【シリコンバレー=中西豊紀】米グーグルは17日、クラウド経由で企業が簡単に人工知能(AI)を活用できるサービスを始めると発表した。専門家がいない企業でも自社のニーズに適した画像分析のAIシステムを簡単につくれる。グーグルのサービスを契機にAIの活用が普及し、個人・法人を問わず日常的にAIを利用するようになりそうだ。
新サービス「クラウドオートML(機械学習)」を17日朝から一部顧客を対象にサービスを始めた。順次対象を広げる。料金は公表していない。第1弾として、高度な画像認識システムを簡単に作れるサービスをクラウドで提供する。大量の画像の中から、複数の条件に基づいて特定の画像を見分ける作業などに使える。
数千から数万枚の画像と専用のプログラムが必要だった画像検索システムを、わずかな画像をクラウドに送るだけで組み立てられるという。例えば、大量の画像のなかから特定の車種の画像を抽出するシステムを、最少で100枚の写真だけで構築できる。
従来はAIの専門家がAIの機能をプログラミングで作ったうえで、大量のデータを読み込ませて学習させる必要があった。グーグルはこのプログラミングの手間を大幅に省くソフト「テンサーフロー」も無償で提供しているが、専門家による作業は必要だった。
グーグルや米アマゾン・ドット・コムや米マイクロソフト(MS)などのクラウド大手は音声や画像を認識したり、文章を自動で他の言語に翻訳したりする機能を持つ「学習済み」のAIもクラウドで提供している。ただ機能は限られており、企業の多様な画像認識ニーズに対応するのは難しかった。
同日に記者会見したグーグルのAI部門の開発責任者フェイフェイ・リ氏は「現状では人と予算を持つ限られた企業しか質の高いシステムを構築できない。誰もがAIに触れられるようにするのがグーグルの使命だ」と話した。
グーグルによると高度な知識を擁するAIの研究者は世界に数千人しかおらず、データサイエンティストも100万人に満たない。こうした供給側の限界をクラウドで解消しようというのが同社の戦略だ。
クラウド基盤の提供ビジネスではアマゾンを筆頭にMSやグーグルが市場を席巻している。なかでもアマゾンの「AWS」はサービスのきめ細かさや料金の安さで他を圧倒しており、首位を独走している。グーグルは自社が優位とされるAIをクラウド経由で積極的に提供することで差異化を図り、クラウド基盤サービスのシェアを拡大したい考えだ。