2014年7月5日 日経新聞

 就活を見据えてインターンシップ(就業体験)に応募する学生が増えている。ただし社会人と接するための「マナー」に自信のない人も多いのではないだろうか。マナーはインターンの選考面接や、実際のインターン中にも必要な必須スキル。しっかりとした立ち居振る舞い、爽やかなマナーを身に付けていたら、好感度は確実にアップする。自信を持って振る舞えるマナーの基礎を井垣利英さんに聞いた。




レッスン1: 感じがいい「基本のしぐさ」


 まずは基本の立つ、座る、お辞儀、話すといった動作を、感じよく見せるコツをマスターする。



【1】立つ姿勢
頭の上を糸で吊られているイメージで


 キレイな姿勢で立つには、「頭の上を糸で引っ張られていて、体に芯が1本入っている」とイメージするとわかりやすい。「このイメージで背すじを伸ばすと、自然に肩が落ち、胸が開いてスッキリした姿勢になります」(井垣さん)

 ただ、真っすぐな姿勢を意識しすぎると、肩や腰に変な力が入ったりすることも。硬くなってしまうと、相手にも緊張感を与えるので、体に芯が通っていることにだけ気をつけて、手や腕はゆったり構えよう。


図1 立つ姿勢(中)と、お辞儀の姿勢(左)。猫背に注意。腹筋に力が入っていないと、猫背になってしまい、だらしない印象に(右)
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図1 立つ姿勢(中)と、お辞儀の姿勢(左)。猫背に注意。腹筋に力が入っていないと、猫背になってしまい、だらしない印象に(右)


■背すじは真っすぐ腕はゆったり

 横から見て、耳・肩・腰・膝の横・くるぶしが一直線になるのがベストだが、意識しすぎない程度に。肩の力を抜き、手は自然に横に下ろすか、前で軽く重ねる(図1中)。


図2 [右] 首だけ曲げて頭をペコリと下げるのは、丁寧さに欠けて見える [左] 足を止めずにお辞儀するのは、おざなりな印象。きちんと立ち止まってお辞儀を
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図2 [右] 首だけ曲げて頭をペコリと下げるのは、丁寧さに欠けて見える
[左] 足を止めずにお辞儀するのは、おざなりな印象。きちんと立ち止まってお辞儀を


【2】お辞儀をする
ちゃんと立ち止まって腰から折るように


 お辞儀の一番のポイントは、「きちんと立ち止まってから、頭を下げること」。歩きながら頭を下げるのでは、いい加減な印象を与えてしまう。また、頭を下げるときは、頭だけペコリはNG(図2)。背すじを伸ばしたまま腰から、体を2つに折り曲げるイメージで上体を傾けると、丁寧なお辞儀になる。

■首は曲げずに腰からお辞儀

 上半身は腰から傾けて、呼吸2つ分で頭を上げる。視線は自分の足元ではなく、相手の足元に落とす(図1左)。

【3】座る姿勢
背すじを伸ばし手と脚にも気配りを


 座っているとき上半身は、立った姿勢と同じように背すじを伸ばす。背もたれからこぶし1つ分くらいのスペースを空けて座ると、姿勢よく座りやすい(図3)。

 手は指先をそろえて、太ももの上で軽く重ねよう。両脚はきちんとそろえて体の正面に。斜めに流したり、脚を組んだりするのはNGだ。


図3 椅子の背もたれとの間を、こぶし1つ分空けて座る。脇は卵1つ分くらい空ける。手は指先までそろえ、軽く重ねて太ももの上に。指組み、指先バラバラ、ダランと膝の上に置くのはいずれもNG
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図3 椅子の背もたれとの間を、こぶし1つ分空けて座る。脇は卵1つ分くらい空ける。手は指先までそろえ、軽く重ねて太ももの上に。指組み、指先バラバラ、ダランと膝の上に置くのはいずれもNG




【4】話し方
顔の筋肉をフルに使って表情豊かに話そう



図4 鏡を見ながらしゃべってみよう。このくらいしか口が開いていなかったら要注意。頬の筋肉がダランと伸びていると、硬くて怖い表情になる
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図4 鏡を見ながらしゃべってみよう。このくらいしか口が開いていなかったら要注意。頬の筋肉がダランと伸びていると、硬くて怖い表情になる

 話すときに大切なのは、顔の筋肉、表情筋をきちんと使って話すこと。表情はもちろん、声のトーンも変わってくる。

 「図4のように、頬の筋肉がうまく動いていないと、声がこもりがちに。口だけが動いていて目が笑っていないと不機嫌な印象を与えます。顔の筋肉は、自分が思っているほどは動いていないもの。電話で話しているときに、顔を鏡でチェックすると、よく分かります」(井垣さん)

 表情豊かに話をするには「あいうえお」の口をしっかり開けるように心がけること。「こんなに大きく口を開けていいのかと思うくらいで、ちょうどいいんです」(井垣さん)


表情豊かに話すためのレッスン
●「い」「う」体操で笑顔の練習
 普段から表情が硬い人は、「い」と「う」を30回くらい交互に続けると、表情筋のトレーニングになる。コツは、首に筋ができるくらい思い切り「いー」、これ以上すぼめられないくらい思い切り「うー」の表情を繰り返すとよい。
●顔の筋肉を動かすと目もイキイキ
 頬にタコ焼きのような膨らみをつくるイメージで、頬全体の筋肉を動かして話すと、イキイキした表情に。目も自然に笑った表情になる。





【5】話す目線
基本は相手の目を見て。上手なそらし方も覚えよう


 話すときはきちんと相手の目を見ることが基本。でも、考えるときなど、常に相手の目を凝視したまま話すわけにもいかない。

 そんなときは、「相手の顔の、目の高さと喉元のへこみとを結んだ逆三角形のゾーン」の中であれば、目線を動かしても相手には「目を見ながら会話をした」という印象を与えることができる。


図5 [右] 考えるときに白目をむいてキョロキョロ……は落ち着きがない印象
[左] 視線を落とすなら相手の手元を見ると、あまり印象が悪くならない
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図5 [右] 考えるときに白目をむいてキョロキョロ……は落ち着きがない印象
[左] 視線を落とすなら相手の手元を見ると、あまり印象が悪くならない

レッスン2:実践・面接の流れとマナー


 実際の面接で慌てないよう、面接の流れに沿って、気をつけたいポイントを解説。予習はこれでバッチリ。


【1】入室

 面接が行われる部屋に入る際、ノックは部屋の中にいる採用担当者に聞こえるくらいの大きさで、人さし指か中指の第2関節で軽く2度たたく。手を握ってドンドンはNG(図6右)。

 ドアを開閉するときは、片手でノブを握っていきなり開けるのではなく、もう片方の手をドアに添えて静かに開け閉めすると、丁寧な印象に(図6左)。


図6
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図6


【2】挨拶とお辞儀

 入室したら、正面を向いて立ち、まず笑顔で相手とアイコンタクト。相手が複数並んでいるときは、全員の顔をざっと見渡す程度でOK(図7)。

 面接は最初の印象が肝心。うつむき加減で入室したり、視線を合わせずあいさつしたりするのは暗い印象になるのでNG。


図7 まず笑顔でアイコンタクトし、「失礼します」とお辞儀
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図7 まず笑顔でアイコンタクトし、「失礼します」とお辞儀


【3】自己紹介

 第一声は、とにかく元気にを心がけて。「○○大学の●●と申します。よろしくお願いいたします」と明るい声で言おう。

面接で気になる3つのこと Q&A


Q.かばんを持ち込む場合、どこに置いたらいい?

A.バッグは床に置く

 かばんは足元の「床」に置くこと。かばんは「土足」と同じと覚えておこう(図8)。机の上や隣の椅子の上に置くのはNG。また、バッグを持って入室する際、肩にかけたまま部屋に入ってはダメ。バッグの持ち手を握って入室するのが礼儀。


図8 鞄は床に置く
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図8 鞄は床に置く



図9
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図9


Q.身だしなみで特に気をつけることは?

A.体の先と足の先に注意

 部屋に入った瞬間、採用担当者の目にパッと飛び込んでくるのは、体の先と足の先、つまり髪形と靴。特に靴は、意外に相手の目に付きやすいアイテム。靴先が擦り切れていないか、ヒールの底が減っていないか、かかとの革がささくれ立っていないかなど、事前にチェック(図9)。しっかり磨いておこう。


Q.敬語がちゃんと使えるか不安……

A.よく使う言葉だけで言い換えを

 面接の会話の中でよく出てくる以下の言葉だけでも、ビジネス用語に言い換えられるよう、練習しよう。


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