初場所5日目からの休場を発表した白鵬〔PHOTO〕gettyimages
メディア・マスコミ 大相撲

白鵬はなぜ過剰に叩かれるのか?世間と報道がつくる「大相撲の虚像」

相撲ファンが何よりつらかったこと
昨秋から年明けまで不祥事が続いた大相撲。熱心なファンとそうではない人々の深い溝はなぜ生まれたのか? 初場所初日はどのような雰囲気だったのか?

話題書『のこった もう、相撲ファンを引退しない』著者で小説家の星野智幸さんが、いま大相撲に対する思いを余すことなく書ききったエッセイをここに公開!

「不祥事言及なし」は大歓迎

大相撲初場所、初日。

国技館の出入り口付近は、例によって力士の入り待ちのお客さんたちでひしめいている。

また一段と女性の割合が多くなっている印象。稀勢の里ブームのころはおじさんも多かったが、この日は私の感覚では7割以上が女性だった。

いつもと違うのは、その周辺にメディア、特にテレビ局のカメラがうろうろしていて、相撲ファンたちにインタビューしていることだ。

「いい加減、落ち着いて相撲を見たいです」と答える女性の声が聞こえてくる。

館内に入っても、女性のお客さんが目立つ。場所を追うごとに女性率は上がっている気がする。

〔PHOTO〕gettyimages

かくいう私も、スー女(相撲ファンの女性)仲間と観戦に来た。

メディアは注目しているだろう八角理事長の年頭の挨拶は、一連の「不祥事」には触れなかった。

「どうせ明日のメディアは、謝罪がなかったって書き立てるんだろね」
「謝罪すればしたで、何か足りないって叱るんだよ」
「謝罪しても批判、しなくても批判」

こういう会話ができることが、何よりも気を楽にしてくれる。

そして見事に翌日の新聞は「謝罪がない」と叱っていた。私の購読している朝日新聞の見出しは、「不祥事言及なし」「満員の国技館 決意語らぬとは」だった。

 

しかし、私たちファンの間では、不祥事に触れなかったことは大歓迎だった。

なにしろ、2ヵ月の間、毎日毎日、大半はどうでもいい相撲バッシングのニュースを見聞きさせられ続け、ファンもひどく傷ついてきたのだから。

初日の今日はもうそんなことから離れて相撲を純粋に楽しみたい、という気分で、わざわざお金と労力をかけて国技館に来ているのである。

「世間」が要求する「反省」など、もうたくさん。

すでに一連の処分は出たのだし、これから外部の有識者によって再発防止の改善策を検討していくのだから、場所中は相撲に集中して当然なのだ。

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