ワニグチツノザメ(学名:Trigonognathus kabeyai)が初めて捕獲、確認されたのは、1982年。それから32年間、この種はまれにしか目撃されず、それも偶然見つかることが多かった。
ワニグチツノザメは、深海に生息する小型のサメだ。最近、このサメが5匹、台湾の沖合で捕獲された。地元の研究所が定例の魚類調査を行っている最中に、たまたま混獲した、と地元紙は伝えている。研究者の話では、捕獲したサメの顎が細長く、針状の歯が並んでいたことから、ワニグチツノザメだと早いうちからわかっていたらしい。(参考記事:「【動画】幽霊のような深海魚を発見、おそらく新種」)
このサメはごくまれにしか見られないため、詳しいことは不明だ。しかし2003年に発表された論文には、39匹の標本から得た身体的特徴が記載されている。ワニグチツノザメは針状の鋭い歯のほか、伸縮する顎を持っていて、餌をとる際にはこの顎を伸ばして捕食するという。
捕食する際には、獲物に向かって突進し、顎を突き出し、口を大きく開ける。その後、サメの胃の中を調べた結果によれば、獲物を丸ごとのみ込んでいると思われる。(参考記事:「釣り上げた魚の口の中にモグラが! なぜ?」)
ワニグチツノザメの体には、光を発する発光器と呼ばれる小さな細胞がある。また、他のサメと同じく、皮歯と呼ばれるV字型をした小さなうろこを持っている。このおかげでサメの肌は硬く、静かに素早く泳ぎ去ることができるのだ。(参考記事:「人間にはない動物たちの驚きの器官7選」)
生息数は不明
国際自然保護連合(IUCN)は、ワニグチツノザメを「情報不足種(data deficient)」に分類している。生息数が不明だからだ。ワニグチツノザメは、日本、台湾、ハワイの海岸沖以外では見つかっていない。台湾の新聞の取材によると、この種はいわゆる「日周鉛直運動」を行い、昼間は水深300メートルにおり、夜には水面150メートルにまで浮上する。(参考記事:「目玉がかわいすぎる生き物、深海で見つかる」)
今回捕獲されたサメの全長はどれも25~30センチの範囲で、前回捕獲されたものも、わずか45センチしかなかった。めったに見つからないのは、この種の体が細くて小さいため、魚を捉える網の目から抜け落ちてしまうのかもしれない、と自然系ニュースサイト「Earth Touch News」の生物学者ブリット・フィヌッチ氏は述べている。(参考記事:「【動画】謎のサメ「メガマウス」が泳ぐレア映像」)
今回捕獲された5匹のうち1匹は、海中から引き上げられた時も生きていたらしく、今後の研究に役立つようにと再び水に入れられた。しかし、捕獲後24時間以内に死んだと伝えられている。