ComcastがAWSとパートナーして‘勝てないなら仲間になる’道を選ぶ
クラウドのプロバイダーは大物顧客の獲得を自慢したがるが、今日(米国時間1/16)のAmazonがまさにそれで、ケーブルテレビの最大手Comcastが同社のクラウドプロダクツを提供ないし自社利用していくためのサーバーとしてAWSを選んだことを発表した。
つまりComcastは、同社のクラウドワークロードの多くをAWSに置く。ケーブルテレビは長年アメリカの消費者のテレビの見方の定番だったが、最近ではケーブル離れが進んでいる。そんなときComcastがクラウドサービスやクラウドアプリケーションを作って、純粋なコンテンツプロバイダーではない方向へ自分を差別化していくのは、見過ごせない動きだ。
そんなクラウドサービスの例が、リモコンを使う音声検索だ。音声の命令で、番組情報が分かり、番組を選んで録画予約もできる(録画は消費者自身のDVR上)。またXFiというアプリケーションは、ユーザーがComcastのWi-Fiネットワークをコントロールできる。
Comcastはこれまでも、AWSのコンピューティングやストレージ、アナリティクスなどを利用してそんなアプリケーションを動かしてきたが、今回もっと深い関係を築くことによって、クラウドが提供しうる身軽さ(アジリティ)により、ケーブル離れに歯止めをかけたいのだ。
今では、Comcastなどのケーブルプロバイダーを単なるISPとして利用しているユーザーがほとんどだ。テレビを見るためには、ほかのもっと安い方法がいろいろある。Apple TV, Roku, Amazon Fire TV, Google Chromecastなどなど。ケーブル独特のワンセット契約も、今や消費者にとってはかったるい重荷だ。見たい番組だけを見たい!
ケーブル離れ*は予想外に急速に進みつつある。調査会社eMarketerによると、昨年は2200万人がケーブル企業との契約を断(た)った。2016年に比べて33%の増だ。もちろん2200万の全員がComcastのお客ではないが、同社としても、もはや平気な顔はできない。〔ケーブル離れ, 英語ではcord cutting(コードを切る), cable cutting(ケーブルを切る)と言う。〕
Comcastはケーブルを持ってるだけでなく、NBC Universalのオーナーでもあるが、コンテンツのオプションが非常に増えている今は、そっち方面でも展望は厳しい。で、結局、同社が選んだ道は、NetflixやHuluなどと戦うという勝ち目のない方向ではなくて、自分もコンテンツを提供しながら、それに乗っかるサービスで差別化していくことだ。今やHulu Live TV, Playstation Vue, YouTube TVなどなどが、テレビの領域すら侵しつつある。〔Netflixもテレビ的に‘自主番組’がある。〕
AWSは今のところ、クラウドインフラストラクチャのプロバイダーとしては最大だ。Comcastはケーブルテレビの最大手として2250万のユーザーを抱えている。しかし同じ昨年春の数字でAT&Tの契約ユーザー〔≒iPhone〜スマートフォンのユーザー〕は、2500万を超えている。大型キャリアは、ほかにもいる。この現状の中で、Comcastにほかの選択肢はない。