マクラーレンの新型スーパーカー「セナ」は、まさに「100万ドルのミニマリズム」だ

伝説のF1ドライヴァー、アイルトン・セナの名が授けられたマクラーレンの新型スーパーカー「セナ」。公道を走れるレーシングカーの極致を目指したこの車は、100万ドルという価格に対して装飾はおろかエアコンもない。そんな「究極のミニマリズム」ともいえるスーパーカーを紹介しよう。

TEXT BY ALEX DAVIES
TRANSLATION BY KENJI MIZUGAKI/GALILEO

WIRED(US)

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    1/6伝説のF1ドライヴァー、アイルトン・セナの名を授かったマクラーレンの最新モデルは、「100万ドルのミニマリズム」を体現している。IMAGE COURTESY OF MCLAREN

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    2/6装飾は一切ない。エアコンもない。荷物を積むスペースも、サーキットに着いたらすぐに走行を始めるために必要な、ヘルメット2個とレーシングスーツ2着が何とか収まる大きさしかない。IMAGE COURTESY OF MCLAREN

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    3/6「公道を走ることができるレーシングカーの極致」と呼べるものを作ろうとするとき、重さは一番の敵になる。IMAGE COURTESY OF MCLAREN

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    4/6ドアの下半分については、カーボンファイバーに代えてガラスを選択することもできる。IMAGE COURTESY OF MCLAREN

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    5/62つのカーボンファイバー製シートの背後に置かれた4.0リッターV8エンジンは789馬力を発生する。セナの車重はたったの2,461ポンド(1,116kg)だ。IMAGE COURTESY OF MCLAREN

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    6/6マクラーレン・セナは、2018年3月のジュネーヴ・モーターショーで正式にデビューする。IMAGE COURTESY OF MCLAREN

何かに100万ドルも払えば、あり余るほどの贅沢な買い物ができる。たくさんのダイヤモンドを散りばめたネックレス、山ほどのベルーガキャヴィア、あるいは大勢のInstagramのフォロワーなどが手に入るだろう。

だが、買おうとしているのがマクラーレンの新型スーパーカー「セナ」だとしたら──。100万ドルと引き換えに手に入るのは、いかにもスーパーカーらしい贅沢三昧のクルマではない。

伝説のF1ドライヴァー、アイルトン・セナの名を授かったマクラーレンの最新モデルは、「100万ドルのミニマリズム」を体現している。装飾は一切ない。エアコンもない。荷物を積むスペースもごくわずかだ(サーキットに着いたらすぐ走行を始めるために必要な、ヘルメット2個とレーシングスーツ2着が何とか収まる大きさしかない)。シートやダッシュボード、サイドエアバッグを覆う皮革も、必要最小限に抑えられている。

贅沢な装備が徹底的に省かれたのは、それらすべてに共通の難点、つまり重量がかさむという問題があるからだ。「公道を走ることができるレーシングカーの極致」と呼べるものをつくろうとするとき、重さは一番の敵になる。たった1オンス(約28g)重くても、エンジンの出力はその分だけ浪費され、ブレーキはより強く踏まねばならず、コーナーを通過するのもほんの少しだけ難しくなる。

では、「セナ」に100万ドル(オプションなしのベース価格)を支払ったオーナーに、マクラーレンは何を提供してくれるのだろうか。それはもはやクルマというより、あきれるほど強烈なパフォーマンスそのものだ。

2つのカーボンファイバー製シートの背後に置かれた4.0リッターV8エンジンは、789馬力を発生する。この数字を見る限り、全開加速で前輪が宙に浮く「ダッジ・チャレンジャー SRT・デーモン」[日本語版記事]ほどの怪物的なパワーではない。

しかし、セナの車重はたったの2,461ポンド(1,116kg)で、対するデーモンの車重は2トンを上回る。単純計算で2倍近い加速力をもつことになるのだ。

マクラーレンは、0-60mph(約時速97km)の加速や最高速のような詳細を一切明らかにしていないが、その数字が3秒以上、あるいは200mph(320km/h)以下であれば、いい恥さらしと言わねばなるまい。セナがパワーウエイトレシオで肩を並べるとされる、フェラーリのラ フェラーリ(価格もほぼ同じ)は、0-60mphの加速は2.4秒、最高速は205mph(328km/h)に達する。

マクラーレンが500台だけ限定生産する100万ドルのクルマの外観が、ウッドチッパー(木材粉砕機)に巻き込まれて全身を切り刻まれたかのように見えるのを、不思議に思う人もいるだろう。その答えはエアロダイナミクスにある。

セナのボディのいたる所に配されたエアヴェントやインテークは、あの手この手でうまく空気を流すためにあるのだ。もちろん、それにはラジエターやエンジンベイから熱気を排出することも含まれるが、ほかの大部分はダウンフォースを生み出すことを目的としている。

これほどのパワーがある場合、重要なのは空気抵抗を減らすことよりも、空気の流れを巧みにコントロールして車体を地面に押し付ける方向へ導き、車が浮き上がらないようにすることだ。これがうまく行けば、まさに飛ぶような感覚でドライヴできる車になる。

逆に失敗すると、出来上がるのは設計がよくない飛行機だ。その理屈さえわかれば、車体後部の地面から4フィート(約1.2m)のところに、巨大なリアスポイラーがそびえ立っているのも納得がいくだろう。

マクラーレン・セナは、2018年3月のジュネーヴ・モーターショーで正式にデビューする。さらなる詳細が伝わってくるかもしれないが、すでに確かなことがある。もしあなたが自宅のガレージにこのクルマを収める500人のひとりなら(納車時期は未定)、きっとあり余るほどの楽しみが得られること。あるいは少なくとも、ものすごい注目を浴びるに違いないということだ。

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