2018年(平成30年) 1月18日

社説

社説[高江の検問違法]「過剰警備」への警鐘だ

 米軍ヘリパッド建設に反対する市民を支援する弁護士が、警察官に車の通行を制止されたなどとして国家賠償を求めていた訴訟で、那覇地裁は県警の違法性を認め、県に30万円の支払いを命じた。

 工事期間中、現場周辺では節度や抑制を欠いた警備が目立ち、反対派住民からは「公権力の濫用」との批判が絶えなかった。司法の場で違法性が認定されたことを県警は重く受け止めてもらいたい。

 ヘリパッド建設が進んでいた2016年11月、東村高江の県道で実施された検問を巡る裁判である。

 弁護士の男性は、警察官に車両の通行を2時間余り制止された上、承諾なくビデオ撮影されたことに精神的苦痛を受けたとして慰謝料の支払いを求めていた。

 争点は車両制止とビデオ撮影が適法だったかどうか。

 裁判所はいずれも原告の自由を制約するもので、警察官職務執行法(警職法)や警察法に照らしても正当化できず、違法と認定した。

 警職法5条には「警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは…制止することができる」とあるが、判決は弁護士の言動や服装から「犯罪行為に及ぶ具体的蓋然(がいぜん)性があったと認めることはできない」と結論付けた。

 さらに「抗議参加者であるとの一事をもって、犯罪行為に及ぶ具体的蓋然性があると判断することは合理性を欠く」とも指摘する。

 警職法は警察権力の拡大を防ぐために厳格な要件を課している。適法に抗議する市民を犯罪者予備軍扱いするようなことがあってはならない。

■    ■

 もう一つの争点である警察官によるビデオ撮影について判決は、許容できるのは「犯罪が発生する蓋然性」「証拠保全の必要性と緊急性」「方法に相当性」がある場合とする。だが今回はどの要件も満たしていないと判断した。

 警察官がデモを写真撮影したことの是非が問われた京都府学連事件で、最高裁は1969年、憲法13条を根拠に肖像権を認める初の判決を出した。デモ行進に参加している人たちであっても「みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由」を認めたのである。

 那覇地裁の判決はそこまで踏み込んでいないが、警察官のビデオ撮影は承諾なく容貌を撮影されない自由を制約するもので、憲法に抵触する可能性が強い。

 名護市辺野古の新基地建設の抗議現場では今も警察官が参加者にカメラを向け続けている。抗議行動を萎縮させる人権侵害の疑いが残る。

■    ■

 裁判を通して明らかになったのは、当時の警備の過剰さである。

 実際、高江周辺では法的根拠のない車両検問、市民テントの強制撤去、道路の封鎖などが繰り返された。

 高江のヘリパッド建設や辺野古の新基地建設は、安倍政権の重要課題と位置付けられており、強引な法解釈や解釈変更による工事の強行が目立つ。

 政権の強行姿勢が現場の過剰警備につながっている側面があるのではないか。 

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