「もう、真っ赤。(新電力参入以前の)創業以来、見たことのない赤字に陥りそうだ」。関西に拠点を置く新電力幹部はうなだれる。
この新電力は新規参入組の中では比較的体力がある方だろう。「撤退や破綻はない」としつつも、「この状態が2月まで続けば、(財務体質を強化する)資本政策を根本から見直すなどの事態はあり得る」と話す。
2017年11月から続く日本卸電力取引所(JEPX)における西日本エリアの価格高騰が、同エリアで電力を販売する新電力の経営を直撃している。
下図は2017年12月の1カ月の西日本エリアの市場価格(関西エリアプライス)と、2016年12月の同じ週・曜日・時間帯との価格差をグラフ化したものだ。前年に比べて1kWh当たり 10円以上高い時間帯が頻出している。異様な高騰ぶりと言うほかない。
小売料金が下がる中で調達価格が上昇
西日本エリアの昼夜を合わせた全時間帯の12月の平均価格は、2016年が8.9円/kWhだったのに対して、2017年はなんと13円/kWhにもなった。1kWh当たり4.1円、前年比で46%も高い。ちなみに北海道を除く東日本エリア(東京エリアプライス)の12月平均価格は10.3円/kWhだ。西日本は東日本に比べて、12月は2.7円/kWh高かったことになる。
新電力へのダメージは、西日本での販売比率や電源調達を市場に頼る度合いなどで一律ではないが、全面自由化を機に参入した新規参入組の中には市場調達の割合が7~8割に及ぶ事業者も珍しくない。加えて、大手電力との価格競争はますます激しさを増している。
ただでも薄利と言われるのが電気事業だ。小売料金が切り下がる中で、仕入れ値がこれだけ上がれば、「2018年は撤退する事業者が複数出てきてもおかしくない」(新電力幹部)。全面自由化3年目で新電力の撤退が相次ぐようだと、新電力全体、ひいては自由化に対する消費者の信頼が揺らぐ事態さえ招きかねない。
問題は、多くの新電力が大きなダメージを被っているにもかかわらず、その背景や理由が全く分からないことだ。
ラニーニャ現象に端を発し、北から寒気団が押し寄せてきた今冬の冷え込みは例年に比べて厳しい。12月以降、暖房需要が急増し、電力需要は「1年のピークである真夏並みにまで高まった」(市場関係者)。市場環境としては、原油価格の上昇を指摘する声もある。
しかし、これらが価格上昇の1要素であったとしても、いずれも西日本と東日本の大きな価格差までは説明しきれない。西日本では通常の需給では説明できない何かが起きている(「西日本の異常な電力市場価格に大手電力の影」参照)。
いただいたコメント
コメントを書く