受託開発ベンチャーのマーケティング〜ヴェルクで実践していること
受託開発をやっている会社にとって、マーケティングは大きなテーマではないかと思います。
同じような受託開発をやっている会社が非常に多くあること、また、お客さんの立場から見て、システム開発という形がないものを発注するにあたって、全く知らない会社やブランド力がない会社には頼みにくいのは当然で、受託開発をやっている会社からすると、新規のお客さんを獲得することは大きな課題です。
そのため、これまでの繋がりや紹介などでの受注が多いのではないでしょうか。
ヴェルクは現在4年目ですが、1〜2年目は、ほぼこれまでの繋がりや紹介で仕事を頂いていました。
もちろんそれ自体は悪いことではないですが、それでずっと食べていけるのかというと疑問ですし、会社としては、自力で新規顧客を獲得できないと危険だなと感じていました。
そこで、今回は、この課題に対して、ヴェルクで取り組んでいることを時系列で書きたいと思います。
ちなみに、マーケティング分野は全然専門ではないので、あくまで、エンジニアが自社のマーケティングに取り組んでいること、という位置づけでお読みください。
1〜2年目の失敗:プロモーションの前にマーケティングが必要
SEO・広告などはプロモーションの領域だと考えています。認知してもらわないと受注できないのでプロモーションは大事ですが、その前に、マーケティング・ブランディングができている必要があります。
この順序が逆だと、効果が出にくいと思います。
1〜2年目の頃、「何でもできます」ではダメだと思い、得意な分野であった「AWS」と「スマホアプリ」を全面に打ち出すことにしてプロモーションしてみましたが、明確な効果は出せませんでした。例えば以下のようなことをしてみました。
イベントのロゴスポンサーをしてみる
AWSをメインで使っていたこともあり、AWS関連のイベントでロゴスポンサーをしてみたのですが、これは特に効果はありませんでした。
ロゴスポンサー自体がダメなのではなく、出してどうしたいのか、そもそもそのロゴを見てサイトにアクセスしてきた人向けのメッセージが準備出来ているのかなど。
要するにスポンサーというのは露出の機会を増やす方法であり、露出した結果、見に来てくれた人に「こういう製品があります」「ヴェルクはこういう会社です」というのが伝わる準備ができていませんでした。
マーケティング・ブランディングを考える前に、プロモーションをやってしまった形です。
営業代行を頼んでみる
ヴェルクでは営業がいないため、プッシュ型の営業が苦手、というかできません。受託開発において、プッシュ型の営業がどの程度効果があるのかの検証も含めて、営業代行の会社に頼んで試してみました。
結果は全くダメ。
完全にパッケージ化された商品があれば売りやすいと思うのですが、受託開発という形のないものを、明確な差別化がない状態でプッシュ型の営業をしても、効率がいいはずもありません。
集客を急ぐのではなく、まずはきちんと土台を築くべき、ということに気づきました。
マーケティングの第一歩〜自社の特徴と正面から向き合う
マーケティングやブランディングをするにあたって、SEOとか広告とかバズワードとか、安易にそういうものに乗っかるのではなく、まずは自分たちの特徴をしっかり抑えた上で、どういう方法を取るべきかを考えました。
うちの会社は、技術的には特別大きな特徴があるわけではないと思っています。
例えば、有名なスーパーエンジニアがいるとか、流行りのデータマイニングのスペシャリストがいるとか、特殊な技術を持っていてニッチなニーズを掴めるとか、そういう感じではありませんでした。
RubyとかObj-CとかAWSとか、エンジニアが多い、やっている会社が多い領域をメインとしています。そのため、「Rubyできます!」とか「AWS強いです!」とか、そういうものはどこの会社でも言えることで差別化が非常に難しいです。
もちろん、やっている内容を伝える必要はあるので、サイトにはRubyやAWSなどのキーワードは掲載しますが、それでブランディングしようとすべきではないと考えました。
マーケティングとは、売り方を考えることだけを指すのではなく、製品企画・コンセプトの段階からマーケティングを考えていくものだそうです。会社も同じで、どういう会社なのか、どういう強みを持っているのか、会社のマーケティングもそこからです。
ヴェルクのウリを考える
前述のとおり、技術的には大きな差別化になるわけではないですが、受託開発を安定的にまわすことにはそれなりに自信がありました。これはメンバーが必要な技術力を備えているのは当然として、技術力以外を含めた「バランスの良さ」からきていると思っており、打ち出すべき特長はここだと考えました。
ただ、例えば「技術力には自信があります!」とか「コミュニケーション力が高いエンジニア」とか「経験豊富なマネージャ」とか「提案ができるエンジニア」とか、いかようにでも言える言葉を並べたところで、意味は無いだろうなと。
そういう安易に言葉で伝えようとするのではなく、実践して形に表すべきだと考えました。
ウリを形にする
ヴェルクでは、創業時から、受託開発と自社開発の両立を目指していました。これは、「単に自社開発をやりたかった」というのもありますが、受託開発だけやっていると受け身になってしまいがちなことを避け、また自社開発で企画力や自主性を実践の中で身につけ、受託開発に活かすことが狙いです。
こういうコンセプトはこのブログなどで書いてきましたが、口だけでなく、それを形にする必要があります。
1〜2年目はiPhoneアプリを中心に軽めのものを作っていましたが、3年目はもう少し踏み込んで、本格的に事業化を目指して自社製品の開発に取り組みました。
このあたりの話は「起業して3年でやってきたこと」や「受託開発を軸にしながら自社開発を継続するために行っている工夫(時間・お金の話など)」などに詳しく書いています。
要するに、「受託開発と自社製品を両立する」というスタンスを明確にして、それをきちんと結果として残すことで、「ヴェルクはこういう会社です」というのが伝わるようにしようとしました。
“形"を見てお問い合わせ頂く
「受託開発の会社が自社製品で集客できるようになるまでにやったこと(失敗含む・・・)」にも書いた通り、昨年、Pattoという自社製品の集客を頑張ったことが大きいですが、この製品そのものではなく、サイト経由での受託開発の依頼も頂くようになりました。
直接お問い合わせ頂いたお客さまから「サイトを見て、コンセプトに共感して、この会社なら話が合いそうと思った」という主旨のことを何名もの方から言われました。
お問い合わせがものすごく多いかというとまだまだです。そういう意味では、全然知名度も高くないですが、1〜2年目よりは確実に進歩しています。コンセプトを体現することによって、少しずつ、ヴェルクがどういう会社か、ということが伝わるようになってきているように思います。
お金がたくさんあれば、広告をガンガン打ってブランディングするという方法も1つのやり方だと思います。繰り返し見聞きすることで、「知っている会社」になるわけですから。
ただ、ヴェルクではそういうやり方はできません。
身の丈にあったマーケティングを考えた時、会社としてのスタンスを明確にすること、そしてそれをちゃんと形に表すこと。
それがきちんとできていれば、時間はかかりますが、少しずつプラスの方向に向かっていくように思います。
前回の記事同様、急がばまわれ的な話ですが・・・。
受託開発のマーケティングはどういう会社か知ってもらうところから
このように、受託開発のマーケティングは、どういう会社か知ってもらうことからな気がします。
そして、それを営業的にPRするのではなく、目に見える形でアウトプットしていく。
こういうブログも1つの重要な方法だと思います。ただブログだけだと、いかようにでも書くことができるので、やはりそれを体現する形での結果を出していく必要があるのではないかなと思います。「論より証拠」ですね。
受託開発のマーケティングは本当に難しいなと思います。
「○○をしたらうまくいく」なんてことはまずないですし。
「信頼の獲得」が肝なので、時間はかかるけど、信頼の根拠になるアウトプットを継続していき、それを地道に積み重ねていくことなのかなと思っています。
ちなみに、残念ながら、今のところ「最初に見たのがブログ」というお問い合わせはないです。ただ、会社のサイトからブログに行ってお問い合わせを頂く、というケースは最近増えてきたので、会社としてのコンセプトを発信するのは大事だなと実感してます。
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