デカくしてしまうというかね。
人間が陥りやすい罠の二つ目としては「チェリー・ピッキング」というものがあります。
さくらんぼを摘むとき熟れた実だけを選ぶところから名付けられました。
先ほどの受動喫煙の例で考えていきたいと思うんですけれども実は2016年に国立がん研究センターが発表した研究にこういうものがあります。
そういう研究の成果が発表されてるんですね。
一方でこういうのも発表されてるんです。
「受動喫煙の防止法というものを施行すると外食産業に8400億円の減収になるんじゃないか」ということなんですよね。
これどう思われますか?ご自身がタバコを吸われるとするとこの2つのうちどちらが重要な事を言っていると思われますか?これが「これでいいんか?」っていう。
飲食店を経営されているとするとどちらのほうが重要な調査だと…。
確実にこっちですよね。
そうなんですよね。
なのでやっぱりですね自分の立場でこの出ている2つの研究というもののどちらを信じたいかということが決まってしまってそれでそのことを信じてしまうということがあるんですが実はこの2つの研究は決定的に違っていることがあって。
こちらの国立がん研究センターの発表は複数の研究を統合し受動喫煙と肺がんの因果関係を明らかにしようとしたもの。
その結果肺がんのリスクは確実という結論が示されました。
一方…?二つ目のこの研究は「受動喫煙防止法」というものが施行されると…ですから…え〜!でも結果的に減りそうですけどね。
ところが実は海外で行われたさまざまな因果関係を調べた研究によりますと受動喫煙に関する厳しい規制を導入すると飲食店の売り上げに関しては減らないかむしろ増えるという研究のほうが多くなっているんです。
タバコ吸わない人が多い。
おっしゃるとおりなんですよね。
タバコを吸わない人のほうが圧倒的に数が多いものですから。
そっかぁ。
タバコを吸う人が仮に来なくなったということが起こってもタバコを吸わない人は飲食店に行くようになると。
受動喫煙防止法案は今年の通常国会には提出されませんでした。
飲食店への影響を危惧する声が自民党内で上がっています。
うん。
そのことによって国際的な標準だったりとかあるいはその受動喫煙によってもたらされる健康被害というものを冷静に判断することができなくなってしまって法整備が遅れているということがあるのではないかと専門家の中では議論をされています。
あの皆さんはヒューリスティック・バイアスとかチェリー・ピッキングみたいなそういう経験がありますか?
(学生)はい。
どうぞどうぞ。
あの僕地元が関西なんですけれどもあの僕の地元のスポーツ新聞ってすごい阪神タイガースプロ野球の阪神タイガースをすごいひいきする新聞なんですよね。
もし阪神タイガースが読売ジャイアンツに10対3で負けたとしてもその次の日のその新聞の一面を見てみると10対3で負けたっていう事実じゃなくて情報じゃなくてその例えば4番金本40本目のホームランみたいな内容をその阪神タイガースにとって何かそのいい情報を書いてるんですよね。
あとなんかあります?
(学生)はい。
どうぞ。
占いとかで今日1位だったら「あっ今日は1位だ」と思うけど最下位とかだったら「いやそんなことはない」と思って信じない。
あっでもそれはいいチェリー・ピッキング…。
そうやね。
その日を頑張れるためのね。
ああそうか。
(学生)はい。
はいどうぞ。
僕よく衝動買いとかしちゃったときにその「あっ買っちゃったけどよかったのかな?」というのをネットでレビューとかを調べたりした時にいいのが書いてあると「あっみんなこれ買ってよかったなと思ってるんだな」っていうふうに見るんですけど中にちょっとなんかこれはこうこうこういうところがよくなかったなみたいのも書いてあったら「まあそういう意見を言う人もいるよな」みたいな感じでいい意見だけをみんなの意見みたいな形でピッキングしちゃいますね。
いい意見だと「ああやっぱりいいんだ」。
悪い意見は悪いって言ってる人のことを変な人なのかもなと思ったり。
そういう人もいるかなみたいな。
そんなときもありますもんね。
又吉さんレビューとかご覧になるんですか?ご自身の著作の。
あの一作目の時はすごい見ましたね。
へぇ〜!はい。
でチェリー・ピッキングしちゃう?チェリー・ピッキングかなりしました。
(笑い声)ええ。
もっともらしい通説と同じくらい私たちが影響されるのが「成功した人の経験談」。
息子をいい大学に入れたという話気になりますよね。
でもこれ因果関係はあるのでしょうか?成功した人の体験談というのを一般化するっていうのは私はこれは大変難しい事なんじゃないかなと思うんですよね。
私親しい友人の1人に元オリンピアンだった為末大さんがおられるんですけど為末さんがよくおっしゃっているのは……っていうことなんです。
これはやっぱり非常に含蓄のある言葉だなと思っていてすごく成功した人がいたとしてその人のまねをして同じように成功できるのかと言われるとこれはやっぱり非常に難しいことなんじゃないかなと思うんですよね。
…という問題点があるんだろうと思いますので我々経済学者はどうしてるかと言いますと1人の個人の体験というものを大量に観察してその中から見いだされる規則性ってのはないんだろうか?その時に2つの出来事の間に関係が無いかということを統計的に科学的な方法を使って検証しようというふうにしてるということなんです。
確かにこれを読めば君も作家になれるみたいな本を読んで作家になりましたっていう作家にまだ出会ったことないですもん。
そうですね。
でもおるんやろうな。
うん。
いやいるのかな?おらんこともないんやろうな。
ただそこに因果関係が無いだけ。
おっしゃるとおりですね。
はい。
原因と結果を正しく見極める「因果推論」。
なぜ経済学が注目するのでしょうか?やっぱり原因と結果がわかっていないとお金と時間を使うときに無駄になっちゃうんじゃないかっていうふうに我々経済学者はとても心配してるんですね。
例えば「こういうものを食べると健康になれますよ」と言われていたとしてその間に因果関係が無くて全然健康になれない食べ物に大量にお金を使ってしまったとするとこれお金の無駄遣いというふうになってしまって結局健康がよくなるということは達成されないわけですよね。
なので……のではないかというふうに考えたんですね。
あ〜。
僕ギャンブルやるんですけどそういう因果関係に基づいたらギャンブルやらないほうがいいってなりそうですね。
大本にたどりつくかもしれんな。
だって自分が絶対に勝てるっていう法則ってなかなか難しいですよね。
やらないほうがもうかるってなりそうですね。
そうですね。
あるいは他にもっと有効なお金の使い方があるということはあるかもしれませんね。
はい。
そうかぁ。
だから原因と結果が関連してるかどうかを知るっていうのは重要だと。
おっしゃるとおりです。
う〜ん。
ああこれもう今…もっと若い頃に聞きたかったなぁ。
(笑い声)この37僕37ですから37年間間違ってた可能性があることに今気付いたらそのショックで今後やっていけない。
でもその原因と結果ばっかりにやっぱお金使わずに自分の楽しいことにお金使おうって思ってもそのお金の使い方は楽しいに結びつくのかっていう原因と結果になりそうですね。
そうですね。
だから楽しいことにお金を使うというのは「楽しい」が結果なのでそれはそれでまたいいんだと思うんですけれども「もうかる」に設定すると多分もっと他にいい投資先があると思います。
そうですね。
はい。
でもギャンブルをすることが楽しいということなのであればギャンブルのほうがいいっていう事は。
半々ぐらいなのか?いや。
え〜とね負けるとね楽しくなくなりますよ。
あ〜そうやな。
はい。
それはそうですね。
人間には「損失回避」というその心の動きがありますのでもうかったときよりも損したときに「あ〜」っていう。
負けても楽しかったら一番いいですけどね。
そうですね。
そうやな。
ああ僕たちはどうしたら原因と結果の関係を正しく知ることができるのだろうか?ああ。
実はですね因果関係を明らかにするときに私たちが非常に大切にしている考え方がありましてそれが「反事実」という言葉なんです。
ほう。
このように書きます。
事実の反対という意味ですね。
事実ではないっていう事ですか?事実の反対です。
事実の反対?例えばですけどこんなふうに考えたりしませんかね?「もし芸人にならなかったら今自分は何をしていたんだろう?」。
それは反事実?反事実です。
考えますね。
そういうの考えますよね。
「もし今彼女とつきあっていなかったら何をしていたんだろう?」。
「もし今転職していなかったらどれぐらいの収入を稼いでいたんだろう?」とかそういうことをやっぱり私たち考えると思うんですけどもこの因果関係を明らかにする時に我々が実は作り出さなければいけないというものがこの反事実なんです。
…ということ。
例えばテレビを見ることと学力の因果関係を確かめるには?ある子どもがテレビを見た場合の学力とその反事実まったく同じ子どもがテレビを見ないで過ごしたときの学力を比較すればいいのです。
あれ?でもそんなのできるの?まあ例えばタイムマシンがあるとか例えばコピーロボットがあるとかそういう事があればですね「もし自分が今これをしなかったらどうなってたんだろう?」って事を再現できるわけですけれども現実にはなかなかこんな事って難しいわけなんですよ。
できない。
はい。
でも因果関係というのは結局のところ事実と反事実の比較なんです。
(2人)う〜ん。
じゃあできないってことですか?そうなんですね。
ですのでこの因果推論という考え方を提唱したドナルド・ルービンというハーバード大学の統計学者はこの反事実の考え方を「因果推論の根本問題」というふうに言ってどこまで行っても実は私たちはこの反事実というものを明らかにすることはできないって言うんですね。
そうっすよね!テレビを見る時間と学力の因果関係。
どうすればわかるのでしょう?別の子どもで比べるのは意味がありません。
なぜならテレビを見る時間以外の環境が異なりそのことが学力に影響している可能性を取り除けないからです。
理想は同じ子どものコピーを作って片方を反事実の状態にして比べること。
これにどうすれば近づけるか。
うん。
そこで経済学者はたくさんの人を集めて似たような集団を作り片方だけを反事実の状態にして比べるということを思いつきました。
アッタマイー!その一例を中室先生が見せてくれました。
こういうことを実は大学でやってみたんです。
これ何だかわかります?パン。
そうですねこれパンの上に「単位」って書かれてるんですけれども。
これ実は生協で期末試験の前に必ず売り出されるパンなんです。
(2人)へぇ〜!「単位パン」って言うんです。
単位パン?何をヘラヘラしながら言ってるんですか?
(笑い声)こちらはこのキャンパスの大学生協。
えっと「単位パン」「単位パン」って。
あれ?売ってない。
それもそのはず。
このパン試験前だけに売り出される大学生協オリジナルのパンなのです。
(河本)特に期末の時期に増えるんですけれども単位を売ってくれというご要望がかなりこちら慶應以外にも慶應だけに限らずですね寄せられてきておりました。
そんな声があった中でこういうふうに焼印を押したらどうかということで始まったものです。
学生たちの切なる願いから生まれた単位パン。
「これを食べると単位が取れる」。
この通説は正しいのか!?金曜日の午前中とかに売り出されて午後に行くともう無いっていうぐらいの超生協の超人気商品です。
これを食べると単位が取れるんだっていう?ふうに思われてる?言われています。
ああ。
皆さんは単位パンはご存じですか?
(一同)はい。
これはやっぱり人気があるんですか?
(一同)はい。
そうなんや。
なのでこの単位パンを使ってですね単位パンを食べると単位が取れるのかっていうことを検証してみようと。
ということで大実験!国際開発論という授業をとっている学生さんを2つのグループに分けて単位パンを食べるグループとその反事実食べないグループで中間テストの成績を比べま〜す。
ここで先生ある指示を出しました。
出席番号の下一桁が奇数の方は右側のほうに座ってください。
そして出席番号の下一桁が偶数の方は左に座ってください。
ちょっとご協力を頂きます。
学籍番号下一桁の偶数奇数でグループ分けをしました。
一体どうして?本学のその出席番号っていうのはアイウエオ順で名字のアイウエオ順で決まっていますので出席番号の下一桁が偶数か奇数かってこれは完全に偶然ですので……というふうに考えられるんですね。
ランダムというのはこれ日常的にも使うかもしれませんけれどもでたらめとかそういう意味ではなくて無作為っていう意味なんですね。
無作為にこう割り付けをするというような意味でランダムにこう2つのグループに分けるとですね十分に数が多ければ成績がいい人の数だったりとかあるいは非常にこう熱心に授業を受けている人の数だったりってのが大体こう同じになるように調整されるわけですよね。
人が多ければ多いほどそうですよね。
そうですよね。
はい。
なのでこの2つのグループは私たち専門用語で「比較可能」などと呼ぶわけですけれども非常によく似た2つのグループが出来上がるので…この単位パンを食べなかったグループは反事実を現しているというふうに考えることができるというわけなんです。
学籍番号でランダムに分けられた2つのグループ。
勝ったほうのグループにパンを食べて頂きます。
いいですか?はい。
最初はグー。
ジャンケンポン。
偶数グループが単位パンをゲット〜!うふふっ。
皆さんちょっとうれしそう〜。
うふふっ。
単位パンいいですね!ちなみに中身はクリームがたっぷり。
そのお味は?
(学生)結構おいしい。
普通に。
(取材者)お味はいかがですか?
(学生)おいしいです。
単位来そうな気がします。
(笑い声)それでは中間テスト始め!これガチなやつです。
果たして成績に差は出るのでしょうか?お二人の予想はいかがですか?これでも俺は単位パンを食べたんだっていう自信で…。
あ〜。
解けるようになるみたいのもあるんじゃないですか?なるほど。
そういう効果が表れる可能性はゼロではないですね。
はい。
「プラセボ効果」と言ってただ水を飲んだだけなのに薬だと勘違いして病気が治ったという研究は実際にありますのでそういう可能性はゼロではない。
ありそうですよね。
おや?パンを食べたグループのほうがちょっと点数高い?でもこれ誤差の範囲。
残念ながら差がなかったという結果になりました。
ですので単位パンと単位の間には因果関係は無いと。
売店からクレーム来ないですか?心配ですね。
生協さん笑って許して!ごめんちょ!今「ランダム化比較試験」という方法をご紹介したんですけれどもこれいつでも何でもできるっていうわけじゃないんですよね。
例えばですけど肺がんとタバコの間の因果関係を知りたかったからといってランダムに2つのグループに分けてあなたじゃあしたからタバコ吸ってください。
あなたはあしたからタバコを絶対吸ってはいけませんなんていう実験は絶対できないですよね。
こういうように実験がやっぱり倫理的に不可能な場合に私たちは「自然実験」っていう方法を使うことがあるんですね。
これはわざわざランダム化比較試験のように実験をやった訳ではないんですけれどもあたかも実験が行われたかのような状況が再現されているというそういう状況を統計的に捉えるという方法なんですけれども。
例えば先ほどのテレビの例で言いますとアメリカにはかつてですねテレビの放送免許を取らないとテレビが放送できなかったっていう時代があるんですけれども。
その偶然ある時期にテレビが見れた地域と放送免許がストップしてテレビが見れなかった地域ってのが出てきたんですね。
1948年から52年までアメリカのある地域で放送免許が凍結されテレビを見ることができなかった子どもたちがいました。
一方で普及したてのテレビに夢中で一日平均3時間半見ていた子どもたちも。
小学校に入った時の学力を比較した結果?「テレビを見ていた子どもたちのほうが偏差値が高かった」という結果が出ました。
すごいなそんな偶然。
まあこれは……ということになります。
自然実験的な環境というものを利用した研究というのは最近進んできてるんですけれども例えばですね今育休というものを育児休業というものを延長したらいいんじゃないかという議論が政府のほうから出てきてるんです。
認可保育所に入れない待機児童問題。
退職せざるを得ないケースも出るなど女性の復職を妨げています。
そこで政府は育児休業が1年半たった時点で保育園などに入れない場合さらに半年延長できる法改正をこの秋行います。
「女性が復職しやすくなる」というのが政府の考えなのですが…。
実は海外には育児休業というものを延ばすとお母さんたちの復職率が高まるかどうかってことを既に調べた自然実験がありまして。
これはどういう自然実験かと言いますと子どもが生まれた時の差に注目してるんですけれどもその法律が施行されたある年の6月生まれの子まではお母さんの育休ってのは1年しか取れなかったんです。
なんですけれど7月以降に生まれた子どもっていうのはお母さんの育休が2年取れると。
ほう。
オーストリアでは1990年7月1日からそれまで1年だった育児休業期間を2年に延長しました。
研究者はほとんど同じ時期に出産したのに育休期間が違う両者に注目。
6月に出産した育休1年の母親と7月に出産した育休2年の母親の復職率を比較しました。
その結果…おやっ?育児休業が延びるとお母さんの復職率はかえって下がってしまうと。
はぁ〜。
はい。
これがなぜなのかと言うとですねやっぱり育児休業が延びてしまうとその分だけ自分のスキルだったり人間関係というのはどんどんこう減耗してしまう。
だんだん職場に戻りにくくなってしまって結局離職してしまうということがあるのではないかというふうに言われていて私はこの事例は非常に重要だと思うのは因果関係をちゃんと検証しないとですね……っていうことがやっぱり心配なんですね。
はいはい。
その結果っていうのは結局反映されたんですか?政策に。
オーストリアのほうはそうですけれども日本のほうではなぜか育休の延長ということはいまだ議論されていること…。
なぜかですよね。
結果を検証しないのによく延ばしたほうがいいんじゃないかって言う人がいますよね。
そうですね。
ですのでこれは経済学の研究者が最近非常によく言う「科学的根拠に基づく政策」というのはそういうことでして……っていうことだと思うんですね。
原因と結果いろいろ見てきましたけどどうでした?何の根拠もなくねえ考えてた自分の主観に基づいた考えみたいなのいっぱいありましたね。
いろんな情報を雑誌とかテレビとか僕らは得るじゃないですか。
人から聞いたりとか。
それってもう自分のとこに届く時には原因と結果がちゃんと因果関係があるものとして届いてるって思いがちですけどもうちょっと疑ってみてもいいんかもしれないですね。
その時に「反事実を想像する」っていうのは我々が日頃からトレーニングしとかなきゃいけないことなんじゃないかなと思うんですよね。
「テレビを見ていて学力が低いうちの子がもし今テレビを見なくなったらどうなるんだろう?」っていうふうに考えると直ちに勉強できるようになるわけじゃないっていうことぐらいは何となく想像できそうですよね?だからやっぱりこう反事実をちゃんと適切に想像できていればその簡単に因果関係があるんじゃないかなというふうには想起しにくくなりますのでこの原因と結果そして反事実という言葉をぜひ記憶にとどめておいて頂ければ大変うれしいですね。
ああ反事実ね。
そうですね。
これがあるとだいぶ考えやすい。
だいぶ違うと思いますね。
ありがとうございました。
ありがとうございます。
ありがとうございました。
2018/01/19(金) 00:30〜01:15
NHKEテレ1大阪
オイコノミア「分かって得する!原因と結果の経済学」[解][字][再]

テレビを見ると学力が下がるってホント?もっともらしい通説に惑わされると時間もお金も損しちゃう!原因と結果を正しく見極める、とっておきの方法を経済学が伝授!

詳細情報
番組内容
東大医学部に息子たちを入学させたお母さんの体験談、これを真似すればうまくいく?飲食店での喫煙を禁止すると売り上げが減る?こうした話は正しいのか、原因と結果を見極める力が、今の日本の教育では得られにくい。そこで、簡単に応用できる「原因と結果を見破る方法」を中室牧子慶大准教授と身に付ける。間違った通説を信じると、時間や労力が無駄になることも。通説に惑わされずに、賢く生きるヒントが満載。
出演者
【ゲスト】岩井勇気,【出演】又吉直樹,【解説】慶應義塾大学総合政策学部准教授…中室牧子,【語り】朴ろ美

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
趣味/教育 – 生涯教育・資格
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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