会心の一匹!コクハンアラ23.3kg

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実はこの南の島遠征釣行の前半、思うように魚との距離を縮められずに居た。瀬渡しをお願いして沖磯へ乗って釣りをしていたのだが、バイトがあっても乗らなかったり、バラしてしまったり、悔しい思いを沢山した。

  

遠征釣行3日目の事。足元まで引いてきたポッパーに喰らいついてきた、巨大な赤い魚。

魚は水底へ物凄い勢いで走り始めたが、フックを伸ばされて逃げられてしまった。フックが貫通していなかったのだろうか?

 

船長「それはきっとスジアラだろう。大きいのが居るよ。」

(スジアラ・・・。)

 

 

 

それから2日の日程が流れ、魚の顔も段々と多く見れるようになってきた。

少しずつこの海域との距離が縮まってきた気がしていた。前半とは明らかに違う流れ。

 

そんな中、瀬渡しの船長に告げられたのは、「明日はシケで出られない」と言う現実。

台風21号のウネリが明日には届いてしまうと船長は判断したのだ。

 

 

しかし翌朝、のんびりと宿で寝ていたところに船長が叩き起こしに来た。

「凪だぞー!出れるよー!行かないかー!」

 

 

予報に反して海は穏やかだった。唐突に始まったロスタイム。

「何処にしようか?何処の磯に乗りたい?何時まで海が持つかわからないぞ」と船長。

「あのアラが居る場所へ連れて行ってください」と頼んだ。

 

 

 

 

ヤツの棲処でどれほどキャストを繰り返しただろうか?

ボトムから2巻きした所で、強烈なバイトが訪れた。

 

 

バイトの割には重いだけで、ポンピングで少しずつリフトする事が出来た。

ゆっくりと姿を現した魚は、やたらとゴツくて尾びれが大きく、怖い顔をした巨大な赤い魚。

先日、足元のポッパーを襲ってきたヤツに違いない。

 

 

しかし、「あと少しで水面!」と言う所で、ピタッと持ち上がらなくなってしまった。

出来るだけラインを巻き込み、「せーの!」で全体重を掛けてロッドを絞ったが全く動かない。

 

 

きっとこの時、ヤツの体力ゲージは全く減っていなかったのだろう。

下手すりゃ釣られた事さえ気づいていなかった筈。
ヤツは尻尾を数回大きく動かしたかと思うと、水面に大きな波紋を残して自分の棲処である水底へと進路を取った。

 


あまりにも凄まじい強い引きに対し、全体重を掛けドラグを締め込んで立てたロッドは徐々に角度を失い、遂にはロッドをノサれてしまった。

 

 

いよいよ相手にスイッチが入ってしまった。

ロッドとラインを通して伝わって来る、ヤツの固い意思。

 

「獲りたい。コイツに勝ちたい!」
コッチも負けじと自分の導火線に火を付ける。こういう時、気持ちで負けたら絶対に獲れない。

 

 

足元に何段か張り出したテラス状のリーフに、メインラインのPEが擦れる感触。

テンションを張り詰めた状態で根にラインが当たれば、即ラインブレイクだ。

 

まずは根ズレによるラインブレイクを回避する為、得意技の「オープンベール」でテンションを抜く。

スプールから出て行くラインをいつもよりテンションを強めにグローブでサミングしながら、「バチバチッ!!!」と放つ。

 

 

ヤツの走りはようやく止まったが、相当ラインを出されてしまった。
ロッドをそっと煽ると、魚が根に入ってしまったらしく、動かない。


暫くラインを張ったまま耐えていると、「ズズッ」と動く感触。まだ魚は着いて居る。

ロッドにジワジワとテンションを掛けてみると、嫌な感触が幾つも重なって伝わって来た。


おそらく水中では、何か所も根にラインが噛んでいるのだろう。
擦っても切れないギリギリのテンションでロッドを起こして魚にプレッシャーを掛けてみる。

 

 

「ズズッ・・・」と魚が動き出し、ゆっくりゆっくり走り出した。

「パチン!パチン!」と根からラインが外れた感触が、何度か伝わって来た。


 

そっと聞くように、ジワジワとテンションを掛けてみると、ロッドとラインを通じて伝わって来たのは魚の感触のみ。根ズレの感覚は無い!

今までのやり取りの最中で根に擦った際、PE8号+170lbに致命傷を与えるだけのテンションは掛けていない。

 

 

「勝負だ!!!」

残っている全ての力を使い切る勢いでスパートをかける。屈伸も使って大きくポンピング。1cmでも良いから多く巻く事だけを意識してハンドルを回す。
ヤツは何度も底へ帰ろうと激しい抵抗をみせるが、底から引き剥がしたい一心で、こちらも全力の抵抗。

 

 

無我夢中、僕と魚の一騎打ち。

 

 

 

青く透き通った海中からジワジワと赤い魚影が見えてきた頃、奴は最後の抵抗に出た。

右の足元に張り出したテラスへ向かって横っ走り。その走りと共に魚を追い掛けて僕も右へと立ち位置を変える。


そのぶん魚との距離は縮まり、テラスの下に潜られる前に渾身の力でポンピングを数発入れ、テラスの下では無く、テラスの上に魚を誘導する事に成功。

 

 

ラストスパート!最後まで絶対に気が抜けない。ココが最後の踏ん張り所・・・!!

どうしても水面へ出たがらないヤツへ「諦めろ!」の意を込め、全体重を掛けて最後のリフト。

 

 

 

 

水面に魚が浮いた。

デカい!なんだコレ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

コクハンアラ23.3kg

『運・道具・技術・体力・精神力』

僕の全てを出し切って獲った、会心の一匹!

 

 

 

ギャフが上手く刺さり切らず、最後は寄せ波を使いながら何とか魚を海から引き揚げる事が出来た。

自分の足元へ横たわる巨体を目の前に、両腕を突き上げながら思わず歓喜の雄叫びを上げた。

 

 

 

この魚とは、ロッドとラインを通してとても濃厚な意思のやり取りをした気がする。

水底へ、根に潜ろうとする独特の引きは、今まで釣った魚のどれよりも手強かった。

 

前半はラインから伝わる情報に集中した繊細な駆け引き、ラインに余力を残す事の出来た後半戦は力と力の一騎打ち。
この魚とのファイトで学んだ事はとても多く、また一つ素敵な経験を積む事が出来た。
 

 

こんなにもアツくなれる釣り。こんなにも幸せな瞬間を味わえるのが釣り。
釣りが楽しくて、大好きで、やればやる程、「好き」が加速していく自分が居る。
 

 

 

激しく根ズレしたナイロン170ポンドは哀れな姿になり、メインラインのPE8号も激しく根ズレしていたが、それでも芯だけはしっかりと繋がっていてくれた。

 

耐摩耗性能に優れている「YGKよつあみ社」のラインに絶大な信頼を寄せる僕。

今回もまあまあな無理を効かせてくれて、僕のファイトをサポートしてくれた。

 

ちなみに、「このラインなら根に擦っていてもどこまでテンションを掛けられるか」と言う感覚を何処まで正確に磨けるかが、ショアからのビッグゲームにおける今の僕の課題でもある。

 

 

 

僕が信じる道具たちは、ボロボロになりながらも一緒に闘ってくれて、しっかりと役目を果たしてくれた。
バックアッパー、ウルトラチャタビーを始めとした最高の試作品を託して頂き、自身が考案した最強ノットを始め、数々のスキルを僕に与えてくれた井上代表、本当に感謝しています。
 

タックル

ロッド:バックアッパー938(ジャンプライズ)
リール:ステラSW18000HG(シマノ)
ライン:ウルトラキャストマンWX8 8号(YGKよつあみ)
リーダー:キャストマンアブソーバー170lb(YGKよつあみ)
ルアー:プロト115g(ジャンプライズ)

 

 

 

 

唐突に始まったロスタイム。予期せず訪れたチャンスをしっかり拾い上げる事が出来た。
この魚へのリベンジは何時になるかと思ったけど、こんなにも早く、滞在中に手にする事が出来るとは思わなかった。

 

数日投げ倒して魚からの反応が1回あるかどうかと言う事も少なくないのが、ショアからのビッグゲーム。1kgを超えるタックルで200gのルアーを10時間以上投げ倒した日々。

  
この過酷な釣りのジャンルにおいて、僕の釣りの腕はまだまだ未熟で経験不足だ。 

僕にとって、まだまだこの1匹は通過点。海にはもっと大きい魚が泳いでいる。

 

 

今回の魚をキャッチした後も、まだまだ体力的な余力はあったが、体力、筋力、体幹等、更に鍛えるべき箇所の課題も見えて来た。釣りの技術以外にも、出来る事は有る筈。

 

全ては自分が拘る「ショア」から、数少ないチャンスを少しでも掴み取る為。

 

 

今後も大物との邂逅に備え、全国各地で経験を積み、精進して行きます!

 

 

 

 

 

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    良い出会いがありました。いや、再会かな。昨年、自己記録を釣った際に渡すと約束してくれた記念のララペンを直接頂きました釣った感動も甦るが、頂いた感動もデカかった で、話しの内容はだいたいララペンを中心とした話し。それから冒頭の23.3kgのコクハンアラとの死闘 と、その他諸々。中でも…

    ヒラマサ(HRF92号)

    2017-11-22 11:03:00

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