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楽天の「楽天市場」 〝ルール違反〟店舗対策を本格化、規約違反に「点数」、累積で退店も

012.jpg 楽天が、仮想モール「楽天市場」でルール違反を繰り返す店舗への対策を強化する。ルール違反を犯した際に点数を付与し、累積点数によって罰則を課す制度や、店舗レビューで低い評価をしたユーザーに不満点を聞き取り、原因が店舗にあると判断した場合のペナルティーを設ける。店舗には6月2日に一斉に通知、両制度とも9月1日から開始する。"不適切"店舗の排除で同モールのさらなる質向上につなげる狙いだ。

 ここ数年、楽天市場の「安心・安全」関連施策を進めている同社。2014年に「品質向上委員会」を設立し、価格表示を統一、各種ルールを設定した。昨年はブランド模倣品対策を強化。同モール利用者向け補償制度「楽天あんしんショッピングサービス」において、ブランド模倣品補償を追加した。連携するブランド権利者はこの1年で急増し、1139にのぼっている。

 三木谷浩史社長は、2016年の楽天市場のテーマについて、年初の講演で「クオリティー」とした。今年1月からは、ショップレビューで低い評価(5段階評価で3未満)をしたユーザーに対し、投稿から短時間でカスタマーサービスが電話をかけて、不満点を聞き取るサービスを始めた。ユーザーの声を受け、改善を進めることでショップレビューの平均点数が向上しており、新規ユーザー獲得や継続利用につながっているという。

 こうした施策を実施する中で、「ほとんどの店舗はきちんと運営しているが、数%の店舗が問題のある行為を繰り返していることが分かった」(河野奈保上級執行役員)。そこで、より出店店舗のクオリティーを高めるための施策を始める。

 まず、低レビューユーザーへの聞き取り施策について、一歩踏み込んだものとする。ショップレビューに投稿された、店舗起因とみられるユーザーからの意見について、より詳細な状況・事実確認を行う。

 1月から始めた聞き取りサービスだが、河野上級執行役員は「電話を受けて最初は驚く人もいるが、多くの人は低評価の理由をきちんと答えてくれるし、プラスの反応がほとんど」と話す。電話やメールなどでユーザーから低評価の理由を聞き取り、これを受けて楽天のECコンサルタントが店舗に連絡、改善活動を行うというサイクルだ。「当該ユーザーが、電話を受けた後も楽天市場を継続して利用しているというデータも出ている」(同)。

 店舗からすると「低い評価をするユーザーの中にはクレーマーが多いのではないか」という点が懸念となるが、河野上級執行役員は「それは誤解だ」と否定する。同社によれば、ショップレビューで入れた点数別に同モールの年間購入金額を比較すると、「1」を入れたユーザーが最も高く、以下「5」「4」「2」「3」の順という。つまり、低評価レビュアーはヘビーユーザーが多く、常に「1」を入れているわけではない。「いつも買っている別店舗のサービスレベルとは品質が違う」「前も同じ店舗で買っているが、品質が下がった」などが低評価の理由として考えられるわけだ。

 ショップレビューの改善活動を進める中で、見えてきたのが「問題のある行為を繰り返すのはごく一部の店舗である」ということ。ユーザーから聞き取った不満点を詳細に調査することで、店舗起因であるか、またはユーザーに問題があるか、さらには配送会社などのパートナー企業、そして楽天に問題があるケースと、レビューを分類していく。

 店舗に問題があるケースをまとめたのが表(1)となる。メールの誤送信や個人情報流出、連絡不通、発送遅延、誤配送、商品欠損・破損が代表的なもの。調査の際には店舗側にも理由を聞く。例えば商品破損であれば、配送会社側に問題があると確認できれば店舗起因とはならない。店舗起因のクレームが月に6件以上発生した場合、6件目からは1件あたり700円を調査費用の一部として店舗から徴収する。それ以外はすべて楽天負担だ。「お金を取ることが目的ではないし、店舗起因かどうかの適用は柔軟に対応する。問題が起きた際に店舗が改善姿勢を示すことが何より重要」(同)。

違反基準を明確化

013.jpg もう一つの施策は、違反点数制度の導入だ。これまで、店舗が各種規約やガイドライン違反を犯した場合、モール内検索順位のダウンや、一時出店停止、場合によっては退店措置を楽天が下していた。しかし、あくまで個別対応のため、「どんなルール違反をしたらどんな処分が下るのか」という基準は店舗に明かされていなかった。

 今回の違反点数制度導入により、店舗にも分かる客観的な基準が設けられることになる。与えられる点数は表②のとおり。例えば「レイバン風」「シャネル風」など、ブランド品と誤認されるような商品表示をした場合は「ガイドライン違反」として20点が与えられる。また「同じキーワードを無意味に連続してつなげることで検索結果の上位に表示させる」「時事ワードを隠し文字でページに埋め込むことでSEO対策とする」といった「検索スパム」は35点。効果・効能の記載(医薬品医療機器法違反)も35点となる。

 点数が表③に定められた違反レベルに達した段階で、楽天が店舗に制裁を実施。次の違反レベルに達すると追加措置を講じる。点数は1年間累積され、毎年1月1日にリセットされる。例えば、検索スパムが認められれば、各種表示制限1週間と違約金10万円が課せられる。いわゆる「やらせレビュー」は80点のため、ランキングや広告掲載制限、メールマガジン利用停止が4週間、一時出店停止2週間、違約金140万円となる。

014.jpg 河野上級執行役員は「例えば無意味なワードが1文字ページのソース残ってしまった場合など、悪意がないことが分かれば点数は付与されないし、柔軟に対応する」と話す。あくまで「"不適切"店舗排除」が目的のため、悪意のないミスであることが分かれば罰則の対象とはしない。なお、徴収した違約金は、ユーザー対応などにあてる方針だ。

キャンセル容易に

 また、キャンセル機能の導入も推奨する。ユーザーからの問い合わせでも「キャンセル関連」は「納期・配送」の次に多いことからの措置だ。注文してからのキャンセル対応は店舗によって異なり、購入履歴からキャンセルできる店舗もあれば、電話やメールなどで個別に受け付けている店舗もある。ただ、楽天子会社のケンコーコムが運営する「楽天24」で購入履歴からキャンセル可能にしたところ、問い合わせ率は5ポイント減少した一方、キャンセル率はほぼ変わらなかったという。同社では「購入履歴からキャンセルできるようにしても売り上げ減につながる可能性は低い」(河野上級執行役員)と判断、簡単にキャンセルできる仕組みを取り入れることで、店舗はオペレーションを軽減することができる。

                              ◇

 河野上級執行役員は「今回の施策は、ユーザー保護施策の一環であるとともに、きちんと運営しているほとんどの店舗を守るためのものでもある」と語る。ルール違反を繰り返す店舗へのペナルティーを明確にすることで、違反行為への抑止が期待される。例えば検索スパムがなくなれば、ルールを守ってきた店舗への流入増があるはず。同社では、"不適切"店舗の排除や運営改善を進めることで、モール全体全体の質向上と流通総額増につなげる狙いだ。


河野奈保上級執行役員に聞く、新制度導入の意図

011.jpg〝不適切〟店舗には厳正な対応も「一方的な処分はしない」

新制度導入の意図について、河野奈保上級執行役員に聞いた。

                               ◇
――安心・安全対策を強化している。

 「今年1月に、低評価レビューを書いたユーザーの意見を聞き取るサービスを始めたが、問題行為を繰り返す店舗が数%いることが分かった。プレミアムな店舗だけが集まる場にしたいと段階的に取り組んできたが、今回はさらに進めた形だ」

――聞き取りの成果は。

 「90%以上はプラスの反応。電話が通じない場合はメールでの対応となるし、電話をする時間帯は毎日9~20時の間と最初から決めている。『もう電話をしないで欲しい』と言われた場合、二度と電話しないような仕組みとしている」

 「不満点を聞き取ってからECコンサルタントが店舗への連絡、コンサルティングを行うというサイクルで、対象となる店舗のうち約56%において、ショッピレビューの向上がみられるなど成果は出ている」


――トラブルが店舗起因だった場合、件数によってはペナルティーを課す場合も出てくる。

 「費用を徴収することが目的ではない。きちんと運営している店舗としていない店舗との差を明確にするのが目的だ。また、改善策を講じない店舗に対して、退店ではないがきちんとしたペナルティーを課さないと、出店店舗の質は向上しないのではないかと考えた」

 「もちろん、店舗起因かどうかについてはきちんと調査する。店舗が改善するという姿勢を打ち出すことが重要なので、運用は柔軟に行うつもりだ。グレーなものを勝手にブラックと判断しないよう、店舗の声をきちんと聞いて制度そのものの改善も進める」


――店舗から見て明らかにおかしいレビューという場合もある。

 「さまざまな店舗に不当なクレームをつけるユーザーは当社でも把握できる。店舗の意見もきちんと聞くので、明らかに整合性が取れていなければ店舗起因にはしない」

――違反点数制度導入の理由は。

 「これまでもルール違反を犯した店舗に対しては改善を促したり、一時閉店や検索順位ダウンといったペナルティーを課したり、さらには退店処分を下すこともあったが、店舗ごとに対応していた。もちろん、社内ルールはあったものの、店舗側にはペナルティーの基準を示していなかったので、不安を煽るような部分があったことは否めない」

 「制度導入で、ほとんどの店舗がこうしたペナルティーを課せられることがないことを示す一方で、"不適切"店舗には厳正な対応を行い、違反行為の抑止とともに改善活動を促したい。きちんと運営しているほとんどの店舗の売り上げを拡大するためにも明確なルールを示し、ユーザー保護につなげる狙いだ」


――店舗から不安の声が出る心配はないのか。

 「通知を受けた段階ではそういうこともあるかもしれないが、運用を開始すれば大丈夫だということが分かるのでは。あくまで各種規約やガイドラインへの違反行為が対象となるので、大多数の店舗には無関係な話となるはず。悪意のないミスであれば点数を付与しないし、店舗の話もきちんと聞くので、一方的に処分を下すことはないから安心していただきたい」




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