定番ビジネスリュック「シャトル デイパック」で知られるノースフェイスのニューモデルを紹介する 通勤シーンでもすっかり違和感がなくなったビジネスリュック。その流れをけん引してきた3つのブランド、ザ・ノース・フェイス(ノースフェイス)、吉田カバン、トゥミの最新モデルを紹介する。最初に取り上げるのは、定番リュック「シャトル デイパック」で知られるノースフェイスのニューモデル2つだ。
■米国で企画された新リュック
ビジネスリュックのトレンドをけん引しているノースフェイスの「シャトル デイパック」。2012年春の登場以来、マイナーチェンジを繰り返しながら現在も発売されている人気バックパックだ。ノートPCとタブレットが同時に入る蛇腹式の専用コンパートメントのほか、電源コードやモバイルルーターなどの電子機器を収納するオーガナイザーなどを備え、ブリーフケースを想起させる品の良いスクエアデザインでビジネスシーンに対応。今もなお、仕事で使うリュックの最有力候補として名前が挙がる。
そんなノースフェイスがビジネスリュックの次なる一手として投入したのが「アクセス22」だ。
ザ・ノース・フェイスの「アクセス22」(3万7000円)。ほかに容量28リットルの「アクセス28」(4万円)がある。※価格は税別、以下同 シャトルデイパックが日本で企画されたのに対し、アクセス22は同ブランドが生まれた米国で企画されたもの。「アクセス22は16年春夏に米国で発売され、ノースフェイスが手がけたシティユースのバックパックとして、アウトドア好きの方から大変支持された。そして16年秋冬に、日本で直営店でのみ少量を販売。数が少なかったこともあり、すぐに完売した」と、ゴールドウイン ザ・ノース・フェイス事業部 ハードグッズグループ マネージャーの狩野茂氏は話す。
その後、17年春夏シーズンも直営店を中心に少量を販売し、完売していた。そして今シーズン、ついに日本で本格展開がスタートしたというわけだ。
■自立するフレーム構造&ワンタッチオープン
フレーム構造でしっかり自立する。メインコンパートメントはワンタッチでオープン 移動には便利なバックパックだが、意外と困るのがミーティング時やデスクに着いたときのかばんの置き場だ。このアクセス22は底面にPEボード(プラ板)を配し、形崩れしにくいフレーム構造を採用しているので、しっかり自立する。立てかける必要がないので置き場所に困らず、また荷物も出し入れしやすい。バッグ全体がモールド(型枠)で形作られているので荷物も保護できる。
このフレーム構造を生かし、メインコンパートメントはファスナーではなくワンタッチ式の開閉に。がま口のような開口部に付いた金具を持ち上げるだけで、自動でオープン。すばやく荷物にアクセスできるのだ。金具にはロック機能も付いているので、背負っているときに中の荷物を盗難される心配もない。これは海外企画ならではの発想だろう。
フレーム構造による外観はすっきりとした印象で、ビジネスとの親和性が高い。このスマートさを損なわないように、外装のサイドポケットは外に膨らむのではなく、内側に広がる作りになっている。
■ガジェット対応の収納スペース&ギミック
アクセス22は米国生まれでありながら、日本企画に負けず劣らずの収納性を備えている。「米国ではガジェットを持ち歩くことが当たり前になっているので、最近はポケットが多彩になるなど収納性も求められている」(狩野氏)
独立したPC収納スペースを背面に搭載。電源コードなどを入れるポケットも
メインコンパートメント内にも多彩なポケットを備える
右ポケットにスマホが入っている。入れた状態ではガジェットはしっかり保護される(写真上)。イジェクターを引き上げることで奥に入ったスマホをすばやく取り出せる 「さまざまなガジェットを収納できる」だけで終わらないのが、アクセス22が次世代リュックと一目置かれる理由。
各ガジェットポケットの内部には、イジェクターと呼ばれるパーツが付いており、それを引き上げるだけでガジェットがポケットから出てくる仕組みになっている。ポケットの奥に沈んだスマホも、すぐに引き出せる。
単純なギミックだが、実際に使ってみるとなかなか便利で、何より面白い。狩野氏も「ささいなところにも何かイノベーションを求める、いかにも米国らしいギミック」と笑顔で説明する。
■アウトドアブランドならではの背負い心地
バックパックは容量が大きく、手持ちのバッグよりもついつい荷物を多く入れてしまうことが多い。いくら背負うとラクとはいっても、重くなって腰や肩に負担がかかってしまう。
フレックスベント採用で快適に背負える。カッチリとした見た目からは想像できないほど軽い。そしてフィット感も抜群。W30×H50×D16cmと、普段使いにちょうどいいサイズ感も魅力だ アクセス22はフレーム構造で、かつ多彩な収納を備えた22リットルサイズながら、重さは2012gと軽量設計。加えて、背面に「フレックスベント」と呼ばれる背面モールドパネルを採用し、体への負担を軽減している。ショルダーハーネス内部のウレタンも、角を斜めにカットすることで肩への当たりを軽減しているのだという。
フレックスベントは、背中に沿うようにカーブをつけた成型パーツ。さらに溝が入っているので屈曲性が高く、中央の溝は背骨に沿って入っており、背中にぴったりフィットする。背中に密着することでバックパックが軽く感じられ、体への負担も抑える。前傾姿勢でもバックパックが背中から離れないので、自転車やバイクでも快適に背負える。「アウトドアパックでは当たり前」と狩野氏は話すが、こういった機能はアウトドアブランドだからこそ。ノースフェイスのビジネスリュックが支持される理由は、まさにここにある。
アクセス22の主戦場は、従来のアウトドア用品コーナーや量販店ではなく、百貨店の紳士かばん売り場。「税込みで約4万円と高額だが、百貨店でビジネスバッグを購入される方には価値が分かっていただけると思う」と狩野氏。その狙い通り、8月の先行販売から完売を重ね、少量出荷のため現在は在庫切れの店舗もあるという。
■もうひとつの米国生まれビジネスリュック
アクセス22同様に、今シーズンから本格展開がスタートしたのが「Kaban(カバン)」。アクセス22がハイエンドモデルなら、こちらは少し価格を抑えたモデルとなっている。
ザ・ノース・フェイスの「Kaban」(1万8000円) Kabanも米国企画で、ネーミングも米国によるものだ。「米国では日本のかばんの機能性が高く評価されている。ネーミングは日本が好きな米国のプロダクトマネージャーが名付けている。日本のかばんをかなり意識していることは間違いない」(狩野氏)
メインコンパートメントは大容量で、仕切りのない作りのため出張時の着替えなども難なく入る。開口部が大きく開くので、荷物の出し入れが容易に行えるのも魅力だ。メインコンパートメントがシンプルな分、オーガナイザー機能が充実したJ字ファスナーの大型フロントポケットがあり、小物収納に対応する。
メインコンパートメントは出張にも対応する大容量
背面に収納したPCはイジェクターで引き出せる アクセス22の後にアップデートされたKabanは、アクセス22の機能が随所に取り入れられている。背面のPC収納スペースと、前面のスマホポケットにはイジェクターを搭載しており、収納したガジェットをクイックに取り出すことができる。
外装の前面には、TPEコーティングを施した防水仕様の900Dポリエステル素材を採用。多少の雨はものともしない。また、下部に自転車のライトを取り付ける穴をレーザーカットで設け、ロゴなどの3カ所にリフレクターを用いるなど、都会のライフスタイルを想定した仕様になっている点も特徴だ。
三角形パネルのフレックスベントを採用。容量26リットル。サイズはW34×H47.5xD14.5cm 背面パネルにはフレックスベントを使用しており、アウトドア由来の快適な背負い心地を持つ。フラットな形状に見えるが、パネルが三角形になっているため背中に沿ってフィットする。バッグ自体も1210gと軽く、荷物を詰めても重さを感じにくい。
Kabanは百貨店のほかアウトドアショップでも販売されており、徐々に売り上げを伸ばしているという。カジュアル用途で購入する人も多く、「今後は、弊社の『ヒューズボックス』というバックパックを使っている若年層に人気が広がる可能性もある」(狩野氏)と期待を寄せる。
ビジネスリュックブームをけん引してきたノースフェイスの次なる一手。アクセス22とKabanが、これからのビジネスシーンを席巻するかもしれない。
(ライター 津田昌宏)
[日経トレンディネット 2017年12月8日付の記事を再構成]
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