トランプ氏、上院議員の非難に反論 「人種差別」発言めぐり
ドナルド・トランプ米大統領は15日、自分が上院議員らとの会合で中米やアフリカ諸国を「shithole」(直訳は「くその穴」)と下品な罵倒表現で呼んだと非難されている問題で、同席していた民主党の上院議員が「人種差別的な発言を確かにした」と言明していることについて、「まったく事実と違う」と反論した。
ディック・ダービン上院議員(イリノイ州選出、民主党)は、トランプ氏が上院議員たちとの会合で「憎悪に満ちた、下劣で人種差別的な」表現を何度も繰り返したと公言している。11日の会合は、子供時代に米国に到着した不法移民約80万人の強制退去を遅らせ救済する制度(DACA)の変更について、超党派で協議するためのものだった。
トランプ氏はこれについて15日、「ディッキー・ダービン上院議員はDACA会合での発言について、まったく事実と違う説明をしている。信頼がなければ取引で合意は無理だ! ダービンはDACAをだめにして、この国の軍を傷つけてる」とツイートした。
トランプ氏の問題発言は、DACAとは別の、自然災害や戦争、伝染病の流行に直面する国の市民に一時的な居住資格を与える制度(TPS)について、ダービン議員が大統領に説明した後のものとされている。議員が、TPSの保護を受けている多くはエルサルバドルやハイチ、ホンジュラスの出身者だと話すと、トランプ氏は「ハイチ人? これ以上ハイチ人がいるのか?」と反応した。さらに、自然災害や戦争や伝染病の被害を受けている国々より、ノルウェーのような国から移民を受け入れるべきだと話したという。10日には、ノルウェーのエルナ・ソルベルグ首相がホワイトハウスを訪問している。
トランプ政権は昨年来、TPS打ち切りの方針を相次ぎ発表している。
トランプ氏が会合で、ハイチやアフリカ諸国を「shithole」と罵倒したと米紙ワシントン・ポストなどが伝えると、ダービン議員は報道に間違いはないと言明し、「ホワイトハウスの歴史で、あの大統領執務室で、私自身が耳にした言葉を他の大統領がかつて口にしたとはとても思えない。トランプ大統領は、憎悪にまみれて下劣で人種差別的な発言をした。そういう言葉を何度も繰り返した」と断定した。
同席していた共和党重鎮のリンジー・グレアム上院議員は、問題発言を否定せず、「大統領の発言を受けて、私は自分の意見を本人に直接伝えた。大統領と会議出席者全員は、私が何を言い、どう思ったか承知している」と声明を発表した。
他方で、同席していた共和党のデイビッド・パーデュー上院議員(ジョージア州選出)は、問題発言についての報道は「はなはだしい事実誤認」だと主張。同じく共和党のトム・コットン上院議員(アーカンソー州選出)は、トランプ氏が「侮蔑的な表現を使ったのは耳にしていない」と話している。
これに対してグレアム議員は15日、同党の両議員に反論するかのように、自分自身の記憶は「進化」していないし、「どういう発言があったのか自分は承知している」と述べた。
ダービン議員も同日、自分の主張は「一言一句そのまま」で一歩も引く気はないと主張。さらに、トランプ氏が使った言葉は「shithole」ではなく「shithouse」(直訳は「くその家」)だったのではないかという一部の主張を否定した。
ダービン議員は、「DACAで守られている人たち」が「米国における将来」を見つけられるよう、「フルタイム」で力を尽くしていると話している。
アフリカ連合は12日、トランプ氏による「明らかに人種差別」な発言に対して「ショックと落胆と激怒」を表明し、謝罪を要求した。
報道されているトランプ氏の発言について、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のルーパート・コルビル報道官はジュネーブで記者会見し、「人種差別としか言いようがない。国や大陸をひとくくりに『肥溜め』と一蹴するなど、許されない」と強い調子で非難した。
全米黒人地位向上協会(NAACP)は、大統領が「人種差別と外国人嫌悪の穴に、どんどん深く」落ちていっていると批判した。