昨年12月15日、東京・六本木にある富士フイルム本社3階にある社内革新センター「オープン・イノベーション・ハブ」には、幹細胞で作った人工皮膚、直径1ミリメートルの超小型内視鏡レンズ、放射線診断補助薬、皮膚再生化粧品など同社の革新的製品50種類余りが展示されていた。しかし、富士フイルムの象徴であるフィルムは耐熱フィルムなど3種類だけだった。
デジタルカメラとスマートフォンの登場で富士フイルムの主力だったフィルム市場は消えたに等しいが、同社は2018年3月期も過去最高の業績を上げる見通しだ。売上高2兆4600億円、営業利益1850億円で、世界のフィルム市場が過去最高の好況に沸いた2000年の業績の2倍に達する。過去に富士フイルムと共に世界のフィルム市場を二分した米イーストマン・コダックは破産したが、富士フイルムは本業消滅の危機を克服したと言える。
オープン・イノベーション・ハブの小島健嗣館長は「我々の真の競争力は、フィルムそのものではなく、フィルムを作る際に使われる100種類余りの化学物質を生産、加工する技術だ。この技術で医薬品、化粧品、医療機器など新たな分野を開拓する第2の創業に成功した」と述べた。
2000年代のデジタル時代に入り、世界の舞台から脱落した「株式会社日本」が復活している。富士フイルム、ソニー、キヤノン、パナソニック、任天堂など日本企業が強固な独自技術で再び世界市場へと進軍している。
沈没する日本の製造業の象徴だったソニーは、テレビ事業とスマートフォンに搭載するイメージセンサーがけん引する形で、18年3月期に過去最高の営業利益(6300億円)を上げる見通しだ。東京証券取引所の統計によれば、1部上場1308社の昨年の売上高と経常利益の合計はそれぞれ547兆6625億円、37兆3811億円で、過去10年間で最高を記録した。
株式会社日本の復活で雇用もあふれるようになった。失業率は過去24年で最低の2.7%まで低下した。NHKによると、大卒予定者10人のうち9人の就職が卒業前に内定し、1人当たり2.5社から内定通知を受け取ったという。株式会社日本の復活は円安と世界経済の好転など外部環境も影響を与えたが、規制改革や法人税引き下げなど思い切った企業支援政策を掲げたアベノミクスによるところも大きかったと評価されている。