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メール作成が苦手な人必見!伝わるメールのコツ3つ

派遣社員としてのビジネスシーンでも、メールは欠かせないツールです。しかし意外にも取引先とのやり取りで「メール作成が苦手」「伝え方がイマイチ分からない」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、伝わる文章の書き方講師で編集者の赤羽博之さんに「伝わるメールの書き方」についてお話をうかがいました。

<ポイント1>簡潔な文章を書くには「引き算」で!

「何を言いたいのか分からない」「余計なことばかり書いてある」「くどくどしく、読みにくい」など、私たちは文章を読むとき、少なからずストレスを感じます。仮に同じ内容が書かれた文章であれば、気持ちよく読めるもののほうが好結果につながることは、容易に想像できるでしょう。では、具体的に読み手のストレスを減らすには、どんな方法があるのでしょうか。次にポイントを紹介します。

■徹底してムダを省く
私たちが文章を書くとき、無意識のうちに「文字を増やそう」とします。そうすることで、仕事をしたような気になるからですね。問題はそのときに「余計な内容」を含めてしまうこと、つまり「書く必要がないようなことで文字数を稼ごう」としてしまうことです。

仕事で書く文章には必ず相手がいます。私たちが「たくさん書く」ことは、相手に「たくさん読ませる」こと。忙しい人にとっては、とても迷惑!なのです。相手のストレスを減らし、文章の好感度を上げるためには、まず「最少の文字数で書く」のがオススメ。たとえば、次の文例【A】と【B】とを比較してみましょう。

【A】口に入れたときの食感がプリプリなエビチリ。
【B】プリプリ食感のエビチリ。

【A】の「口に入れたときの」は本当に必要でしょうか? 通常「食感」は「口に入れたとき」の感じ。不要と考えて修正したのが【B】です。【A】は21字、【B】は12字(≒57%)。この一文だけでいえば、読み手の負担を43%軽減したことになります。

こうした視点でチェックしていくと、私たちが書く文章の多くに「省けるところ」がたくさん含まれていることに気付きます。ぜひ、ゲーム感覚で「発見⇒スリム化」していきましょう。冒頭で取りあげた「何を言いたいのか分からない」「余計なことばかり書いてある」というストレスの多くは、この方法で軽減できます。

■とくに言葉の重複を避ける
日本語は「重なる」ことを“嫌がる”言葉です。同じ言葉を不用意に繰り返してしまうと、読み手に「くどくどしい」「しつこい」印象を与え、文章の好感度を下げてしまいます。たとえば次の文例【A】と【B】とを比較してみましょう。

【A】私の仕事は営業部の仕事を調整する仕事です。
【B】私の仕事は営業部の業務を調整することです。

【A】では一文の中に「仕事」が3回登場。「くどくどしく、読みにくい」というストレス発生は明らかです。「仕事」を1回に減らしたのが【B】。さらに先ほどの「ムダを省く」を意識すると、次の【C】が見えてきます。

【C】私の仕事は営業部の業務調整です。

原文【A】と改良案【C】を比較して、どちらが読み手のストレスが少なく、好感度が高い文章といえるでしょうか。ぜひ吟味して使ってみてください。

<ポイント2>誤解されるのが当たり前! ~メールを書く流儀~

このテーマについては多くの専門書が出版されていますので、ここでは私自身が実践していることを紹介していきましょう。

■目上の相手から届く「~さま」「~さん」の意味は?
目上の人にメールを送る際、宛名には「会社名、部署、役職、名前+様」とフルセットで書くのが普通です。ところが何度かやり取りをするうち、相手から「~さま」「~さん」という宛名でメールが届いたり、文末に「出張先で見た○○がとてもきれいでした!」と近況が書かれたりするなど、「もう少し肩の力を抜きませんか?」というサインが届くケースがあります。

目上の方が“ハードルを下げてくれた”ことに気付かず、いつまでもフルセットの宛名で返信していると、相手は「気持ちが届かないなぁ」と、少々がっかりするかもしれません。もちろん、急に“なれなれしい”態度に出るのは論外ですが、文末に健康を気遣うひと言や、あなた自身の近況を書き添える、あるいは頃合いをみて「フルネーム+様」の宛名に切り替えるなど、その時点での距離感に合わせた書き方にチャレンジしてみるのもよいでしょう。

■誤解されるのが当たり前と考える
SNSでのやり取りについて、こんな話を耳にしました。AさんがBさんの家に遊びに行く約束になっていたそうです。そこでBさんは交通手段を確認しようと、「何で来るの?」とメッセージを送りました。これを読んだAさんは「今さら、行く理由を聞かれた」と誤解し、激怒してしまったというのです。

こうしたトラブルは、実はビジネスのメールでも起こります。もともと日本語が、主語を頻繁に省くなど“曖昧さ”をもった言葉であることに加え、「書いたものは独り歩きする」という宿命をもっているからです。

面談や電話など口頭でのやり取りであれば、相手の様子をうかがいながら話したり、誤解があれば即座に訂正したり――が可能です。しかし、メールを始めとする文章主体のコミュニケーションでは、この「即座に訂正」が不可能。書いた内容だけがどんどん独り歩きし、トラブルがより深刻化してしまうのです。

そこで、「コミュニケーションの決定権はすべて相手にある」「誤解されるのが当たり前」と送り手側が考えることが第一歩。たとえば「結構です」というひと言が「歓迎/辞退」どちらの意味で相手に届くのか、相手の立場に立って繰り返し確認することが大切です。

■実はタイミングが重要!
24時間いつでも送受信でき、移動中など時間のあるときに読めるのがメールのメリットです。とはいえオススメできないのが、週末に頑張って作業して送信~週明けに相手が開封――というパターン。ご想像のとおり、多忙な人の週明けの受信トレイは未読メールの“山”。せっかく送ったメールが多くのライバルの中で埋没してしまう危険性が高いのです。重要な用件であれば、相手の行動パターンを把握し、立て込んでいない時間を“狙い撃ち”するくらいの細やかさが必要です。

加えて、極端な時間に送信することも控えるべきです。主にパソコンでやり取りしていた時代はこれでもよかったのですが、スマホの時代になって事態は一変しました。深夜や早朝にあなたが送ったメールの着信を知らせる音や振動が、上司や大切なお客様の睡眠を妨げてしまっては、信頼関係自体が損なわれかねません。

<ポイント3>ラブレターを書く気持ちで、相手のタイプを読み切ろう!

ラブレターというと、古臭く感じるかもしれませんね。しかし、文章を書くコツを紹介するとなると、真っ先に思い浮かぶのがこの言葉。なぜなら、次の3つが確実に実行されるからです。

①相手のことを真剣に考える。
②コピペなどではなく、自分の言葉を絞り出そうとする。
③妥協なく文章を吟味し何度も練り直す。

ラブレターを書くとなれば、「こんなことを言ったら、引かれてしまう?」「こう書いたら、気持ちが届くかも」……と、受け取ったときの相手の気持ちを真剣に想像するでしょう。加えて、「まぁこんな感じでいいか」とコピペで済ませたり、書いた内容を読み返さずに送信したりするのは、よほどの事情がない限りあり得ないはずです。

①~③はそのまま「伝わる文章」を書くコツとして、ぜひオススメしたいこと。中でも「①相手のことを真剣に考える」がとくに重要です。

世の中には、いろいろなタイプの人がいます。あなたが情報を送り届ける相手も、その性格や好みは皆、違います。たとえば「仕事については、徹底して数字(結果)を重視する」人もいれば、「数字には表れない熱い想い(プロセス)も大切にしたい」と考える人も中にはいるでしょう。相手を説得する際、こうしたタイプ、キャラクターを無視しては、よい結果は得られません。「数字」を重視する相手に「熱い想い」ばかりぶつけてみても、時間のムダに終わるケースがほとんどです。

相手はどんなタイプかを考え抜くことが、結局は口頭・文書のスタイルを問わず、コミュニケーションの目的を達成する“近道”なのです。


記事執筆:赤羽博之
伝わる文章の書き方・講師/フリー編集者&ライター。合同会社耕文舎代表。「日経電子版」企画制作ディレクターなど編集者としての実務経験は30年以上。企業・団体研修、講演・セミナーなどでの登壇は年間110日を超える。著書に『すぐできる!伝わる文章の書き方』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。https://www.kakimono-navi.jp/

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